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トップ > シゴトの哲学 [Vol.20] 女優/歌手 松下 奈緒さん
クールな表情から、周囲を一気に明るくする満面の笑顔まで、カメラの前で自在に表情を変える。女優としてだけでなく、毎年コンサートツアーを行うなど、音楽活動でも着実にキャリアを重ねる今、仕事を楽しむ余裕を感じさせる。
「3歳の頃から音楽を始めて、音大受験などを乗り越え今まで続けてきたことは、自分の糧となっています。最近は、音楽を奏でるときにも自分の色をどう足して表現できるかを考えるなど、女優としての経験と音楽がうまくシンクロする部分が増え、いい相乗効果になっています」
現場ごとに表現方法は変わるが、どの仕事に臨むときにも共通して大切にしているのは、肩肘を張らず、「フラットな気持ち」で現場に臨むことだ。
「お芝居でも音楽の現場でも、『自分はこう思う』『こうやろう』と決め付け過ぎず、その場で求められるリクエストへ柔軟に対応できるよう"余白"をもっておきたいと、いつも思っているんです」
当然、最初からこうした心境になれたわけではない。緊張して、「その場にいることだけで必死だった」デビュー当時から、経験を重ねて身に付けてきた術だ。
「仕事は相手がいて成立します。お芝居なら、相手のキャラクターが想定とは違い、『そうきますか!』ということも。そんなとき、『だったらこう返してみよう』というように、余白があれば即興で対応できます。今では、その方が面白いと思えるようになりました」
柔軟でいるためには、人の意見を受け入れる度量も必要になる。現在も大切にしているのは、「感謝の言葉だけでなく、謝罪の気持ちも素直に口にできるようになりなさい」と、教えてくれた先輩の言葉だ。
「人の意見や助言を聞き入れることで、ガラっとお芝居が変わることもあります。なので準備はした上で、人に委ねるのも大事なんでしょうね。年齢を重ねて、後輩に意見を伝える場面も増えました。だからなおさら、今は意見をもらえることのありがたみを実感していて、間違いを指摘されても素直に謝れる自分でいたいと思っています」
2020年からは、経済ドキュメンタリー番組『ガイアの夜明け』の3代目案内人に就任。スタジオでの進行はもちろん、インタビュー取材にも新たに挑戦している。ここでも予定調和ではなく、「台本は踏まえながらも、自分の知りたいことをぶつけたときに相手の緊張がふいに解けて、本音が引き出せた瞬間に『やった!』と感じます」と笑顔を向ける。
余白を大切にし、現場を臨機応変に楽しもうとするポジティブな姿勢は、演じること、演奏することにもまた、大きな収穫をもたらすに違いない。