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トップ > 大人のたしなみ [Vol.15] 焚き火を楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第15回は、焚き火の魅力について、焚き火専門店オーナーの堀之内 健一朗さんに話を聞いた。
ここ数年、焚き火がブームになっています。特に、ソロキャンプ時などの「独りでいたくなる焚き火」が人気です。その理由は、焚き火に"リセットする力"があるからではないでしょうか。ビジネスの疲れやストレスから心身を解放しリセットする力や、人と人との関係性をリセットする力といったものです。さっきまで仲違いしていた親子やご夫婦も、焚き火を前にするといつしか仲直りしてしまいます。また、黙々と火を燃やすという行為は、マインドフルネスの効果をもたらし、炎のゆらめきやパチパチと薪の爆(は)ぜる音が、f分の1ゆらぎによる癒し効果も与えてくれます。
初心者には一見ハードルが高そうに見える焚き火ですが、あまり難しく考えず気軽に体験してみましょう。まずは、ひと通り道具がそろっているキャンプ場を利用するのがお薦めです。体験を重ねるにつれ、どんな道具が必要か分かってきます。経験に応じてそろえていけば無駄もないでしょう。
手始めにそろえたい道具としては、焚き火台があります。現在焚き火ができるキャンプ場でも、ほとんどが環境保護や景観の点から、地面で直接火を起こすことが禁じられています。焚き火台があれば、燃えかすや灰の始末も簡単です。
使用する薪については、初心者がいきなり野山に落ちている木々を使うと、火起こしに苦労するかもしれません。なぜなら、これらは水分を含んでいて、火が付きにくいことが多いからです。慣れるまでは、キャンプ専門店などで薪を購入した方がよいでしょう。ポイントは、なるべく小さくした薪を使うこと。業務用の割り箸をたくさん使っても、うまく火を起こすことができます。
薪には大きく分けて、針葉樹と広葉樹の2種類があります。針葉樹は火が付きやすいけれど火持ちが悪く、広葉樹は火が付きにくいけれど、火持ちが良いという性質があります。そのため焚き火は針葉樹から燃やして、広葉樹にバトンタッチしていくやり方が王道です。さらに薪には、桜のように香りの良いもの、爆ぜる音が楽しい栗や椚(くぬぎ)といった、樹種による違いもあります。例えば欅(けやき)の香りで小学校時代を思い出すという人もいます。香りはその人の記憶と結び付きやすいため、"焚き火からその人の人生が見える"ともいえるのです。
またマナーや心得として注意したいのが、炎の大きさです。火は、コントロールできる範囲の大きさで扱うことが重要です。さらに風の強さにも注意が必要でしょう。風速5メートル以上になってきたら、焚き火は避けた方が安全です。そして薪の燃えかすや灰は、地面に残さないように心掛けましょう。火消しツボやバケツに移し、指定の処分場所に捨てるか持ち帰るのがよいでしょう。
最後に初心者にお薦めの、超簡単焚き火料理を紹介します。それは竹串やバーベキュー用の金串などを使って、食材をシンプルに炙るというものです。想像以上に食材がおいしくなり、いつもと違う味わいに驚きます。焚き火ならではの醍醐味(だいごみ)を、ぜひ楽しんでみてください。