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トップ > 大人のたしなみ [Vol.1] 夏の山を楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第1回は、山岳ライターの小林千穂さんに夏山の魅力を教えてもらった。
雲海の上から昇る朝日、どこまでも続く山並み、足元に揺れる高山植物の花々。他のシーズンには深く雪に閉ざされる高山は、短い夏の間だけ、厳しい表情を緩めて登山者を迎えてくれます。
街ではうだるような暑さが続いていても、山の上にはまだ雪が残り、まるで別世界のよう。汗をひんやりと冷ましてくれる涼しい風が吹き抜けます。そして山頂から目にする景色は、一生ものの思い出をつくってくれるに違いありません。ダイナミックな山岳展望を楽しみながら食事をしたり、仲間と共に山小屋で過ごす特別な時間、夜は満天の星空に星座や天の川を探したりと、楽しみは尽きないでしょう。また、ライチョウやオコジョ、カモシカなど、珍しい山の生き物との出合いもあるかもしれません。そう、夏こそ憧れの山に一歩近づけるチャンスなのです。
夏山のシーズンは梅雨明けとともに始まります。それまでは残雪が多く、雪の上を登るための特別な道具や技術が必要で経験者向き。また、梅雨時は天候が安定せず、晴天にタイミングを合わせるのが大変です。特に最近は梅雨末期に豪雨となりやすく、そのような時に山に入ると大変危険です。
一方、9月も中旬になると、標高の高い山では雪が積もることも。山腹に紅葉が訪れるとともに、また雪の季節へと戻っていきます。梅雨明け直後の7月下旬から9月上旬までの比較的晴天が続く時期が、高山の登山に最も適したシーズンです。
"でも、標高の高い山に登るなんて無理だ"と思っていませんか? そんな人の味方となってくれるのがロープウエーやリフトなどの乗り物。大きな標高差を一気に運んでくれ、山麓のキツい樹林帯の登りで苦しい思いをすることなく、いきなり山の上部へ行くことができます。乗り物を降りれば、そこはもう標高の高い別世界。登山のいいところ取りをすることができるのです。
大人の山登りは、体力任せで日程ギリギリにプランニングするのではなく、あえてゆったりと計画するのがポイント。景色を心ゆくまで楽しんだり、花々を愛でる余裕が持てるようにしましょう。家から日帰りで行ける短めの行程でも麓の温泉旅館に泊まったり、山中泊をするときはガイドブックなどに紹介されている日程より宿泊を増やすなど、時間をかけたプランニングにするのがコツ。そうすることで、気持ちがせかされることなく、のんびりと山で過ごす時間を楽しめますし、悪天に遭ったときも時間があることで柔軟に対応できるため、安全登山にもつながります。
また、登山の際には、山のコース詳細が書かれている『分県登山ガイド』シリーズ(山と溪谷社)などのガイドブックや、『山と高原地図』(昭文社)に代表される登山地図をよく見て、その山を理解し、「山のグレーディング(※)」などを参考に、自分の体力や経験に合った山選びをしてください。
さあ、1年で最も賑わいを見せる夏山のシーズン。まずは身近な山に出掛けて、非日常の世界を楽しんでみましょう。