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トップ > フォトなび [47] 冬ならではの光や造形を意識する
冬は太陽が移動する高度が低いため、光が斜めから差し込み、被写体に立体的な陰影が現れます。そんな冬の光を生かして撮影をするのも、情緒あふれる作品を撮る一つの方法です。特に夜明け前や日没後の時間帯は光がやわらかく、被写体を美しく見せてくれます。
1枚目の写真は、早朝の椿の群生林で撮影した一枚です。冬を迎え、地面にぽつんと落ちた椿の花のはかなげな美しさを表現するために、光と影のコントラストを利用しました。地面の面積をあえて広くすることで黒い影を際立たせ、椿の鮮やかな赤をより印象的に捉えています。また、花を主役にすると、どうしても花を中心にしてアップで撮りがちですが、この椿のような可愛らしい花は、あえて端に小さくおさまるようにすると、より繊細さを表現できます。小さな被写体を目立たせるために、余分な要素をできるだけ省くのもポイントです。この場合は周囲の椿の木や道などが入らないよう意識しました。このように被写体だけを見るのではなく、全体を引いた視点から見て、構図を考えるようにしましょう。
また、冬は景色から色彩が減少し、それまで目に留まらなかったものが浮き出てきます。青々とした葉が落ちた後に見える面白い造形の枝に注目するのも、冬の撮影ならではの醍醐味ではないでしょうか。2枚目の写真は、シダレザクラを撮影したものです。くねくねと広がる枝の迫力を表現するため、しゃがんで木の根本あたりから空を見上げて撮影しました。曇り空のグレーがかったトーンを背景にすると、枝の造形をはっきりと浮かび上がらせることができます。曇りや雨、雪といった天気があまり良くないときの方が、普段見えないものに出合える場合があります。近所を散歩して、新しい被写体を見つけてみてください。
レンズを通すと肉眼では見えない景色に出合える場合があります。左の写真は神社の境内を流れる川を撮影したもので、あえて水面に映り込んだ木々にピントを合わせました。ゆがんだ木々の周りで輝いているのは川に投げ込まれたお賽銭です。ピントが外れているので光の粒のようになり、幻想的な風景を作り上げています。