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トップ > シゴトの哲学 [Vol.6] 落語家 春風亭 昇太さん

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  • シゴトの哲学
  • 2017.06.01

[Vol.6] 春風亭 昇太さん(落語家)

つまらない先入観にとらわれずにいろいろなことを経験したいんです

写真:春風亭昇太さん

昨年5月に「笑点」の司会者に抜てきされ、あの国民的長寿番組の顔となった。NHK大河ドラマでの今川義元役の「怪演」も大きな話題を呼び、この4月から始まったテレビドラマでは警察署長を好演している。一方、自ら著作するほどの城好きとしても知られ、歴史研究家との対談の仕事などもこなす。多忙な毎日を送るが、「オファーは基本的に断らない」と春風亭昇太さんは話す。

「やったことがない仕事や趣味のお誘いがあったら、まずはやってみる。そのスタンスを崩さないようにしています。僕は落語を聞くまで、落語ってのは絶対につまらないものだと思っていたんですよ。でも実際に聞いたら、ものすごく面白かったわけです。その時に、人間の先入観とはなんとくだらないものかと思いました。つまらないと思い込んでいても、やってみたら実は楽しい、自分に合っている。そういうものが世の中にはたくさんあるはずなんです。だから、いろいろなことを経験したいと思っています」

バラエティー番組に出たり、ドラマで役を演じたりすることは、落語家にとっては本来「余芸」に属するが、高座以外の仕事を余芸と考えたことはないと言う。

「僕に仕事をオファーしてくださる人は、皆さんそれぞれの世界のプロですから、手を抜くことはできません。ドラマのスタッフさんを見ていると、ほんと一生懸命で頭が下がりますよ。どんな仕事だって、いいかげんにやっていい仕事なんてないんです」

入門から今年で35年。普通の職業ならもはや大ベテランの域だが、落語界は事情が異なる。

「上にまだまだ諸先輩方がいて、僕なんかつい最近まで若手のカテゴリーだったくらいです。しかも僕は存在が薄っぺらいですから、ベテランっぽく振る舞うことは、どだい無理なんですよ(笑)」

「落語ではうそをつけない」が持論だ。キャリアを重ねたから、もう少し大人な感じの落語をやりたい。そう思ったとしても、それが自分の芸風でなければお客さんに見透かされてしまう。「自分」のままでやらないと、お客さんに楽しんではもらえない。だから、無理をする必要はないのだ、と。

落語はお金をもらっても、ものを売るわけではない。返品に応じることもできない。だからこそ、お客さんには心から楽しんでもらわなければならない。損は絶対にさせたくない。そう考えながらいつも高座に上がる。

「ストレスがたまることも山ほどありますが、落語のストレスは落語で解消するしかないと思っています。自分の芸でお客さんに心の底から笑っていただく。その充実感や手応えがあれば、ストレスなんか全部吹っ飛んじゃいます」

春風亭 昇太(しゅんぷうてい しょうた)
1959年、静岡県生まれ。東海大学入学後、落語研究部に入る。卒業後の82年に春風亭柳昇に入門。86年に二ツ目に昇進し、春風亭昇太となる。92年、真打昇進。日本テレビ系「笑点」の司会のほか、ドラマ、映画などでも活躍。著書に『城あるきのススメ』『楽に生きるのも、楽じゃない』などがある。

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