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トップ > 大人のたしなみ [Vol.3] 温泉旅館を楽しもう

社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第3回は、温泉ビューティ研究家の石井宏子さんに温泉旅館の魅力を聞いた。

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  • 大人のたしなみ
  • 2018.12.01

[Vol.3] 温泉旅館を楽しもう

心身を癒やす温泉や四季折々の景色、心尽くしの料理やもてなし……。足を一歩踏み入れてから宿を出るまでのひとときを丸ごと楽しめるのが温泉旅館の醍醐味(だいごみ)です。中でも和風の温泉旅館は、掛け軸や生け花が飾られた床の間や畳の感触など、日常生活で失われつつある日本文化を体験できる場でもあります。また、日本には温泉地に長期滞在し療養や保養を行う「湯治」文化があります。近年ではリフレッシュを目的とした1泊2日程度の「現代湯治」が新たな潮流となりつつあり、温泉旅が見直されています。そこで今回は、日本独特の世界観を持つ温泉旅館の魅力を紹介しましょう。

まずは温泉です。温泉にはさまざまな成分が含まれていますが、その種類や量によって決められるのが泉質で、温泉の働きを知る手掛かりになります。10種類に分類されている泉質は、温泉施設の入り口などに掲示されている「温泉分析書」でチェックできます。「温泉分析書」には泉質別に「冷え性」「不眠症」といった適応症(温泉療養で効果が期待できる症状)も表示されています。

では、泉質とその働きの一部を挙げてみましょう。例えば、冷えが気になるときは保温作用のある塩化物泉、疲れを癒やしたいときには体の血行を良くする硫黄泉、「美人の湯」ともいわれ肌の汚れを落としてすべすべにする炭酸水素塩泉、肌がしっとりする硫酸塩泉などがあります。こうした特徴を知っていれば、目的や好みに合った温泉に出掛けられます。泉質の異なる源泉がある温泉地で湯巡りをするときも「炭酸水素塩泉で肌をリセットしてから、保湿作用のある硫酸塩泉へ」といったように、泉質によって入る温泉の順番を決める目安にもなり、楽しさが倍増します。

  • 写真:伝統的な日本の建築や文化に親しむ

    伝統的な日本の建築や文化に親しむ

    温泉旅館は日本の伝統文化と触れ合える場でもある。例えば、島自体が神としてあがめられてきた広島県・宮島にたたずむ「岩惣(いわそう)」。神の島で眠るという価値もさることながら、細部の意匠も素晴らしい日本の伝統建築による一室一棟の離れで、情緒ある時間を過ごせる。
  • 10種類の泉質と特徴を知ろう

    写真:10種類の泉質と特徴を知ろう
  • 写真:自然湧出源泉で地球の生命を感じる

    自然湧出源泉で地球の生命を感じる

    「感動できる」という観点で温泉を選ぶなら、全国に数カ所ある自然湧出源泉に漬かれる温泉がお薦め。群馬県・法師温泉「長寿館」はその一つで、浴槽の下に敷き詰めた玉石の間からぷくぷくと源泉が湧き上がり、地球も温泉も生きていることを実感できる。
  • 写真:大自然が演出する絶景に出合う

    大自然が演出する絶景に出合う

    自然に恵まれた日本だからこそ宿の景色にもこだわりたい。新潟県・妙高高原 赤倉温泉「赤倉観光ホテル」は、妙高山の中腹に建ち、正面に斑尾山(まだらおやま)、右手に野尻湖、左にはるか佐渡島が見渡せる絶景の宿。天候によっては露天風呂から雲海を眺めながらご来光を拝める。

温泉を旅の一番の目当てにするなら、温泉旅館にはチェックイン開始時間に入館するのがお薦めです。入館したら客室で少し休憩してから"宿の顔"である大浴場で、新鮮な一番湯を楽しみましょう。また、朝の過ごし方も大切。朝湯に漬かるもよし、周辺を散策するもよし。朝食前に活動すると内臓が活性化し、健康にもつながります。

温泉旅館も、根強い人気を誇る伝統的な日本旅館のほか、ホテルタイプ、食にこだわったオーベルジュタイプなど多様化しています。近ごろは、温泉旅館で本やアートも楽しめるといったライフスタイルホテルも注目されています。

さまざまなタイプから選べることはうれしい限りですが、宿選びで失敗しないためには次のようなコツがあります。それは、自分が温泉旅館で最優先したいことを想像し、それに沿って検索すること。例えば、秘湯に入ることを望むなら、お得なプランに釣られて大旅館を選んだりせず、あくまでも秘湯のカテゴリーで探しましょう。すると、イメージ通りの時間を過ごすことができ、満足する確率が高まります。

最近では一人泊まりを受け入れている温泉旅館も増えています。誰かと一緒でも楽しいものですが、たまには一人で"自分メンテナンス"の温泉旅に出掛けてみませんか。

  • 写真:温泉周辺のイベントを楽しむ

    温泉周辺のイベントを楽しむ

    温泉地の周辺で行われるイベントにもぜひ足を運びたい。これからの季節にぴったりなのが山形県・月山(がっさん)志津温泉で毎年開催される「雪旅籠(はたご)の灯り」。冬場の6mにも及ぶ豪雪を利用して、宿場町だった当時の旅籠の町並みを再現。夜はろうそくの灯りで幻想的な世界に。
  • 写真:その土地ならではの美食を堪能する

    その土地ならではの美食を堪能する

    温泉旅館での食事は、その土地でしか味わえない料理を楽しみたい。石川県・山代温泉「あらや滔々庵(とうとうあん)」は芸術家・北大路魯山人ゆかりの宿で、北陸の新鮮な魚やカニ、季節野菜を使った加賀料理が美しい器で提供される。源泉で作るとろんとした温泉卵も絶品。
  • 写真:個性派宿で旅を印象的に

    個性派宿で旅を印象的に

    近ごろ多様化する温泉旅館の中で、これまでにないユニークな宿に泊まるのも面白い。山梨県・河口湖を見下ろす高台に建つ「ふふ 河口湖」は富士山を望む森のリゾート。ロビーラウンジをはじめ、館内にも木々の香りが漂うナチュラルな雰囲気が新しい。
  • ライフスタイルホテルが人気

    ライフスタイルホテルが人気

    注目を集めるライフスタイルホテルで、テーマのある温泉旅を。神奈川県・中強羅温泉「箱根本箱」は、本に囲まれて「暮らす」ように滞在できる温泉宿。まるで図書館のように館内の各所に本棚がしつらえてあり、本との出合いを演出している。
石井宏子 さん
温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト。年200日、国内外を旅して温泉や大自然を取材・執筆、多数の連載コラムを持つ。海外化粧品ブランドの広報経験を生かし、温泉地の活性化や研修を支援。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、気候療法士(ドイツ)。近著に『感動の温泉宿100』(文藝春秋)

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