カテゴリーを選択
トップ > 大人のたしなみ [Vol.12] ウオーキングを楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第12回は、ウオーキングの魅力について、ヒップアップ・アーティストの松尾タカシさんに話を聞いた。
在宅時間が長くなり運動不足を感じたら、気軽に始められ、多くのメリットがあるウオーキングがお薦めです。脂肪を燃焼させる有酸素運動のためダイエットに有効で、生活習慣病のリスク低下にも貢献します。また、下半身を中心に筋力を使うことで、加齢で衰える歩行能力も維持できます。さらには心肺機能が向上し、脳への血流量が増えて脳が活発に働くため、認知症予防やストレス緩和にもつながり、心にも好影響を与えるのです。近年は、歩行速度と寿命の関係にも注目が集まっており、海外の調査※では歩行速度が速くなるにつれ、生存率が上がることも報告されています。
これらの効果を得るには「歩き方」がカギとなるのですが、日本人は猫背でひざを曲げて歩く人が多く、世界でも歩き方が下手だといわれています。これは、日本の歴史や生活環境が関わっているようです。例えば狩猟民族は走る生活に適応するため骨盤が前傾していますが、農耕民族といわれる日本人は骨盤が後傾しやすい構造です。そのため体を回旋しにくく足だけで歩くので、外国人からは奇妙な歩き方に見えるのです。さらに、日本人は座る時間が長い傾向がある上、近年ではスマートフォンの影響で下を向いている人も増え、若者でさえ姿勢も歩き方も不自然になりがちです。
間違った歩き方は体に負担をかけます。ウオーキングを行う際は「正しい歩き方の3原則」(下イラスト参照)を意識しましょう。ポイントは、①まっすぐ立つ、②重心を左右に移動させる、③体の回旋を使って歩く、というものです。この立体的な歩き方、すなわち「3Dウオーク」をマスターすれば、ダイナミックに、しなやかに、速く歩けるようになります。
間違った歩き方を続けていると、骨格がゆがみ、足やお尻の筋肉が衰え、ロコモティブシンドローム(運動器の障害のため、移動機能の低下をきたした状態)の原因に。正しい歩き方「3Dウオーク」の3原則を身に付け、100歳まで歩ける体に。
「3Dウオーク」を身に付けるコツは、まず「まっすぐ立てる」ようになること。そのためには体を垂直に支え、骨盤を前傾させる役割を担うお尻の筋肉や腸骨筋といった「抗重力筋」を鍛えることが重要です。上イラスト「原則1」の片足を上げて立つポーズを、左右それぞれ毎日1分間キープするエクササイズを取り入れましょう。最初は壁に片手をついて体を支えながら行い、筋力がついてきたら手を離して行うと効果的です。
ウオーキングを実践するに当たり、1日の目標を設定することも大切なポイントです。できれば6000歩を目指しましょう。普段より早歩きをすると、10分間で約1000歩(1km)歩けます。初めから頑張って6000歩を歩く必要はなく、10分の歩行×6回などに分けても構いません。
モチベーションを高めるには、スマートウオッチやウオーキングアプリなどテクノロジーの力を借りるのも良いでしょう。日々の記録が簡単に残せる便利機能などでやる気に火がつきます。
悩みや問題がある場合でも、家で解決策を考えるより、歩きながら考える方が脳が活性化するので、答えが違ってくるはずです。心身の健康のために、まずは外に出て、気持ちよく歩くことから始めてみませんか。
※ 出典:JAMA. 305(1):50-8,2011