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トップ > 大人のたしなみ [Vol.13] 缶詰を楽しもう

社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第13回は、缶詰の魅力について、缶詰博士の黒川勇人さんに話を聞いた。

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  • 大人のたしなみ
  • 2022.03.01

[Vol.13] 缶詰を楽しもう

日常の食事シーンや非常時に活躍し、今やグルメ食材としても注目されている缶詰は、食品の優等生といえます。その鍵は、食材を密封し、加熱殺菌するという製造方法にあります。これにより食品を腐敗させる菌類や微生物が死滅するため、保存料不要で長期常温保存できるのです。また、すぐに食べられる手軽さに加え、栄養価の高さも利点です。例えば、サバには"体にいい油"といわれるオメガ3脂肪酸のDHAとEPAが豊富に含まれていますが、家庭で食べる生のサバに比べて、缶詰はその含有量が約2.5倍も多くなります。DHAやEPAは酸化しやすく、水揚げした魚をすぐに加工する缶詰は空気に触れる時間が短いため、酸化を抑えられるのです。

このように優れた食品である缶詰の原理は、1804年にフランスで発明されました。当時、政権を掌握し、ヨーロッパ各国へと戦線を拡大していたナポレオンは、軍隊の食料確保のため食品の保存法を広く募りました。そこで採用されたのが、フランス人のニコラ・アペールが考案した瓶詰めです。方法は、調理した食材を瓶に入れてコルクで蓋をし、湯せんで加熱するというもので、これが缶詰の原理とされています。その後、1810年にイギリスでブリキ缶が発明され、缶詰が誕生しました。この技術はアメリカに渡り、1861年に始まった南北戦争により軍の食料として需要が増え、缶詰産業が発展していきました。

日本においては明治初期、1871年に長崎で語学学校を運営していた松田雅典が、フランス人の指導のもとでつくったイワシの油漬け缶詰が始まりといわれています。やがて全国に缶詰工場ができ、今や缶詰大国といわれるまでになりました。

  • 写真:最高峰の原料を使用した極上のツナ缶を堪能

    最高峰の原料を使用した極上のツナ缶を堪能

    高級グルメ缶詰の中でも生産者のこだわりが詰まっているのが、モンマルシェ「マグロ トロ ブラック レーベル」。ツナ缶原料の最高峰といわれる夏びん長マグロ1尾分の大トロ部分とスペイン王室御用達のオリーブ油を1缶に投入。1缶ずつ手づくりされ、とろけるような味わい。
  • 写真:地元の名物や郷土料理が満喫できるご当地缶詰

    地元の名物や郷土料理が満喫できるご当地缶詰

    高級品として名高い気仙沼産のふかひれを贅沢に使った「気仙沼産ふかひれ」や、三重ブランドの松阪牛の中でも最高ランクのA-5級のみを上品に味付けした「松阪牛大和煮」(いずれも国分グループ本社「K&K 缶つま極」)など、ご当地のごちそうを自宅で堪能できる。
  • 写真:国内外の珍しい缶詰をつまみに飲める缶詰バー

    国内外の珍しい缶詰をつまみに飲める缶詰バー

    懐かしの定番缶詰からスーパーでは手に入らない変わり種、海外のおもしろい缶詰など、約300~350種類を取りそろえ、全国に展開している缶詰バー「mr.kanso」。缶詰がぎっしり並ぶ棚には、同店オリジナルの缶詰も。中でも京風本格だしが効いた「だし巻き缶詰」が一番人気。これらの缶詰は店頭でお酒と共に楽しめる。
  • お酒と缶詰を合わせてマリアージュを楽しむ

    画像:お酒と缶詰を合わせてマリアージュを楽しむ

最近では保存食の域を超え、グルメ食品として注目される日本の缶詰は、種類の豊富さも世界一。例えば、スペインやポルトガルでは海産物、フランスでは肉のパテなど、その国の日常食を缶詰にする場合がほとんどですが、日本では世界の食を再現した缶詰を続々と生産しています。これほど缶詰がグルメ化したのは、2010年に缶詰を販売する国分グループ本社が「K&K 缶つま」を発売したことが契機といえます。それまで業界では300円以上の缶詰はなかなか売れないとされていましたが、同社は缶詰の将来を考え、酒のつまみをコンセプトに、良質な材料と味にこだわった高価格の缶詰を生産。爆発的にヒットし、他社も追随するようになりました。さらに、13年ごろからはサバ缶への健康・美容面での期待が高まり始め、料理界でも食材として活用されるようになり、18年に一大ブームとなりました。こうして、缶詰のグルメ化や高級化が進んでいったのです。

現在も、生産者の情熱が感じられる缶詰やご当地缶詰、パッケージがおしゃれな缶詰などバリエーションは広がっています。缶詰専門店で手に取ったり、インターネットでお取り寄せしたりしながら、蓋を開けるだけで本格料理や世界の味が楽しめる、缶詰の魅力をぜひ味わってください。

  • 写真:特別な味わいを大切な人へ

    特別な味わいを大切な人へ

    味よし、ルックスよしの缶詰は贈り物に最適。畜産王国鹿児島で育てられた、鹿児島県産黒豚の希少部位を使ったAKR Food Company「黒豚缶詰シリーズ」は、黒豚軟骨の甘辛醤油煮、黒豚ハツ・タン・ガツのアヒージョ、黒豚肉の白ワイン煮込みの絶品3種5個セットで、喜ばれるギフトに。
  • 写真:日本各地の缶詰が一堂に

    日本各地の缶詰が一堂に

    東京で全国の缶詰と出合えるのが、秋葉原の高架下にある「日本百貨店しょくひんかん」内の「カンダフル」。日本一の缶詰売り場を目指し、本来なら各地方の道の駅でしか買えないようなご当地缶詰が約350種類、ズラリと並ぶ。高級魚のノドグロなどを使った逸品も入手可能。
  • 写真:ちょいがけで味変

    ちょいがけで味変

    缶詰をより一層おいしく食べたいときは食用油を。ラー油の辛味は肉系缶詰と好相性。コンビーフに混ぜ、卵黄を落とせばユッケのような味に。また、ごま油は味噌煮やしょう油煮の香ばしさをアップ、鮮烈な香りのオリーブ油は魚の臭み消しに。バターはコクをプラスしてくれる。
  • 非常時においしく備える

    缶詰は防災の観点からも強い味方に。日常的に食べて、数が減ったら買い足す「ローリングストック」で備えれば、面倒な賞味期限の管理も不要。下の3つのポイントで選ぶと非常時に役立つ。
    画像:非常用缶詰を選ぶ際の3つのポイント。水分、食物繊維、タンパク質
黒川勇人 さん
日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認の缶詰博士として、テレビ・ラジオ・雑誌・新聞などさまざまなメディア出演やイベント、執筆活動で活躍。缶詰の魅力を一人でも多くの人に伝えるべく、日々取材活動を続けている。著書に『缶詰博士が選ぶ!「レジェンド缶詰」究極の逸品36』(講談社+α新書)、『旬缶クッキング』共著・春風亭昇太(ビーナイス)など

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