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トップ > 大人のたしなみ [Vol.7] 城を楽しもう

社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第7回は、城の魅力について、城郭ライターの萩原さちこさんに話を聞いた。

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  • 大人のたしなみ
  • 2020.03.01

[Vol.7] 城を楽しもう

近年、城を訪れる人が増えています。年齢や性別、知識を問わず、誰もが気軽に楽しめるようになったといえるでしょう。とはいえ、どの城から訪れたらよいのか、どこを見たらよいのか分からない人も多いはず。そこで今回は、城を楽しむコツを紹介します。

まずは、自分なりの「観賞のテーマ」を探すのがポイントです。「壮麗な天守を眺める」「城からの絶景や美しい景観の城を楽しむ」「石垣を観賞する」「軍事的な工夫を探す」など、何でも構いません。例えば「天守」をテーマにするなら、江戸時代から残る12の天守を訪れてみるとよいでしょう。また、「景色」を楽しみたいなら、『天空の城』と呼ばれる雲海に浮かぶ城へ。「石垣」に関心があるなら、石垣の名城とうたわれる城へ行ってみると、満足度がぐんと高まります。

  • 写真:世界文化遺産で究極の造形美を堪能

    世界文化遺産で究極の造形美を堪能

    法隆寺とともに、日本初の世界文化遺産に登録された姫路城(兵庫県姫路市)。8つの国宝から構成される天守群の美しさは一見の価値あり。他に74の国指定重要文化財が江戸時代から残る。関ヶ原の戦いの翌年から築かれた、戦いを想定した軍事的な工夫も見逃せない。
  • 写真:悠久の時空を感じる古代山城

    悠久の時空を感じる古代山城

    663年、日本は白村江の戦いに敗北。すると大和朝廷は拠点とする大宰府を防衛するため、同盟を結んでいた百済の技術を投じて北九州沿岸を中心に古代山城を築いた。写真の金田城(長崎県対馬市)も、その一つ。万里の長城のように、山の斜面に延々と石塁が巡るのが特徴。
  • 写真:「石垣の博物館」で石垣の美に触れる

    「石垣の博物館」で石垣の美に触れる

    金沢城(石川県金沢市)は、美しい石垣の宝庫。歴代の城主が築いた多種多様な石垣が、野外美術館の展示物のように点在する。写真は、異なる形状の石を組み合わせた玉泉院丸庭園の色紙短冊積石垣。石垣の上部に滝を組み込んで、庭園の借景としている。
  • 写真:誰もが息をのむ幻想的な「天空の城」

    誰もが息をのむ幻想的な「天空の城」

    軍事施設である城は、敵の動きや数を常に監視し把握できるよう、高い所に築くのが絶対条件。眺望が良いのは必然で、城を望む景色も良い。竹田城(兵庫県朝来市)は、雲海に浮かぶ「天空の城」として人気が高く、気象条件がそろった早朝、神秘的な姿に出合える。
    写真提供:吉田利栄

観賞のテーマを決めたら、2~3城を訪れ、見比べてみましょう。例えば現存する12の天守も、よく見ると装飾、色、大きさ、軍事的装置の有無などが全く異なります。テーマを絞って比較すると、一見同じように見える城の個性に気付くはずです。二つとして同じものがないこと、これぞ城の最大の魅力なのです。

その違いには必ず意味があるという点も、奥深いところです。城には、城主の技術力、財力や社会的地位、政治的な役割が如実に反映されます。緊迫した情勢下で築かれた姫路城の天守や彦根城(滋賀県彦根市)の天守には、見る者を圧倒する美しさの裏側に、敵を迎え撃つさまざまな仕掛けが隠されています。反対に、平和な時代に築かれた宇和島城(愛媛県宇和島市)の天守には、戦いへの備えが全くありません。城を通して、その時代の社会情勢を見ることもできるのです。

ただ石を積んだだけに思える石垣にも、個性があります。例えば徳島城(徳島県徳島市)の石垣は、この地域でしか採れない「阿波青石(あわあおいし)」と呼ばれる緑色片岩が積まれているため、独特の美しい青緑色をしています。地域や積む人の技術によって、石材の色や質感、石垣の表情に違いが生じるのです。さまざまな積み方の石垣が楽しめるのが、「石垣の博物館」と呼ばれる金沢城。城主の前田家は石垣の築造技術が高く、センスも抜群だったようで、どの積み方を見ても芸術的です。石垣を通して、城主の美意識に触れるのも一興です。

古くは天守や石垣がない城も存在しました。城の始まりは、弥生時代の「環濠(かんごう)集落」で、7~8世紀には北九州沿岸を中心に「古代山城」が築かれました。南北朝時代から戦国時代にかけての主流は、山全体を城域として要塞化した「山城」。城に天守や石垣が導入されたのは、戦国時代末期のことで、織田信長により私たちが一般的にイメージする姿の城が生み出され、豊臣秀吉や徳川家康に受け継がれました。

全国には北海道の「チャシ」から沖縄県の「グスク」まで、さまざまな城があります。興味のある城から気軽に訪れてみてはいかがでしょうか。

  • 写真:桜×城のコラボレーション

    桜×城のコラボレーション

    全国屈指の桜の名所、弘前城(青森県弘前市)。弘前さくらまつりには、毎年200万人以上が訪れる。桜守という桜の専属ドクターが、52種類約2600本に及ぶ桜を管理。西濠沿いの桜のトンネル、堀の水面を花びらが埋め尽くす花筏(はないかだ)など、美しい景観が堪能できる。
  • 写真:城下町で湧水と酒蔵巡り

    城下町で湧水と酒蔵巡り

    越前大野城(福井県大野市)のある大野は名水の町で、城下町に湧水地が点在。現在でもなんと、8割の家庭が地下水で生活している。小さな城下町ながら、江戸時代から続く酒蔵が4軒もあり、全国的に知られる銘酒も多い。大野の地下水を使って打った、越前そばも名物。
  • 写真:戦国の戦いを山城で体感

    戦国の戦いを山城で体感

    戦国時代の城が、ここ数年人気の兆し。ハイキング気分で楽しめて、休日レジャーにもぴったり。健康のために歩くシニア世代も多い。写真は、諏訪原城(静岡県島田市)の「丸馬出し」。出入り口の前面に設けられた半円形の空間で、防御の拠点にも攻撃の起点にもなる。
  • 写真:アプリで楽しみが10倍に

    アプリで楽しみが10倍に

    ユーザー数は約20万!スマートフォンを使った、城ファン必携無料アプリ「ニッポン城めぐり」。GPS位置情報を使って全国3000の城をスタンプラリーで巡るもの。バトンをつなぐ「狼煙ミッション」、総勢1000人以上の戦国武将を集める「家臣団コレクション」機能などもハマる。
萩原さちこ さん
城郭ライター、編集者。公益財団法人日本城郭協会理事。小学2年生で城に魅せられる。著書『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波書店)、『図説・戦う城の科学』(SBクリエイティブ)ほか。
https://46meg.com

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