カテゴリーを選択

トップ > 大人のたしなみ [Vol.1] 夏の山を楽しもう

社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第1回は、山岳ライターの小林千穂さんに夏山の魅力を教えてもらった。

  • Twitter
  • Facebook
  • 大人のたしなみ
  • 2018.06.01

[Vol.1] 夏の山を楽しもう

雲海の上から昇る朝日、どこまでも続く山並み、足元に揺れる高山植物の花々。他のシーズンには深く雪に閉ざされる高山は、短い夏の間だけ、厳しい表情を緩めて登山者を迎えてくれます。

街ではうだるような暑さが続いていても、山の上にはまだ雪が残り、まるで別世界のよう。汗をひんやりと冷ましてくれる涼しい風が吹き抜けます。そして山頂から目にする景色は、一生ものの思い出をつくってくれるに違いありません。ダイナミックな山岳展望を楽しみながら食事をしたり、仲間と共に山小屋で過ごす特別な時間、夜は満天の星空に星座や天の川を探したりと、楽しみは尽きないでしょう。また、ライチョウやオコジョ、カモシカなど、珍しい山の生き物との出合いもあるかもしれません。そう、夏こそ憧れの山に一歩近づけるチャンスなのです。

夏山のシーズンは梅雨明けとともに始まります。それまでは残雪が多く、雪の上を登るための特別な道具や技術が必要で経験者向き。また、梅雨時は天候が安定せず、晴天にタイミングを合わせるのが大変です。特に最近は梅雨末期に豪雨となりやすく、そのような時に山に入ると大変危険です。

一方、9月も中旬になると、標高の高い山では雪が積もることも。山腹に紅葉が訪れるとともに、また雪の季節へと戻っていきます。梅雨明け直後の7月下旬から9月上旬までの比較的晴天が続く時期が、高山の登山に最も適したシーズンです。

  • 写真:夏でも涼しい高い山へ

    夏でも涼しい高い山へ

    高山植物と残雪が爽やかな標高の高い山は、夏の間は登山者を優しく迎えてくれる。写真にある北アルプスの涸沢(からさわ)(長野県)であれば危険な場所がなく初心者でも行くことができ、日本にいながら、まるでヨーロッパアルプスのような景色を楽しめる。
  • 写真:高山植物の花たち

    高山植物の花たち

    厳しい環境に耐えながら夏は高山植物(高山帯に生育する植物)が一斉に花を咲かせる。小ぶりだが色鮮やかでそれぞれ個性がある。左上の写真は八方尾根に咲くクガイソウ(紫)とシモツケソウ(ピンク)。右下はミヤマキンポウゲ(黄)、ハクサンコザクラ(ピンク)。

"でも、標高の高い山に登るなんて無理だ"と思っていませんか? そんな人の味方となってくれるのがロープウエーやリフトなどの乗り物。大きな標高差を一気に運んでくれ、山麓のキツい樹林帯の登りで苦しい思いをすることなく、いきなり山の上部へ行くことができます。乗り物を降りれば、そこはもう標高の高い別世界。登山のいいところ取りをすることができるのです。

大人の山登りは、体力任せで日程ギリギリにプランニングするのではなく、あえてゆったりと計画するのがポイント。景色を心ゆくまで楽しんだり、花々を愛でる余裕が持てるようにしましょう。家から日帰りで行ける短めの行程でも麓の温泉旅館に泊まったり、山中泊をするときはガイドブックなどに紹介されている日程より宿泊を増やすなど、時間をかけたプランニングにするのがコツ。そうすることで、気持ちがせかされることなく、のんびりと山で過ごす時間を楽しめますし、悪天に遭ったときも時間があることで柔軟に対応できるため、安全登山にもつながります。

また、登山の際には、山のコース詳細が書かれている『分県登山ガイド』シリーズ(山と溪谷社)などのガイドブックや、『山と高原地図』(昭文社)に代表される登山地図をよく見て、その山を理解し、「山のグレーディング(※)」などを参考に、自分の体力や経験に合った山選びをしてください。

さあ、1年で最も賑わいを見せる夏山のシーズン。まずは身近な山に出掛けて、非日常の世界を楽しんでみましょう。

  • 登山ルートの地形や特徴に基づき、体力度、技術的難易度で、山を評価・分類したもの
  • 写真:夏に見たい感動的な景色

    夏に見たい感動的な景色

    山で見たい景色の筆頭が雲海とご来光。運が良ければ両方同時に見られることも。雲海は早朝や夕方に出現することが多いので、山小屋に宿泊すると出合える確率も上がる。また、霧が発生したときは、ブロッケン現象※を見られるチャンス。
    ※ 自分の影が霧に映り、その周りに虹ができる
  • 写真:下山後は温泉でのんびり

    下山後は温泉でのんびり

    登山ととても相性がいいのが温泉。下山後に温かいお湯に浸かり、汗を流して体の疲れを癒やすのは至福のひととき。山麓には雰囲気のいい温泉がたくさんあるが、特にお薦めなのは、那須温泉の「鹿の湯」。湯船によって湯温が違うため、好みの湯でくつろげる。
  • 写真:山小屋に泊まってみよう

    山小屋に泊まってみよう

    山中の宿泊施設、山小屋に宿泊すると、行程に余裕が持てるだけでなく、ご来光や夕焼けなどの劇的な山の景色を楽しめたり、星空を見られたりする利点もある。ただし、場所によっては夏の週末に大混雑するので注意。
  • 写真:山でも本格コーヒーを

    山でも本格コーヒーを

    バッグを開いてお湯を注げば2杯分の本格的なコーヒーが淹れられる「COFFEE BREWER」は便利。コンパクトなストーブでお湯を沸かし、香り高いコーヒーを味わうのも、とっておきの時間。
  • 写真:各県ごとに山を紹介

    各県ごとに山を紹介

    県別に山が紹介されている『分県登山ガイド』シリーズ(山と溪谷社)。登る山を思い浮かべながらガイドブックを見て下調べをしたり、計画を立てるのも登山の楽しみの一つ。
  • 写真:山の名前のお酒で一献傾ける

    山の名前のお酒で一献傾ける

    名水を生み、良質なお米を育てる山の麓には、おいしい地酒がたくさん。「剱岳」「苗場山」「八海山」「鳥海山」「白馬錦」など、山の名前が付いたものも造られている。下山後は山の名のお酒を買って帰り、思い出に浸りながら飲み比べをしてみるのも楽しい。
小林千穂 さん
山岳ライター。山好きの父の影響で子どものころに山登りを始め、里山歩きから雪山、海外遠征まで幅広く登山を楽しむ。山小屋従業員、山岳写真家のアシスタントを経て、フリーのライター・編集者として活動。著書に『DVD登山ガイド 穂高』(山と溪谷社)、『女子の山登り入門』(学研パブリッシング)など。

C-magazine サイト トップページに戻る

PDFで閲覧する場合は、デジタルアーカイブスへ

このページのトップへ