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トップ > imaging S 動物の"しあわせ"を感じ、捉える 写真家 福田幸広さん
© Yukihiro Fukuda
野生動物と向き合い続ける福田幸広さん。高校一年生のとき、当時の人気ドラマで知ったタンチョウに憧れ、カメラを手に北海道を訪れたのが原点だ。野生動物の撮影に魅了され、その後も北海道に通い続けた。大学卒業の年には知床で撮影したアザラシの写真がフォトコンテストで入賞し、写真にますますのめり込んでいく。
「社会人になっても頭の中は写真のことばかり。北海道に行く時間が欲しくて入社1年目に会社を辞めました。その後は、アルバイトをしてお金が貯まったら北海道に行って動物を撮影するという生活を約10年続けました」
一貫しているのは、動物との巡り合いを大切にすることだ。1枚目は、鳥取県と岡山県の県境にある萱原(かやはら)で撮影した、カヤネズミの子どもたち。アナグマの撮影用に借りていた小屋の近くで偶然巣を見つけ、その生態に好奇心を駆り立てられた。
「カヤネズミの子どもは巣の中で育てられ、巣立ちの日に初めて外の世界を目にします。巣から出るのを躊躇しているようなこの愛くるしい姿を撮影できるのは、巣立ちのたった1日だけ。熱を検知するサーマルスコープを使って中に子どもがいる巣を探し、巣立ちの日を予想して離れたところからリモート撮影しました」
じっくり時間をかけて動物の生態を把握し、その動物に合った撮影方法や道具を見出していくのが福田さん流だ。2枚目は、山形県にアパートを借り、冬山に4カ月通い続けやっと捉えたカモシカの姿だ。
「親子か単独で行動する動物なので、大人になって3頭も一緒にいる姿が見られるのは、餌が少なくなる限られた時期と地域だけです。1日中雪山を歩き回り、急斜面で撮影することもあるので荷物も最小限。レンズも1本に絞ってカモシカを追い続けました」
カモシカを撮影している間に、現在は国内に2頭だけという毛並みが白い"白ザル"に出合った(3枚目の写真)。
「"白ザル"はまだ子どもだったのですが、群れを観察しているとその見た目からか、のけ者にされているのが分かりました。母ザルも群れの中での立場が弱いため子どもを守ってやれない。でも、群れが少し離れた瞬間に母ザルが子ザルの元へ寄っていき、なぐさめるように抱きしめてあげたんです」
動物に寄り添い、深く知ることで、単に可愛らしいだけではない、心つかまれる一瞬を撮影することができる。
「野生動物は厳しい自然の中で生きていますが、弱肉強食だけではない愛が溢れる瞬間があると感じます。これからもそんな"しあわせ"な瞬間を見つけて、撮影をしていきたいですね」
福田幸広(ふくだ ゆきひろ)
しあわせ動物写真家。1965年、東京都生まれ。日本大学農獣医学部卒。イギリスBBC Wildlife Photographer of the Year 2014「両生爬虫類部門」ファイナリスト。1年のうち300日以上をフィールドで過ごしている。2022年にキヤノンの写真集「PHOTOGRAPHERS' ETERNAL COLLECTION」として『「Life」動物たちの生きた証』を発売。
EOS R5 *RF24-105mm F4 L IS USM装着時
RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM
RF35mm F1.8 MACRO IS STM