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トップ > imaging S 空を味方に、感動を表現する 写真家 ルーク・オザワさん
© LUKE H. OZAWA
航空写真の第一人者として走り続けて29年。四季折々に変わる日本の空の色や光を取り込んだ"情景的ヒコーキ写真"は、人々の心を捉えて放さない。
「今でも時間を忘れて撮影に没頭します」と語るルーク・オザワさんは、愛情を込めて飛行機を"ヒコーキ"と書く。
「美しい色や光の中で、きれいに撮ってあげたい。漢字で書くと鉄の塊(かたまり)みたいで、僕のイメージとは違うんです」
中学生の時に初めてヒコーキに乗り、加速感や機窓からの風景に感動。以来、ヒコーキに魅了され、その素晴らしさを表現したいとカメラを手にした。そして撮影を重ねる中、ある写真をきっかけに情景的な写真を撮るようになった。
「成田空港で夕焼けをバックに降りてきたジャンボ機を撮影したのですが、旅から帰ってきた時の哀愁を感じさせる写真が撮れたんです。そのころから空とヒコーキをシンクロさせた画作りを目指すようになりました」
空港に着くとまず、空選びから始める。
「僕の写真では雲が重要。この雲にヒコーキを絡めるには、どこで撮るべきかを考えます。でも雲は動き、ヒコーキも時間通りには来ません」
うまくいかないことも多い。ただ、「空とケンカする」ことはないという。空を味方に付けると想像以上の色と光に出合えるからだ。1枚目の写真は、朝7時ごろの羽田空港での一枚。
「凪(なぎ)で鏡のようになった水面に、朝焼けの空が映り込んでいました。毎年同じ場所で撮影をしていますが、初めての風景で、30分もないタイミングにちょうどヒコーキが来て、瞬間的にシャッターを切ったんです」
数ある空港の中でも、特に魅力を感じるのが成田空港だという。
「滑走路が2本あり、さまざまな位置から撮影できます。それに、成田空港は一年を通して多彩な雲が現れるんです」
積乱雲の中を飛ぶヒコーキを捉えた2枚目の作品も、成田空港で撮影した。
「いい雲を見せられると、空から『どう切り取るんだ』と、挑戦されているように感じるんです」
トリミングは一切しない。寄り引きを感覚的に判断し、心震える瞬間にだけシャッターを切る。
「50歳を過ぎたころ、今まで見えなかったものに気付くようになり、新たな面白さを感じています。デジタルになってからは、夜間に高速で飛ぶヒコーキも撮影できるので、表現の幅が広がりました」
3枚目の作品は、1月の那覇空港で19時ごろに撮影したもの。霞(かすみ)がかった冬の夜空を、ライトを照らして幻想的に向かってくるヒコーキの一瞬を切り取った。
「ヒコーキ写真は、僕の生きる力。出合ったことのない色や光に出合うため、これからも撮りに行きます」
ルーク・オザワ(るーく おざわ)
1959年東京生まれ。会社員生活をしながら撮影の腕を磨き、31歳でプロの写真家として活動をスタート。近年は日本の空とヒコーキを中心に作品を撮っている。カレンダー撮影やテレビ・ラジオ出演、各種セミナーでの講演など幅広く活躍。写真集『JETLINER』シリーズ(イカロス出版)など著書多数。ヒコーキの搭乗回数は、2019年4月時点で2050回に上る。