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  • 2017.12.01

大自然の中を躍動する美 写真家 小橋城さん


Skier:Tadahiro Yamaki © Joe Kobashi

真っ白な舞台上に自分だけの世界を描き出す

Skier:Tadahiro Yamaki © Joe Kobashi Skier:Kazuya Furuse © Joe Kobashi

凍てついた早朝の斜面を雪煙を上げて滑り降りるスキーヤー。眼下に広がる雲海が朝焼けの光に淡く染まり、遠くに連なる山並みの向こうに富士の山頂が顔をのぞかせる──。1枚目の作品は、4月の駒ヶ根(こまがね)で、この時間にしか撮ることのできない絶妙な1枚だ。

光と影の効果を考え抜き、舞台上でダンサーを踊らせる演出家のように、イメージする構図を雪原に描き出す。スキーの写真で勝負をしようと思ったのは28歳の時だ。師匠である写真家、水谷章人氏の「お前はスキーができるんだから、スキーの写真を撮れ」という言葉に促されてのことだった。

父がカメラと引き合わせてくれた。写真家の父は、幼いわが子に自分が使っていたカメラを与えた。幼少時から身近にあったカメラに意識的に向かい合ったのは、高校卒業後、ニュージーランドに語学留学をしていた時だった。

「好きだった海岸でスナップを撮ってみたんです。それがすごく面白くて、写真で表現する楽しさを知りました」

高校時代はインターハイに出場するほどスキーに打ち込んでいたが、帰国後は写真が熱中の対象となり、写真家への道を一直線に目指した。しかし、修業中はなかなか思うような写真が撮れなかったという。転機は、水谷氏と共に撮影旅行をしたスイスで訪れた。師匠に寄り添い、夢中で山岳の写真を撮った。そこで自然の本当の美しさを知ったと小橋さんは話す。

「朝の光、夜の星の輝き、真っ白な雪──。この美しさをスポーツ写真で表現できたら、自分だけの作品になるかもしれない。そう思いました」

その経験が今に生きていることは、彼の写真を見れば理解できる。駒ヶ根で撮った1枚目の作品、状況がいつ変化してもおかしくない中、一瞬の勝負だったという谷川岳で撮られた2枚目の作品、白馬の夕刻の雪原が墨絵のような美しさを見せる3枚目の作品。いずれも、雪山という舞台とスキーヤーが描く軌跡、その両方の美しさを同時に捉えた小橋さんにしか撮れない写真だ。

厳寒の雪山は誰もが足を踏み入れられる世界ではない。スキーヤーと共に吸ったその世界の「空気」を、写真を通じて多くの人に伝えたいと話す。

「例えばサッカーの試合では、一つのボールを時には100人を超えるフォトグラファーが一斉に追い掛けます。でも雪山でシャッターを切るのは僕一人です。自分だけの世界を自分だけの感覚で切り取ることができる。それが何よりの醍醐味(だいごみ)だと感じています」

「テーマを極めろ」という師匠の言葉が心に響き続ける。スキーの写真で小橋の右に出る者はいない。そう言われる日を目指し、彼はシャッターを押す。

  • 写真:小橋城さん

    小橋 城(こばし じょう)
    1974年、東京都生まれ。写真家であった父の影響で写真を始める。語学留学を経て日本写真芸術専門学校入学。卒業と同時に一般社団法人日本スポーツプレス協会会長でもある水谷章人氏に最後の弟子として師事する。スキーを中心としたスポーツ写真を撮り続け、雑誌、広告などで活躍するほか、個展も開催している。2014年には初の写真集『Face』(桜花出版)を発表した。NHK文化センターで写真講師を務める。

  • 主な撮影機材

    • 写真:EOS-1D X Mark II

      EOS-1D X Mark II

    • 写真:EF24-70mm F2.8L II USM

      EF24-70mm F2.8L II USM

    • 写真:EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

      EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM

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