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トップ > 大人のたしなみ [Vol.4] ローカル鉄道を楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第4回は、旅行作家の野田隆さんにローカル鉄道の旅の魅力を聞いた。
車窓に広がる雄大な山並みや陽光にきらめく青い海、のどかな田園の風景……。単線を走る車両に揺られながら、日本の美しい自然に包まれるような体験ができるのがローカル鉄道の旅です。飛行機や高速バス、マイカーなど旅の手段はいろいろありますが、ローカル鉄道は移動手段というより、「乗って楽しむ」ことが目的です。マイカーの旅によくあるような高速道路で渋滞に巻き込まれることもなく、列車に身をゆだねて車窓の絶景に見とれたり、食事を楽しんだり、写真を撮ったりと、乗るだけでさまざまな楽しみを満喫できます。
中でも、ローカル鉄道初心者にお薦めなのが、ここ数年ブームを巻き起こしている観光列車です。火付け役となったのはJR九州で、その取り組みは九州新幹線が一部開業した2004年以前から始まっていました。国鉄時代から経営難が続いていた鉄道事業を立て直すべく、民営化を機に外部デザイナーの水戸岡鋭治(みとおかえいじ)氏を起用。1988年に運行を開始した「アクアエクスプレス」を皮切りに、次々と趣向を凝らした観光列車を走らせました。これらが大ブレークし、今や日本全国で個性的な観光列車が続々と誕生しています。
これらの列車は内装にこだわりが感じられるものが多く、ゆったりくつろげるボックス席やソファ席、展望スペースなどが設けられています。たいていの列車にはガイド役のアテンダントが乗務し、車内や車窓の案内、写真撮影のサポートなどおもてなしも充実。また、お土産や飲食物の販売のほか、レストラン車両やカフェ車両で地域色豊かな食を堪能できたり、楽器演奏や民話の語りなど沿線地域の文化を体験できたりする列車もあります。さらに絶景区間では、徐行したり停車したりするので、写真撮影も思いのまま。途中駅で下車して周辺を散策できるように、長時間停車するような列車ダイヤが組まれている場合もあります。
非日常の特別な時間が過ごせるローカル鉄道ですが、1日の本数が少ないものや、季節によっては運行していない路線もあるので、事前の準備が必要です。まず、乗りたい列車が決まったら、インターネットでその列車や鉄道会社の公式サイトを見てみましょう。運転日や時刻表、車両の特色や車内サービス、座席予約方法、沿線の観光スポットなど必要な情報が得られます。
また、ローカル鉄道の旅を計画するときに心掛けたいポイントは、ギリギリのスケジュールを避けて「余裕を持つ」こと。地方の駅構内は意外に広かったり、思いのほか終列車が早かったり、気象状況によっては遅延することもあるので、普段乗っている電車のようにスムーズな乗り換えをイメージしていると乗り遅れる場合もあります。列車の乗り換え時間などは、ゆとりを持たせて計画することが大事です。
ローカル鉄道は不便だし、待ち時間が長いという人がいるかもしれません。しかし、慌ただしい通勤電車や時間に追われる出張とは違い、急ぐことなくのんびりと過ごせる列車旅は、究極の贅沢といえるのではないでしょうか。