環境経営の一歩となったトナーカートリッジ

トナーカートリッジの回収、リサイクルへの取り組みは、他の製品へも大きな影響を与えている。トナーカートリッジリサイクルプログラムが1つのモデルとなり、インクカートリッジやデジタル複合機のドラムのリサイクルへと拡大している。

写真:西尾氏

写真:西尾氏

西尾元雄(にしお・もとお)キヤノンマーケティングジャパン株式会社CSR推進本部 CSR企画推進部 部長

数々のCSR活動を担当し、環境活動のほか、社会貢献活動にも注力している。所属組織と役職は、2010年6月当時。

キヤノンでは、デジタル複合機やレーザービームプリンターの本体はもちろんのこと、消耗品であるトナーカートリッジ、インクカートリッジやデジタル複合機のドラムなどにおいてもリサイクルなど環境に配慮した製品を生産・販売。こうした製品のリサイクル事業を軸とし、地球環境と調和した企業経営を行う環境経営にも取り組んでいる。キヤノンマーケティングジャパングループのCSR活動を推進しているキヤノンマーケティングジャパン株式会社CSR推進本部の西尾氏がキヤノン全体の環境活動について語った。

再利用の輪が広がったリサイクルプログラム

トナーカートリッジのリサイクル事業は、キヤノングループ全体の象徴的な取り組みです。この取り組みが始まった1990年頃は、世の中ではまだまだ大量廃棄が当たり前の時代でした。そんな時代に、ビジネスとリサイクルを連携させたというのは非常に斬新な取り組みだったと思います。
こうした先進的な取り組みを始めたということが私たちの誇りになっています。トナーカートリッジが大量廃棄され続ければ、当然、大量のゴミ処理問題が発生し、深刻な社会問題としてとりあげられたかもしれません。
写真:西尾氏
このようにキヤノンが自主的に環境活動に取り組む背景には、企業理念である「共生」と創業時から企業DNAとして受け継がれる「三自の精神」が、キヤノン社員の行動の原点かもしれない。

トナーカートリッジのリサイクルに自主的に取り組んだことが、他製品にも大きな影響を与えたのではないかと私自身は感じています。実際に、この取り組みが1つの土台となって、インクカートリッジ、デジタル複合機のドラム、トナーの容器など消耗品のリサイクル事業へとつながっています。

もしリサイクル法や法律の規制の中での取り組みであれば、「やらされている」という感じになってしまい、このような自主的な拡大にはなっていなかったのではないでしょうか。トナーカートリッジのモデルがあったからこそ、リサイクルの輪が社内でどんどん広がっていきました


「使えるものを活かす」という意識の変革

写真:西尾氏

1990年代は、環境対策は莫大なコストがかかるという考え方が一般的でした。しかし、これでは活動が長続きしません。活動を長続きさせるためには、環境の領域だけで考えるのではなく、ビジネスとの連携を図っていくことが1つのポイントになります。

つまり、環境活動とビジネスの両輪で考えていくことが大切なんです。そのきっかけとなったのがトナーカートリッジのリサイクルプログラムです。

「使えるものを活かす」という考え方は、ビジネスとしてどう成立させるかという発想から生まれました。どう材料として活かすか、どうリサイクル効率を向上するか、を考えることで、「環境対策はコストがかかる」という意識から「使えるものを活かす」という意識に社員も変化していきました。そして、新しい技術や効率化するアイディアも生まれました。

環境経営という意味でも、トナーカートリッジの取り組みは私たちの大きな経験になりましたね。

たとえば、2005年から使用済みのデジタル複合機を再利用する「Refreshedシリーズ」という製品そのもののリサイクルにも取り組んでいますが、使用済み部品、パーツを再使用できる状態にするために多彩な洗浄方式を用いたキヤノンの独自技術により、機種によっては平均90%以上の部品の再利用率を達成しています。ここにも「使えるものは活かす」といった発想が生きています。

全国各地の環境活動を紹介するCO2CO2(コツコツ)

各拠点や各担当者が自主的に取り組んでいる環境活動を横展開できるように、CO2CO2(コツコツ)というコンテンツを社内で公開しています。環境活動を呼び掛ける「みちのく通心」といった新聞の発行や、エコバックを使い紙袋を使わないといった営業マンの取り組みといった小さな活動にも目を向け、社員一人ひとりの環境意識のさらなる向上を図っています。


環境意識を向上するためのさまざまな活動

2000年に家電リサイクル法が施行され、2005年頃から地球温暖化が叫ばれるようになり、以前より製品の回収やリサイクルに対する理解も深まってきました。キヤノンでも、コミュニティやお客さまに対して環境意識を向上するための活動を推進しています。

その1つが「ベルからはじめるリサイクル」と銘打った、学校でのベルマーク運動の協賛です。この活動は、子供の頃から環境に対する意識向上を目的とした活動です。回収量も向上しており、環境への意識も向上しています。

GREEN NAVI(グリーンナビ)Webサイトイメージ

また、20周年を機に、CO2をどのくらい削減できるかをシミュレーションする「GREEN NAVI(グリーンナビ)」をWebサイトとしてオープンしました。お客さま一人ひとりの活動効果を具体的に示すことによって、トナーカートリッジの回収率アップにつながればと考えています。

ベルマーク運動への協賛

参加校はすでに12,504校(2009年12月末当時)。2009年には合計で14,925,872点を進呈。


たくさんのお客さまが回収に協力

写真:西尾氏

トナーカートリッジから始まったリサイクルプログラムは、商品を広げインクジェットカートリッジでも同様の取組みを行い、さらに2008年からは自社の取り組みだけでなく、プリンターメーカーやオフィス機器の他メーカー5社と協力して、「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」を実施しています。お客さまの利便性と回収率向上のため、全国の郵便局3,639局(2009年6月末当時)の郵便局に回収箱を設置し、家庭用プリンターの使用済みインクカートリッジの回収を行っています。

トナーカートリッジの回収を始めた1990年には、リサイクル事業に取り組んでいる企業は、この業界ではありませんでした。キヤノンの取り組みに他メーカーも追随してきましたから、業界の環境活動をリードしてきたという自負があります。これからは、これまでの活動の経験を活かし、社会をつないでいく環境活動に取り組んでいきたいと考えています。

2010年5月から環境を未来につないでいくというコンセプトのもと、環境に貢献しているNPOを支援するという取り組みをスタートしました。トナーカートリッジが1本回収されるごとに、植林、間伐、干潟を守る取り組み、廃田を再生などの支援を行っていきます。また、こうした活動が地域再生や雇用の創出につながるようなモデル事業として取り組んでいく予定です。人や地域が元気になる、地域の経済活動の再生につながる取り組みとして、社内外から注目されています。

トナーカートリッジのリサイクルプログラムがスタートした1990年は、まだリサイクルが一般的ではなかった。環境意識が高まっている今、環境の輪は他の製品へと広がり、さらに回収に協力してくださるお客さまの輪も広がっている。そして現在、環境活動から社会貢献へと活動の輪が広がり始めている。