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社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第8回は、ビールの魅力について、日本ビアジャーナリスト協会の藤原ヒロユキさんに話を聞いた。

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  • 大人のたしなみ
  • 2020.06.24

[Vol.8] ビールを楽しもう

古くから、ビールは私たちの生活に密着しているお酒です。古代メソポタミアの楔形(くさびがた)文字にはビールの造り方が記され、エジプトではピラミッド造りの報酬がビールで支払われたともいわれています。その後ゲルマン民族に受け継がれ、大移動とともに世界に広がっていきました。日本には幕末に伝わり、昭和の時代には冷蔵庫の普及とともに自宅でも飲めるようになりました。最近では、"とりあえずビール"から"クラフトビール"に人気が移行しつつあります。

クラフトビールとは、1960年代にアメリカで始まった小規模醸造の流れをくんだブルワリーが造るビールのことで、味わいや香りが多彩です。それだけに「どれを選べばいいのだろう」と悩む人も多いことでしょう。これを解決するのが"ビアスタイル"の把握です。

ビアスタイルとはビールをジャンル分けしたもので、これが分かれば開栓せずともビールの味や香りが想像できます。細かく分けると100種類近くにのぼり、全てを覚えるのは難しいため、まずはその大元となる二つの違い、「エール」と「ラガー」を理解しておきましょう。エールは上面発酵酵母、ラガーは下面発酵酵母で醸されます。前者は16~24℃で発酵し、香りがしっかりとしたビールに、後者は10℃以下で発酵し、シャープですっきりとした味わいに仕上がります。例外はあるものの、『香りのエール、シャープなラガー』と覚えておくとハズすことはありません。

次に、ビールの発祥国で分類がなされます。例えば、イギリス・アイルランド生まれのビールなら、若草のような香りが特徴のイギリス原種のホップが、アメリカ生まれのビールなら、柑橘系の香りが鮮烈なアメリカ原種のホップが使われており、味わいも華やかです。また、ドイツ・チェコ生まれのビールは上品ですっきりしたものが多く、ベルギー生まれのビールは野性味あふれる傾向にあります。これらの特徴を踏まえて、好みや気分で選び分けるとよいでしょう。

  • 写真:世界でも有名な日本のクラフトビール

    世界でも有名な日本のクラフトビール

    各国のビアコンペで多数の受賞歴を持つ常陸野(ひたちの)ネストビールは、50カ国以上に輸出されている。フラッグシップの「ホワイトエール」は柑橘系の香りとスパイシーな味わいが魅力。日本原産のビール麦「金子ゴールデン」を使った「ニッポニア」なども注目されている。
  • 写真:キャンプサイトも持つ大きな醸造所に成長

    キャンプサイトも持つ大きな醸造所に成長

    ベアードビールはアメリカ出身のブライアン・べアードが沼津漁港前で始めた小さな醸造所。修善寺に移った現在は、アメリカンスタイルの定番ビールのほか、地元のワサビや日本茶を使った「わびさびジャパンペールエール」や「静岡サマーみかんエール」などもある。
  • 写真:豪農屋敷の日本庭園で贅沢に味わう

    豪農(ごうのう)屋敷の日本庭園で贅沢に味わう

    白鳥が飛来する新潟県の瓢湖(ひょうこ)近くにあるスワンレイクビールは、約5000坪(日本庭園約2500坪)を誇る五十嵐邸の敷地内で醸造。世界最高峰のビアコンペ「ワールド・ビア・カップ」で2度も金賞を受賞している「ポーター」や「越乃米こしひかり仕込みビール」も人気。
  • 写真:ホップでビールの個性が決まる

    ホップでビールの個性が決まる

    ホップはビールにはなくてはならない原料で、「ホップがあってこそビール」といえる。品種によって香りや苦味の質が異なり、その選択によってビールの個性が決まってくる。近年は、グレープフルーツやトロピカルフルーツを思わせる香りのホップも好評。

ビールは食前や食事の前半の軽い料理に合わせるものと思っている人も多いのではないでしょうか。それは、一般的にビール(薄味のビール)が"喉を潤すため"のものと考えられているからでしょう。実際には、クラフトビールは色、香り、味、アルコール度数、炭酸の強弱などの違いがさまざまなので、どんな料理にも必ずぴったりとはまるビールがあるはずです。

前菜にはジャーマン・ピルスナー、魚料理にはアメリカン・ペールエール、肉料理にはアイリッシュ・スタウト、食後のチーズやデザートにはベルジャン・ダークストロングエールといった組み合わせも楽しめます。欧米ではビールだけでフルコースを提供するレストランもたくさんあります。ボトルが小ぶりで飲み切りサイズの上、価格も比較的お手頃なので、あれこれ試してみることができます。自宅で手軽に楽しめることも、クラフトビールの魅力の一つでしょう。

  • 写真:ビールと料理の発祥国合わせ

    ビールと料理の発祥国合わせ

    気になるビールは、その発祥地の料理を合わせてみよう。ドイツ発祥のヴァイツェンにはソーセージ、イギリス発祥のイングリッシュ・ペールエールにはフィッシュ&チップス。長年、その土地で親しまれてきたペアリングが合わないわけがない。
  • 写真:ビールと料理の色合わせ

    ビールと料理の色合わせ

    ビールの色はモルト(麦芽)がどれぐらい焙煎されているかによって決まる。濃い色のビールはよく焙煎されたモルトが使われ、味わいも香ばしい。淡い色のビールならその逆となる。濃色ビールはこんがり焼けた料理、淡色ビールは軽い炙りや火の通っていない料理と相性がいい。
    ※副原料にフルーツなどが使われている場合を除く
  • 写真:ビアスタイルに応じグラスを使い分ける

    ビアスタイルに応じグラスを使い分ける

    ホップをふんだんに使う「アメリカンIPA(インディア・ペールエール)」は、香りと味を引き出すために開発されたIPAグラスで飲むのがお薦め。香りの閉じ込めと発散のバランスが絶妙で、持ち手の段々は、飲み終わる頃に少なくなる泡のリチャージをしてくれる。
  • 写真:スポーツとも相性抜群

    スポーツとも相性抜群

    スポーツとビールは相性抜群。中でも野球はプレー中に合間が多く、ビールを飲むチャンスも多い。それが「ここでしか飲めない」ビールならさらにおいしく、横浜スタジアムと同社が運営する店舗では、「ベイスターズ・エール」と「ベイスターズ・ラガー」というオリジナルビールも提供。
藤原ヒロユキ さん
ビール評論家。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、日本ビアジャーナリスト協会代表として各種メディアで活躍中。ワールドビアカップをはじめ海外の国際ビアコンテストの審査員を務める。著書に『知識ゼロからのビール入門』(幻冬舎)、『BEER HANDBOOK』(ワイン王国)、『ビールはゆっくり飲みなさい』(日本経済新聞出版)など多数

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