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トップ > imaging S かけがえのない瞬間を探して 写真家 相武えつ子さん
© Etsuko Aimu
インスタグラムを中心に、2人のお子さんの写真を発表している相武えつ子さん。8万人以上のフォロワーに支持されるアカウントには、子どもたちの瑞々しい表情があふれている。
夫の勧めでカメラを手にし、出産後は子どもが成長していく様子を夢中になって撮影した。
「子どもはカメラの前で待ってくれないので、いくら撮ってもなかなかピントが合わず、なんでうまく撮れないんだろうと悩みました。でもその気持ちが、写真をもっと勉強しようという強い探究心を生み出してくれました」
使用説明書をボロボロになるまで読み込み、技術を磨いていくと、表現の幅がどんどん広がっていった。
「子育て中は意識が子どもに向いているので、背景はぼやけています。そんな自分が見ている世界を、写真でも残したい。50ミリの単焦点レンズで被写界深度を浅く撮ったら、思い通りに表現できるようになったんです」
相武さんの写真は、日常生活の中にこそ、その子らしい大切な一瞬があるということを気付かせてくれる。1枚目の写真も、そんな一枚だ。
「自宅近くの海は、娘たちも私もリラックスできる場所で、よく遊びに行きます。この写真は帰り際に撮影したのですが、偶然雲間から太陽の光が降り注いできて、長女が『太陽って暖かいんだね』と手をかざしたんです。その仕草に、子どもの豊かな感受性を感じ、思わずカメラを向けました」
2枚目の写真は、海で遊んだ帰りの車の中で撮影したもの。
「走り回ったので暑くなったのか、窓を開けて気持ちよさそうに風にあたっていました。その様子を撮影した中で、特に印象に残ったのがこの一枚。時おり見せるこのような繊細な表情は、動いていると見過ごしがちですが、写真はその時にしかない貴重な一瞬を捉えてくれる。それが魅力だと思います」
3枚目の写真からは、姉妹の仲睦まじい様子がありありと伝わってくる。
「長女が次女の髪を三つ編みにしている時に撮りました。次女がうれしそうにしながらも、どんな風に結われているか心配で、チラチラうしろをうかがっていたのが可愛らしくて(笑)。何気ない日常のひとコマですが、将来この写真を見返したら、この時の情景が鮮やかに浮かんでくると思います」
長女が11歳、次女が8歳になり、以前のように子どもらしい写真がだんだん撮れなくなってきたと、相武さん。
「これから反抗期を迎え、カメラを向けても嫌そうな表情をするかもしれません。でも、それも含めて全てがその子らしさ。子どもたちの成長に寄り添い、撮り続けていきたいですね」
相武えつ子(あいむ えつこ)
愛知県在住、姉妹の母。長女出産後から子どもの写真を撮り続け、インスタグラムに日々アップする写真が注目を集める。2015年シグマフォトコンテスト優秀賞受賞。20年に写真集『あいもかわらず』(CURBON)を発表。21年国際フォトコンテスト「Tokyo International Foto Awards」でBronze賞を受賞。ワークショップやトークイベントなどでも活躍している。