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トップ > シゴトの哲学 [Vol.10] 女優 竹内 結子さん
澄んだまなざしが印象的な演技派女優。時にりりしく時に儚(はかな)げに、女性の多彩な一面を巧みに表現する。
高校入学を控えた春休みに原宿でスカウトされて役者の道へ。突然の出来事に父親は反対したが、「何もしないよりは、やってみて決めた方がいい」という姉の言葉に後押しされ、一歩を踏み出した。
役者としてものづくりに携わることの面白さを初めて感じたのが、17歳の時。初主演を務めた映画『イノセントワールド』だった。
「1カ月近く青森県でロケをしたのですが、スタッフや共演者など、自分の仕事に対して誇りや責任を持っている人たちの中で、じっくりとものをつくることの世界観を学ばせてもらい、『私はこの仕事をやっていきたい』と強く感じたんです」
撮影が終わり、新宿駅に着くやいなや、父親に電話をかけ役者を続けていく決心を伝えた。
「父は『とにかく高校だけは卒業してほしい』と、役者を続けることを許してくれました(笑)。今自分が親になり、当時の父の気持ちが少しずつ分かってきましたが、理解してくれたことに本当に感謝しています」
その凛とした佇まいから、刑事や医師、学者など芯の通った強さを感じる女性の役を演じることも多い。
「ガチガチに役づくりをするのではなく、脚本に描いてある世界観が作品の全てだと思うので、現場に行って、監督や共演者の方々と相談しながら、一緒に作品をつくり上げるようにしています」
気付けばキャリアは20年以上。大事にしているのは、デビュー当時に教えられた"基本"だという。
「『セリフをきちんと覚えて現場に来る』というのは基本中の基本ですが、それは、セリフが頭の中に入っていれば、監督や共演者ときちんとコミュニケーションがとれるから。今でも毎回その大切さを感じています」
これまでの出会いの中で掛けられた言葉も宝物だ。
「うまくいかなかった時は『できなかったことをちゃんと心に留めておけば、知らない間にできている自分に気付くから、焦らなくていいよ』という言葉を思い出します。悩んだりすることももちろんありますが、私の心の中の"名言集"が助けてくれるんです」
「駆け出しの時、周りの人たちがさりげなくフォローしてくださっていたんだなと痛感します」と、お世話になった人たちへの感謝も忘れない。
「後輩と一緒の時は、緊張しないように声を掛けたりしています。これまで自分がしていただいたことを、自分でももっと自然にできるようになりたいですね」
周囲との調和を大切にしながら、作品に真摯に向き合う――「演じることを通して何かを発見していきたい」と語る笑顔は、ますます輝きを増していた。