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トップ > シゴトの哲学 [Vol.14] 俳優 駿河 太郎さん
俳優として歩み始めたのは30歳。決して早くはないが、それから10年が過ぎた今、映画やドラマ、舞台などで味わい深い独特の存在感を放っている。
デビューはミュージシャンとしてだったが、思うようにはいかない日々を過ごしていた。そんな中、2年越しで誘い続けてくれたマネジャーのもとで、音楽活動と並行して俳優活動をスタートさせた。
「最初の半年間は、オーディションを受けても不合格が続きました。そんな中でようやく掴んだ映画の仕事も、撮影とライブのスケジュールが重なり降板……。選んでくれたスタッフの方にも、マネジャーにも申し訳なくて、それをきっかけに『俳優一本に絞ろう』と覚悟を決めました」
退路を絶った後は、自らキャスティング会社に連絡するなど営業活動にも参加。その努力が実り、端役ながらNHK大河ドラマ『龍馬伝』に出演。次いでNHK連続テレビ小説『カーネーション』で演じた主人公の夫役で注目を集めるようになった。
我慢の時を過ごし、幾多の苦労を経てきた駿河さんには、そこで得たモットーがある。それは、意外にも「無理をしないこと」。
「あるオーディションに行くと、周囲は容姿端麗でスタイル抜群の男性ばかり。それまでは、オーディションではかしこまり、無理して行儀よくしていたのですが、その時は『こんなん受かるわけないやん』と、開き直ってありのままの自分をさらけ出しました。そうしたら、意外にも合格したんです」
以来、素の自分でも勝負できる俳優に魅力を感じていったという。
「俳優の仕事って、どう隠しても人間性が出ると思うんです。だから常に人間性を高めることは追求し続けたい。人間・駿河太郎を信用して、『使いたい』と思ってもらえたら、その信用に応えられる自分でありたいんです。初対面の人や仕事で関わる人はもちろん、親友や家族など、身近にいる人にも『かっこ悪い』と思われたくはない」
人として譲れない信念がある一方で、俳優としては「エゴは邪魔」だと言い切る。
「俳優としては信念がないというぐらい、めちゃくちゃ譲ります! 俳優は求められて初めて作品に参加できる職業。だから毎回、現場で求められていることを必死で考えます。撮影後、『これが欲しかった!』と喜んでもらえるのが、うれしい瞬間ですね」
ミュージシャンから転身し、試行錯誤をしているうちに、「いつの間にか10年たっていた」と語る。この先、さらに磨かれていくであろう"人間・駿河太郎"から、目が離せない。