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トップ > 大人のたしなみ [Vol.3] 温泉旅館を楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第3回は、温泉ビューティ研究家の石井宏子さんに温泉旅館の魅力を聞いた。
心身を癒やす温泉や四季折々の景色、心尽くしの料理やもてなし……。足を一歩踏み入れてから宿を出るまでのひとときを丸ごと楽しめるのが温泉旅館の醍醐味(だいごみ)です。中でも和風の温泉旅館は、掛け軸や生け花が飾られた床の間や畳の感触など、日常生活で失われつつある日本文化を体験できる場でもあります。また、日本には温泉地に長期滞在し療養や保養を行う「湯治」文化があります。近年ではリフレッシュを目的とした1泊2日程度の「現代湯治」が新たな潮流となりつつあり、温泉旅が見直されています。そこで今回は、日本独特の世界観を持つ温泉旅館の魅力を紹介しましょう。
まずは温泉です。温泉にはさまざまな成分が含まれていますが、その種類や量によって決められるのが泉質で、温泉の働きを知る手掛かりになります。10種類に分類されている泉質は、温泉施設の入り口などに掲示されている「温泉分析書」でチェックできます。「温泉分析書」には泉質別に「冷え性」「不眠症」といった適応症(温泉療養で効果が期待できる症状)も表示されています。
では、泉質とその働きの一部を挙げてみましょう。例えば、冷えが気になるときは保温作用のある塩化物泉、疲れを癒やしたいときには体の血行を良くする硫黄泉、「美人の湯」ともいわれ肌の汚れを落としてすべすべにする炭酸水素塩泉、肌がしっとりする硫酸塩泉などがあります。こうした特徴を知っていれば、目的や好みに合った温泉に出掛けられます。泉質の異なる源泉がある温泉地で湯巡りをするときも「炭酸水素塩泉で肌をリセットしてから、保湿作用のある硫酸塩泉へ」といったように、泉質によって入る温泉の順番を決める目安にもなり、楽しさが倍増します。
温泉を旅の一番の目当てにするなら、温泉旅館にはチェックイン開始時間に入館するのがお薦めです。入館したら客室で少し休憩してから"宿の顔"である大浴場で、新鮮な一番湯を楽しみましょう。また、朝の過ごし方も大切。朝湯に漬かるもよし、周辺を散策するもよし。朝食前に活動すると内臓が活性化し、健康にもつながります。
温泉旅館も、根強い人気を誇る伝統的な日本旅館のほか、ホテルタイプ、食にこだわったオーベルジュタイプなど多様化しています。近ごろは、温泉旅館で本やアートも楽しめるといったライフスタイルホテルも注目されています。
さまざまなタイプから選べることはうれしい限りですが、宿選びで失敗しないためには次のようなコツがあります。それは、自分が温泉旅館で最優先したいことを想像し、それに沿って検索すること。例えば、秘湯に入ることを望むなら、お得なプランに釣られて大旅館を選んだりせず、あくまでも秘湯のカテゴリーで探しましょう。すると、イメージ通りの時間を過ごすことができ、満足する確率が高まります。
最近では一人泊まりを受け入れている温泉旅館も増えています。誰かと一緒でも楽しいものですが、たまには一人で"自分メンテナンス"の温泉旅に出掛けてみませんか。