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トップ > シゴトの哲学 [Vol.13] 俳優 勝地 涼さん

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  • シゴトの哲学
  • 2019.03.01

[Vol.13] 勝地 涼さん(俳優)

どんな現場でも前向きに臨む、"楽しむ心"を忘れずに持っていたい

写真:勝地涼さん

強い意思を感じさせる眼差しの奥に、一瞬にして人の心に入り込む人懐っこさが同居する。シャッターを切るたびに、雄弁に心情を語り掛ける高い表現力は、20年近くの役者人生で磨かれたものだ。

「10代、20代でたくさん悩んで、最近ようやく吹っ切れた心境なんです」と、快活に語る。

母が営む生花店で行われていたドラマ撮影の現場でスカウトされ、デビューしたのは13歳の時。5年後には、映画『亡国のイージス』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、一気に注目を集めた。

ところが20代になると、壁にぶつかる。「子役に求められる演技ではもう通用しない。自分の役者としての核は何なのか」。悩む日々が続く中、先輩俳優の「お前のバカそうなところが素敵だし、全力なところもいい」という言葉が心に響いたという。

「昔から父に、『媚びるな、かわいがられろ』とよく言われていたんです。当時は、うるさいなぁと思っていましたが、良い先輩に恵まれた今、『出会った人を大切にしろ』という意味だったんだと気付きました」

2013年にNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で演じた個性的なキャラクターが、世間に強烈な印象を与え、以降は特にコメディーでの評価が高まった。そんな彼には、役者として大切にしている信念がある。

「一つは嘘がないように演じること。そもそも芝居は嘘の世界。だからこそ、現実の世界にも『こういう人、いる!』と、リアルに共感してもらえるキャラクターづくりを心掛けています。コメディーなら、小手先で笑わせるのではなく、自然な会話の中でいかにおかしさを表現するか。そこが難しいんですけど」

そしてもう一つは、"楽しむ心"だ。

「例えば、舞台の仕事は毎日同じ場所で同じ役を演じる。けれど、体調やテンションは日々違う。共演者から昨日とは違う熱量を感じて、刺激されることもある。その一瞬一瞬を面白いと思うか、毎日同じで退屈だと思うか。どんな仕事でも同じですが、自分の気持ち次第で現場に臨む姿勢も変わるはず。だから僕は、いつも楽しむ心を忘れないようにしています」

ただ、常に前向きに、真剣に向き合っているからこそ、共演者や演出家とぶつかることもある。

「蜷川幸雄さんに、舞台上では年齢もキャリアも関係ないと教わって以来、筋が通らなければ、相手が誰であっても自分の想いを伝えてきました。でもこの先は、熱くて面白いだけでもいけない。これからは、世代を超えて全員が同じ熱量で仕事に打ち込める。そんな風通しの良い現場づくりも意識したいです」

役者として、自らが目指すべき未来を語る姿からも、"楽しむ心"が垣間見えた。

勝地 涼(かつぢ りょう)
1986年、東京都生まれ。2000年、ドラマ『千晶、もう一度笑って』でデビュー。その後、多数の映画、ドラマ、舞台で活躍。現在はNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』に出演中。3月9日から舞台『空ばかり見ていた』の東京公演、4月5日から大阪公演に出演予定。

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