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トップ > シゴトの哲学 [Vol.24] 俳優 市川実日子さん
映画やドラマなど、さまざまな作品で凛とした輝きを放つ市川実日子さん。その独特の透明感は、モデルとして活躍していた10代のころから変わらない。
「14歳のとき、姉がモデルを務めていた雑誌『オリーブ』から誘われたことがモデルを始めたきっかけですが、最初は怖くて、やってみようとは思えませんでした。でもスタジオに行ってみたら、スタイリストや写真家の方など、ものづくりに関わる大人たちがかっこよくて、また会いたいと思ったんです」
その後16歳で『オリーブ』の専属モデルになり、本格的に仕事をスタートする。
「当時は人見知りで、カメラを向けられると眉間にシワが寄ってしまうほど(笑)。でもスタッフの方たちはそんな私を受け入れてくれて、大事に育ててくれました。すてきな大人との出会いが、私の原点です」
モデルとして活躍するうち、市川さんの存在感は映画監督の目にも留まり、出演依頼が舞い込むように。
「『お芝居なんてできない!』と、お断りしていました。モデルの仕事がしたかったからです。映画は観るもので、出るなんて考えられませんでした」
しばらくはモデルの仕事に専念していたが、自分の気持ちに"隙間"ができるようになったという。
「仕事に対する考え方など、ちょうど自分の中で変化が生じていたころ、映画『タイムレスメロディ』の出演オファーをいただきました。初めは悩みましたが監督とお会いしお話をしたところ、『そのままの市川さんで参加してもらいたい』と言ってくださって。怖いけど、挑戦してみようと思いました」
こうして足を踏み入れた初めての映画の制作現場は、想像以上に楽しいものだった。
「最初は"個"の集まりだったのが、"チーム"になっていく過程がすごくうれしかった。あんなに怖がっていたのに、また映画に参加したいと思ったんです」
次作映画『とらばいゆ』では、自ら望んで出演を決めた。演技の楽しさを初めて感じ、芝居を続ける原動力にもなった。ただ、役者としてキャリアを積んだ今でも、新しい作品に挑戦する前には"怖さ"を感じるという。
「若いころはただ怖いという思いだけがありましたが、あるときこの怖さは恐怖ではなく、挑戦したいからこそ感じる気持ちなのだと気が付きました。怖いときほど、やってみると楽しい。参加を決めたら、自分の中では自然と作品への愛情も育ち始めます」
モデルとしても役者としても、根底にあるのは「人とものをつくるのが好き」だということ。
「どんな仕事でも大切なのは、やっぱり人。自分が感じていることに正直に、人とのコミュニケーションを重ねながら、ものをつくる喜びを感じていきたいですね」