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トップ > 大人のたしなみ [Vol.2] 伝統芸能を楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第2回は、肩肘張らずに日本の伝統芸能に親しむコツを紹介しよう。
日本の伝統芸能に関心はあるものの、なんとなく近寄りがたい――。そう感じている人は少なくないでしょう。でも、ひとたび足を踏み入れてみれば、確実に自分の世界が広がるはずです。今回は、伝統芸能の代表格ともいえる「能楽」、「文楽」、「歌舞伎」、「落語」の魅力を紹介しましょう。
600年以上も続く「能楽」は、能と狂言を合わせた舞台芸術です。能は面(おもて)と美しい装束(しょうぞく)(衣装)を着けた役者が、笛や鼓(つづみ)による音楽や、言葉に節をつけた謡(うたい)などに合わせて演じる歌舞劇。一方、狂言はユーモラスなセリフ劇です。能楽の公演ではこの二つが上演されるので、能の優美さと狂言のコミカルさを楽しむことができます。
「文楽」は大人のための人形劇です。登場人物の心情や情景を語る「太夫(たゆう)」、音色で物語を奏でる「三味線弾き」、3人で一体の人形を操る「人形遣い」が作り上げるドラマチックな舞台に引き込まれます。
そして、「奇抜な身なりや行動をする」という意味の「傾く(かぶく)」をその名の由来とする「歌舞伎」。時代ごとの流行を取り入れ、演劇、舞踊、音楽の要素を備えた総合芸術として今日まで磨かれてきました。その華やかな舞台は見る者を圧倒します。
さらに、滑稽な話や人情話を一人で演じる「落語」は、話の結末に落ちがつくのが特徴です。落語家は噺家(はなしか)ともいわれ、通常扇子と手ぬぐい以外は持たず、身ぶりと話芸で観客の笑いを誘います。
では、これらの伝統芸能をいかに楽しむか。初心者の場合、鑑賞前にきっちり予習し、全てを理解しなければと思いがちです。しかし、それでは自らハードルを上げるようなもの。大事なのはまず「劇場に足を運ぶ」、これに尽きます。
伝統芸能はライブですから、優先させるべきは雰囲気を体で感じること。劇場に響く歌舞伎役者の声、能楽師による荘厳な舞、舞台を包む一瞬の静寂……。その場でしか味わえない臨場感こそが、伝統芸能の奥へと深く歩を進める磁力です。
「でも、何も分からなかったら楽しめないのでは……」と思う人には、国立劇場や国立能楽堂で開催している「鑑賞教室」がお薦めです。見どころなどの解説付きで人気の演目が鑑賞でき、初心者に最適です。通常のプログラムでも、劇場によってはイヤホンガイドや字幕を備えているので、物語を理解するのに役立ちます。
落語については、国立演芸場以外にも東京では「新宿末廣亭」や「浅草演芸ホール」といった寄席で、思い立ったら気軽に当日券で楽しめます。
伝統芸能はさまざまな角度から鑑賞できるのも魅力。人気漫画を原作とした歌舞伎や能楽、シェークスピアを題材とした文楽など、近頃増えている進化系の作品に親しむのもいいでしょう。また、「人」に注目し、役者、人形遣い、噺家など、お気に入りの演者を追い掛けることで、より深く長くその芸能に親しむこともできます。
まずは気楽に劇場に足を運び、空気を肌で感じてみましょう。音楽でも踊りでも語りでも、心に残る一瞬の鮮烈な体験を味わえることでしょう。
文化デジタルライブラリー
伝統芸能について知りたいときにアクセスしたいのが、独立行政法人 日本芸術文化振興会が運営するサイト「文化デジタルライブラリー」。伝統芸能を学ぶ、見る、調べるためのコンテンツが充実。
取材協力:独立行政法人 日本芸術文化振興会
協力:人形浄瑠璃文楽座