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トップ > 大人のたしなみ [Vol.8] ビールを楽しもう
社会人たるもの、たしなみがあってこそデキる大人と感じさせる。ビジネスシーンでも、さまざまな分野の豆知識があればコミュニケーションが深まり、より良い結果につながることもあるだろう。第8回は、ビールの魅力について、日本ビアジャーナリスト協会の藤原ヒロユキさんに話を聞いた。
古くから、ビールは私たちの生活に密着しているお酒です。古代メソポタミアの楔形(くさびがた)文字にはビールの造り方が記され、エジプトではピラミッド造りの報酬がビールで支払われたともいわれています。その後ゲルマン民族に受け継がれ、大移動とともに世界に広がっていきました。日本には幕末に伝わり、昭和の時代には冷蔵庫の普及とともに自宅でも飲めるようになりました。最近では、"とりあえずビール"から"クラフトビール"に人気が移行しつつあります。
クラフトビールとは、1960年代にアメリカで始まった小規模醸造の流れをくんだブルワリーが造るビールのことで、味わいや香りが多彩です。それだけに「どれを選べばいいのだろう」と悩む人も多いことでしょう。これを解決するのが"ビアスタイル"の把握です。
ビアスタイルとはビールをジャンル分けしたもので、これが分かれば開栓せずともビールの味や香りが想像できます。細かく分けると100種類近くにのぼり、全てを覚えるのは難しいため、まずはその大元となる二つの違い、「エール」と「ラガー」を理解しておきましょう。エールは上面発酵酵母、ラガーは下面発酵酵母で醸されます。前者は16~24℃で発酵し、香りがしっかりとしたビールに、後者は10℃以下で発酵し、シャープですっきりとした味わいに仕上がります。例外はあるものの、『香りのエール、シャープなラガー』と覚えておくとハズすことはありません。
次に、ビールの発祥国で分類がなされます。例えば、イギリス・アイルランド生まれのビールなら、若草のような香りが特徴のイギリス原種のホップが、アメリカ生まれのビールなら、柑橘系の香りが鮮烈なアメリカ原種のホップが使われており、味わいも華やかです。また、ドイツ・チェコ生まれのビールは上品ですっきりしたものが多く、ベルギー生まれのビールは野性味あふれる傾向にあります。これらの特徴を踏まえて、好みや気分で選び分けるとよいでしょう。
ビールは食前や食事の前半の軽い料理に合わせるものと思っている人も多いのではないでしょうか。それは、一般的にビール(薄味のビール)が"喉を潤すため"のものと考えられているからでしょう。実際には、クラフトビールは色、香り、味、アルコール度数、炭酸の強弱などの違いがさまざまなので、どんな料理にも必ずぴったりとはまるビールがあるはずです。
前菜にはジャーマン・ピルスナー、魚料理にはアメリカン・ペールエール、肉料理にはアイリッシュ・スタウト、食後のチーズやデザートにはベルジャン・ダークストロングエールといった組み合わせも楽しめます。欧米ではビールだけでフルコースを提供するレストランもたくさんあります。ボトルが小ぶりで飲み切りサイズの上、価格も比較的お手頃なので、あれこれ試してみることができます。自宅で手軽に楽しめることも、クラフトビールの魅力の一つでしょう。