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  • 2018.09.01

自然は美しくもワンダフル! 写真家 岩木登さん


© Noboru Iwaki

自然と共存し驚きに溢れた瞬間を捉える

© Noboru Iwaki

ブナの原生林が広がる青森県・八甲田。保水力に優れたブナは山々を潤し、十和田湖や奥入瀬渓流などを有する"水の楽園"を生み出した。

まれな自然が残る土地は、岩木登さんの故郷でもある。6年前に東京から移り住み、楽園が脈々と育んできた生命が織り成す風景を捉え続けている。

広告写真をメインに活動していた岩木さんが自然を被写体に写真を撮り始めたのは、「自然には、まだ知られていない面白い世界があるのではないか」という思いがきっかけだ。バブルが崩壊し、広告制作の現場にそれまでの活気が失われていった時、故郷の自然に次第に心が引かれていった。

「生まれ育った土地の風景は何度も見ているはずなのに、写真を撮るようになってから視点が変化しました。そして、自然はただ美しいだけではなく、驚きに満ち溢れた"ワンダフル"な存在だということに気付いたんです」

「上っ面を舐めるだけの写真は撮りたくない」と、撮影の場となる南八甲田の麓で生活をしている。そうして自然を深く理解することで、少しの変化にも敏感になり、一期一会の瞬間をキャッチできるのだ。

1枚目の写真は、十和田湖につながるダム湖の風景。雪解け水が流れ込む4〜5月の短い間だけ林が水没し、あたかも紺ぺきの湖に木々が浮かんでいるようだ。一見すると紅葉のようにも思えるが、実は新緑が朝日を浴びて黄金色に輝いているのだという。

「不思議で面白いでしょう? 撮影前から"こういう写真を撮りたい"という先入観に束縛されていたら、私たちに驚きを与えてくれるような自然の姿を捉え切ることはできません」

大切なのは「自分を出そうとせず、広い視野を持って観察する」こと。そうすれば、自然の新しい表情に気付けるはずだと岩木さんはいう。

自然と寄り添い、観察し続けて出合ったのが2枚目の瞬間だ。普段は静寂に包まれる十和田湖最深部の中湖に、ヤマセという夏季特有の太平洋からの風が強く吹き付け、雲海が舞い上がった。シャッターを押した時、計り知れない湖のエネルギーを感じたそうだ。

「自然にはレンズを通して見ることで広がる世界もある」という岩木さんは、ミクロな視点でも自然を捉える。その代表的な作品のひとつが3枚目の写真。ブナの倒木に生えたツキヨタケが、まるで星空へとつながっているように輝いている。肉眼で見ると淡い光だが、長時間露光で撮影したことで光を鮮明に捉え、光の道となって現れた。

「まだまだ八甲田を撮り切れていない。自然からの宿題がたくさんあるんです」そう語り、彼は驚きの瞬間を撮り続ける。

※9月27日(木)より、キヤノンギャラリー 銀座、名古屋、大阪で、写真展「光は曲がって届く/南八甲田」を順次開催予定

  • 写真:岩木登さん

    岩木登(いわき のぼる)
    1953年、青森県生まれ。立教大学社会学部を中退し、フリーランスの写真家に。(公社)日本写真家協会(JPS)会員。84年JPS展、93年ART BOX大賞展に入選。写真集に『南八甲田の森をゆく』(ART BOXインターナショナル)、『峡谷に宿るもの』(東奥日報社)がある。地元の写真愛好家のための「岩木塾」も主宰。

  • 主な撮影機材

    • 写真:EOS 5Ds

      EOS 5Ds

    • 写真:EOS M100

      EOS M100

    • 写真:EEF16-35mm F4L IS USM

      EF16-35mm F4L IS USM

    EOS 製品情報

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