開発者インタビュー

F2.8L / F4Lズームレンズシリーズ

プロフェッショナルユーザーの期待に応え進化を続ける

開発者プロフィール

商品企画 イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学事業部
課長
家塚 賢吾

EFレンズシリーズ商品企画を担当。F2.8L/F4Lズームレンズを含めたEFレンズの製品化と性能向上に取り組んでいる。

光学設計 イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
主幹研究員
遠藤 宏志

EOSの誕生を光学設計の立場からサポートする。大口径Lズームシリーズのキーテクノロジーである大口径非球面レンズの開発・設計には入社当時から取り組んでいる。

メカ設計 イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
室長
佐藤 茂樹

入社時よりEFレンズのメカ設計を担当。デジタル化が急速に加速した2000年以降の技術革新と信頼性向上に大きく貢献する。

電気設計 イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
主任研究員
岡田 浩司

ISユニットの制御を主に担当。現在はカメラとレンズの通信を行うマッチング部門のシステム系を担当し、EOSとEFレンズの相互連携に取り組んでいる。

レンズ加工 イメージコミュニケーション事業本部
宇都宮工場
主幹
仲光 久和

製造部全体の効率化や品質のフォローアップをすることで、高品質なプロ用レンズの安定供給に向けた取り組みを進めている。

生産技術 イメージコミュニケーション事業本部
宇都宮工場
課長代理
奥島 賢一

量産に向けた技術面のサポートを担当。研削非球面レンズの高精度化や高精度球面レンズ加工の自動化推進に貢献。設計部門と共同して新技術の検討を進める。

レンズシリーズ別コンセプト

最先端の技術とノウハウを結集した
キヤノンのフラッグシップ・ズーム

F2.8L

Zoom Lens Series

大口径F2.8の明るさと大きなボケによる多彩な表現力が魅力のレンズシリーズ。贅沢な光学設計、伝統ある高度な光学理論と超精密加工技術によって、単焦点レンズに迫る卓越した描写性能と優れた操作性を実現。さらに耐環境性・堅牢性を兼ね備えたプロフェッショナルのためのフラッグシップ・ズーム。

  • EF16-35mm F2.8L III USM
  • EF24-70mm F2.8L II USM
  • EF70-200mm F2.8L USM
  • EF70-200mm F2.8L IS III USM NEW

高い光学性能と機動力を兼ね備えた
ハイパフォーマンス・ズーム

F4L

Zoom Lens Series

優れた描写性能を保ちつつ、機動力と手頃な価格が魅力のコンパクトシリーズ。風景撮影など機材を軽くまとめたい状況を想定し、携帯性や取り回しやすさを考慮して設計。優れた光学性能と小型サイズを両立したほか、 F2.8LズームシリーズにはないズームレンジやIS搭載モデルの選択が可能。

  • EF16-35mm F4L IS USM
  • EF17-40mm F4L USM
  • EF24-70mm F4L IS USM
  • EF24-105mm F4L IS II USM
  • EF70-200mm F4L USM
  • EF70-200mm F4L IS II USM NEW

1章 EOS誕生と大口径Lズームレンズ群の開発

プロのために、大口径で高画質という
夢のようなズームレンズをつくりたかった。

大口径ズームレンズ開発のルーツとなったのはいつ頃ですか。

商品企画

EFレンズシリーズに最初のプロ向け大口径ズームレンズが登場したのは1989年、当時の最高級AF一眼レフカメラ EOS-1と同時期に発売したEF20-35mm F2.8L、EF28-80mm F2.8-4L USM、EF80-200mm F2.8Lの3本です。キヤノンのレンズシステムにおいてF2.8から始まるプロ向けズームレンズを3本そろえたのはこれが初めてのことでした。当時のレンズ設計者にとっては、EFマウントでプロ向けの大口径ズームレンズをつくるのが夢でした。かつて画質や明るさを求めるプロの多くがまだ単焦点レンズを使っていた時代がありました。1973年にFD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.を発売したところ非常に評判がよく、明るくて高画質なプロ用ズームレンズを求める声が多く寄せられるようになりました。やがて技術が進歩して、EFレンズシリーズのLズーム3本が発売されると、ズームレンズに対して慎重だったプロにも、単焦点並みに明るく高画質なズームレンズが使われるようになりました。

今でこそ開放F値2.8のズームレンズは各社から発売されていますが、その当時、F2.8から始まるズームレンズを、広角、標準、望遠でシリーズ化するという考えはかなり新しいものでした。新しい時代を迎えるにあたって、難しいこと、新しいことに挑戦したいという当時の設計者たちの思想がなければ、大口径Lズームシリーズはここまで支持され、進化していなかったかもしれませんね。

イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学事業部
課長
家塚 賢吾
商品企画

開放F値2.8固定のズームとUSMで、
プロが満足するAFシステムの構築を目指した。

初期のF2.8Lズームシリーズの特長をおしえてください。

商品企画

1989年発売の3本の大口径ズームレンズの後継機として発売したEF17-35mm F2.8L USM、EF28-70mm F2.8L USM、EF70-200mm F2.8L USMの3本はズーム全域でF2.8を実現しました。これにより、絞り開放付近でのズーム位置による絞り値の変動がなくなり、3本のレンズシステムとして撮影現場での利便性が向上したほか、全レンズにUSMを搭載しAF撮影をより快速・快適にしました。また、EF70-200mm F2.8L USMからは1.4倍と2倍のエクステンダーにも対応しました。

メカ設計

ボディ内モーターでフォーカスレンズを動かすのが主流だった時代に、キヤノンはレンズ内に駆動系をもたせる独自の方式を採用しました。レンズに合わせた最適な位置に駆動系を配置することができ、速くて正確なAFを実現しました。その当時に開発されたリングタイプUSM(超音波モーター)はレンズにあわせた形状や制御の改良などを行い更によくしています。

商品企画

USMを初めて搭載した製品は1987年、EOSシステム誕生の年にリリースされた超望遠レンズEF300mm F2.8L USMです。被写界深度が極めて浅い超望遠300mmにもかかわらず、オートフォーカスで素早く正確にピントを合わせることができることが高く評価されました。そのUSMの技術をF2.8Lズームシリーズに採用し、プロが満足するAFズームレンズシステムを構築しました。

イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
室長
佐藤 茂樹
メカ設計

  • 1973

    プロ用大口径ズームレンズのさきがけ
    FD35-70mm F2.8-3.5 S.S.C.

    単焦点レンズに匹敵する高画質化を実現、これ以降に次々と登場するショートズームのパイオニアとして近代光学史にその名を止める名作レンズ。

  • 1987

    EOS誕生

    キヤノン創立50周年に当たる1987年にリリースされた、EOS 650/620。完全電子マウントのEFマウントシステムを新たに採用した。

  • 1989

    F2.8Lズームシリーズのさきがけ

    初代EOS-1と同時期に発売された、大口径ズームシリーズ3本は現在につづくF2.8Lズームシリーズのさきがけ。Lレンズならではの高画質をプロに提供した。
    ・EF20-35mm F2.8L
    ・EF28-80mm F2.8-4L USM
    ・EF80-200mm F2.8L

  • 1987

    USMを世界で初めて実用化

    キヤノンが世界で初めて実用化に成功したレンズ駆動モーター。超音波の振動エネルギーにより作動するUSMは、低消費電力型、起動・停止の応答性に優れ制御性も高いなど、数々の特徴からほぼ理想的といえるAF駆動を実現した。

    世界初、USM搭載超望遠Lレンズ
    EF300mm F2.8L USM

    高い光学性能とインナーフォーカス方式+リングUSM採用により、EOSのコンセプトである快速・快適オートフォーカスを実現した、世界中のプロカメラマンから絶賛された代表的な大口径超望遠レンズの一つ。

2章 加速するデジタル化と信頼性の向上

デジタルの時代に入り、
より多くのお客様にLレンズの価値が伝わった。

デジタル時代が到来した当時のエピソードを教えてください。

商品企画

フィルム時代から変わったのは、撮影した写真を大きくプリントして活用する機会が増えたことです。それにより、開発者にはこれまで以上の高画質設計が要求されるようになりました。

光学設計

F値変動のないズームレンズの光学設計は、特に、望遠側の球面収差、広角側の像面湾曲、および広角端から望遠端までの色収差補正が難しく、硝材選択や非球面レンズを適切に選択することが重要となります。シミュレーションソフトが現代ほど高度化していない時代だったので、その開発には非常に困難をともないました。試作品をつくり何回もテストを繰り返し、フラッグシップに相応しい、極限の性能バランスを目指しました。

イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
主幹研究員
遠藤 宏志
光学設計

メカ設計

カメラの画素数が向上したため、より高いピント精度を求められました。そのため、フォーカス駆動全般を見直しました。また、性能劣化を抑制するために、製品別に最適な光学調整方法を選択し、一本ずつ調整を行うようにしました。また、レンズ群ごとの傾きや平行偏芯調整をデジタル的に行えるように、調整方法も進化させ精度を高めてきました。

商品企画

一眼レフカメラのデジタル化によって、Lレンズの高画質化をさらに推し進めることになりました。

革新的な「ズーム連動インナーフォーカス機構 」を採用。

標準ズームの広角端24mmを実現したブレークスルーはなんですか。

メカ設計

ズーム連動インナーフォーカス機構の採用により広角化を実現しました。従来、ズームレンズのフォーカス方式はメカ機構の制約上、無限遠~至近へのフォーカス繰出し量がワイド~テレに渡って一定であることが条件だったため、光学設計上の制約がありました。本機構はこの制約から光学設計を解放した革新的なフォーカス機構です。

光学設計

本機構を採用し、従来の前玉フォーカスからリアフォーカス及びインナーフォーカスを採用することで標準ズームの広角端をほぼ同じサイズのまま広角化することが可能になりました。後に出るEF24-105mm F4L IS USMにも採用し、広角24mmスタートの高倍率ズームの実現に大きく貢献しています。

電気設計

また、本機構は歴代のEF70-200mm F2.8Lシリーズにも搭載し、望遠レンズのコンパクト化にも貢献。フォーカスレンズを小型化することができ、高速でのAF駆動ができるようになりました。

ズーム連動インナーフォーカス機構を初めて採用した高倍率ズーム
EF35-135mm F4-5.6 USM

1990年、キヤノンで初めてズームレンズに絞りより後ろの第2レンズ群で焦点調節を行うインナーフォーカス方式を採用した高倍率ズームレンズ。本レンズでズームレンズにおけるインナーフォーカス及びリアフォーカスの技術が確立されたことにより、以降のEFレンズにおける多群ズームレンズの展開に大いに寄与した規範レンズ。

EF28-70mm F2.8L USMのレンズ構成図

EF24-70mm F2.8L USMのレンズ構成図

耐久性・堅牢性を大幅に向上させたことで、プロの満足度も向上した。

2000年代中頃からの耐久性向上について教えてください。

商品企画

デジタル時代になり、大きく変化したことの一つは撮影枚数です。特に新聞、報道関係の方の撮影枚数は飛躍的に伸び、一段と厳しいレベルの耐久性や堅牢性が求められるようになったのです。通常の使い方では不具合はほとんど発生しないのですが、報道写真の分野では、激しい衝突も避けられない、カメラやレンズにとっては非常に苛酷な環境で使われています。我々はプロの世界でのNo.1システムを目指してきましたので、メカ構造を一から見直し、耐久性、堅牢性の向上に取り組みました。

メカ設計

頻繁に回されるズームリングは内部の機構とメカ的に連動しています。従ってデジタル時代になって快適な操作感と信頼性を両立させる必要があり、2000年代中頃からリンク機構部にベアリングを採用し、なめらかな動作になるように進化させてきました。また、内部が複雑な機構になれば、その分、快適な操作から離れていくので、光学設計段階から操作性を考慮した検討も行い、日々トライ&エラーの繰り返しでした。 防塵防滴構造については、ただ密閉度を上げるだけでは操作感が重くなってしまうため、空気の通り道を考え、防滴性能との両立を図りつつ外観に影響させないようにすることが求められました。

商品企画

耐久性を大幅に向上させた結果、プロの満足度も向上しました。撮り直しのきかない現場で正常に作動する目に見えないスペックこそ、プロが求めている本当のスペックなのです。

メカ設計

一例として70-200mmの望遠系はスポーツ撮影に使われることが多く、一瞬を切り取る撮影ができないというトラブルは絶対にあってはなりません。2010年にあわせて発売した、EF70-200mm F2.8L IS II USM以降は、耐久性や堅牢性を大幅に向上させました。

イメージコミュニケーション事業本部
宇都宮工場
課長代理
奥島 賢一
生産技術

キヤノンの強みは精度の高さと
それを量産する技術を兼ね備えていること。

広角レンズの非球面技術の進歩について教えて下さい。

光学設計

デジタルになってからは周辺画質の向上と倍率色収差をいかに補正するかが大きなテーマです。中でも非球面レンズの技術は欠かすことはできません。キヤノンは研削非球面、レプリカ、ガラスモールド(GMo)など数々の非球面レンズ設計・製造技術があり、それぞれ適材適所で使い分けています。 EF16-35mm F2.8L III USMでは大口径レンズの両面非球面化に成功し、収差をさらに改善しました。

生産技術

キヤノンの強みは、特に高い精度が求められる大口径ガラスモールド非球面レンズを量産できる技術力です。EF16-35mm F2.8L III USMにはφ62.5mmという極端に大きな非球面レンズを採用しています。これを量産するため、同じくキヤノンが手掛ける、カメラ用レンズよりもはるかに高精度が求められる半導体用露光装置の研磨技術や計測技術をコンシューマー向けに応用し、金型性能における形状の高精度化を進めています。研削非球面でもこの技術を応用し、従来比約2.5倍もの要求精度を達成しています。これにより点光源のボケもより美しくなりました。

非球面レンズ

高精度GMo非球面金型

望遠レンズの光学系について教えてください。

商品企画

望遠レンズでは特に色収差が問題となるので、UDレンズなど低分散ガラスを採用し収差を補正しています。EF70-200mm F2.8L IS II USMからは蛍石を採用し、ユーザーからも良い評価を頂いています。EF70-200mm F2.8L IS III USMにおいては、フレア改善のご要望に応え最新のコーティング技術ASCを採用し製品の完成度を高めました。

光学設計

実はカタログには特にうたっていませんが、色収差や像面湾曲、周辺収差を抑えるハイインデックス(高屈折率)ガラスといった新硝材も採用しています。ここ数年はいろいろな種類のガラスが採用できるようになりました。望遠レンズは一見すると光学系に大きな変化は見られませんが、光学設計者からすれば当時は夢のガラスだと思っていたものも使用できるようになり、レンズ設計の幅はどんどん広がっています。

UDレンズ

レンズ加工

UDレンズは扱いが非常に難しいデリケートなレンズです。キヤノンでは長い期間研究を重ねた結果、UDレンズを量産できる自動化技術を10年ほど前から確立し、安定した品質で供給することが可能になりました。また、高精度加工が可能になったため、前述のハイインデックスガラスを採用できるようになりました。

匠の業を標準化し、高品質なレンズの安定供給を心がけている。

デジタル化によって製造現場ではどのような変化がおとずれましたか。

レンズ加工

デジタル時代になると市場の要求が増え大量生産が必要となり、これまで1日に数枚程度の小ロットだから対応できた高精度のものを、数百枚も加工するようになりました。そのため、それまでは職人の技能に頼っていた作業を極限まで標準化(デジタル化)することに取り組みはじめたのです。同時に工具の標準化を進め、新しい加工機械や評価機器も積極的に取り入れました。こうした取り組みによりレンズ表面を非常に高い精度で、かつ安定した品質で量産することに成功したのです。

イメージコミュニケーション事業本部
宇都宮工場
主幹
仲光 久和
レンズ加工

宇都宮工場では高品質で安定した供給のため、ほぼすべての製品に組み込むレンズの加工工程を自動化することに成功しました。しかし、レンズの形状や精度の問題で自動化が困難なものがあり、特定部品の研磨工程においては熟練工の技能が生かされおり、技能伝承にも取り組んでいます。

生産技術と設計が連携し、常にヒトと情報が交流するベストな関係を構築できている。

レンズはどのように設計され生産ラインへ移るのですか。

光学設計

レンズ設計にはキヤノンが独自に開発した光学シミュレーションソフトを使い、新たな仕様を実現するレンズを設計しています。また、様々な材質で強度や衝撃のシミュレーションも試作前に実施し、光学性能への影響を確認しています。これらのシミュレーション技術には処理能力が非常に優れたコンピューターを採用しています。

商品企画

シミュレーション技術によってフレアやゴーストがズーム位置やフォーカス位置、絞り値によってどう出るかなどを確認することができます。これにより限界まで性能を高めた設計が可能となり、工場側もそれに必要な精度に応えようとするのです。

生産技術

設計部門と工場の技術部門は、新製品の構想が始まる段階から技術的な検討会を頻繁に開催しています。そこでは新規要素の洗い出しと技術ポイント、組立や加工のしやすさ、自動化対応などを協議し、量産に向けた準備を確立させていきます。

商品企画

こうした密な連携がとれるのは、設計と工場が隣接する位置関係にあるからです。2000年からこの体制を続けています。

研究所と工場が隣接し密に連携

光学技術研究所

宇都宮工場

3章 F4Lズームシリーズの誕生

F2.8Lズームの高画質を受け継ぐ、
コンパクトで機動力のあるシステムをつくりたかった。

F4Lズームシリーズはどのような思いで開発されたのですか。

商品企画

F2.8Lズームシリーズがプロから非常に高く受け入れられ、この画質を維持したまま今度はもっとコンパクトなF4のLズームシリーズをつくりたいと考えました。位置づけはプロのセカンドレンズ。一言で言えば機動力の高いシステムをつくりたかったのです。径が小さくなることで価格を抑えることもでき、より幅広いハイエンドユーザーに向けた商品展開ができました。

光学設計

F2.8Lズームシリーズの弟分ですが、光学性能はまったく妥協していません。実際、開放同士の比較ではほぼ同じ高画質を実現しています。

商品企画

F2.8の明るさは魅力的で人気なのですが、プロの中にはあえてF4を選ばれる方もいらっしゃいます。それはやはり持ち運びしやすくいつでもすばやく取り出し撮影できる機動力にあります。また最近ではカメラの高感度化によりF4ズームレンズの使いやすさも更に向上しました。F4Lズームの登場により、撮影目的や好みにあわせて機材が選べる、厚みのあるレンズシステムを構築できました。

  • 1985

    高画質・小型軽量ズーム
    New FD80-200mm F4L

    高性能レンズとして高い評価を得ているLレンズシリーズの一環として開発。高性能かつ小型軽量を実現した。EFレンズのF4Lズーム誕生のヒントとなった。

  • 2003

    EOS 10Dと同時期にリリースされた
    EF17-40mm F4L USM

    APS-Cサイズカメラの標準ズームレンズとしての使い勝手を考え、あえて望遠側に焦点距離をのばし、F2.8Lズームシリーズにはないズーム域を提供。

  • 2005

    EOS 5Dと同時期に発売された
    EF24-105mm F4L IS USM

    広角24mmからの高倍率ズームを実現。さらにF2.8LズームシリーズにはないISを搭載し、より幅広い撮影シーンに対応した万能ズーム。

広角から望遠までISをそろえているのがF4Lシリーズの魅力。

F4LシリーズにISを搭載できたのはなぜですか。

メカ設計

F2.8Lズームに比べF値が大きいため、小径に構成でき、ISを搭載しても大型化することなく構成できました。F2.8Lの高画質を維持するため鏡筒構成とISユニットをどのように配置して成り立たせるかが腕の見せ所でした。

電気設計

ISは日々進化をつづけていて最新のEF70-200mm F4L IS II USMではCIPA基準5段のIS性能を達成しました。IS性能が上がるとシャッター速度を遅くすることができますが、その場合低周波の揺れを補正する必要が出てきます。低周波の揺れとはカラダ全体の大きな揺れで、これを補正するためジャイロセンサーから送られてくる低周波の信号をできるだけカットしないよう制御し実現しました。

商品企画

F4Lズームには広角から望遠まで4本のISレンズがあります。撮影目的に合わせ機動性の高いシステムを組むことができるのが魅力です。

広角から標準、望遠まですべてISモデルを選べるのがF4Lシリーズのアドバンテージ

EF16-35mm F4L IS USM
EF24-70mm F4L IS USM
EF24-105mm F4L IS II USM
EF70-200mm F4L IS II USM

ISレンズユニット

EF70-200mm F4L IS II USMでは手持ちで夜景撮影を可能にするCIPA基準5段の手ブレ補正効果※を実現

CIPA基準。焦点距離200mm, EOS-1D X Mark II使用時

IS ON

焦点距離:200mm
ISO 800 1/6秒 f/4

IS OFF

焦点距離:200mm
ISO 800 1/6秒 f/4

EFレンズ専用のマイコンチップを開発し、高性能化と集積化に成功した。

見えない部分での進化はありますか。

電気設計

2007年ごろから、EFレンズ専用のマイコンチップの搭載を始めました。それまでは汎用マイコンを使い、外付け部品で専用回路を組んでUSMやISなどを制御していましたが、汎用のものは我々がほしい機能がすべて入っているわけではなく、実装面積や性能面で課題がありました。そこでEFレンズに最適化した専用マイコンの開発に着手したのです。EF70-200mm F4L IS II USMには最新のマイコンチップが搭載され高度な演算処理を実現しています。

電気設計

専用マイコンにしたことによるメリットは高性能化と集積化です。より高精度な制御を実現するとともに実装面積の縮小によりレンズの小型化に貢献しています。現在ではさらに進化を重ね、より高性能、高機能なものへと進化。2007年以降に発売されたEFレンズにはほぼすべてこれら専用のマイコンチップを搭載し電気性能を進化させています。

イメージコミュニケーション事業本部
ICB光学開発センター
主任研究員
岡田 浩司
電気設計

高性能制御によりどんなことが可能になりましたか。

電気設計

たとえば動画撮影時のUSM低速駆動や電磁絞りのなめらかな動作が可能になりました。静止画撮影ではいかに速く被写体にピントを合わせるかが求められていました。絞りの動作も同様です。しかし動画の世界はまったく逆で、フォーカスも絞りもゆっくりなめらかに制御する必要がありました。

メカ設計

動画撮影を考慮しフォーカスを低速で動かしつづけるという動作はUSMにとって難しく今までの延長線上ではない新たな制御手法が必要でした。USMの外観は同じですが動かし方は当初よりかなり進化しています。

4章 F2.8L/F4Lズームシステムの満足度向上のために

プロをはじめとしたハイエンドユーザーの理想のレンズシステムを目指して。

F2.8L/F4Lズームシリーズは今後どう発展していきますか。

商品企画

F2.8LズームシリーズとF4Lズームシリーズは、EOS-1シリーズやEOS 5シリーズなど、プロが使うカメラとともに進化してきました。私たちは常にプロにとって理想のレンズを追求してきました。それは今後も続きます。

私たちは、描写性能、優れた操作性、耐久性、そして堅牢性について、プロの満足を得られるものだけを「L」の称号を持つズームとして開発してきました。そして常によりよいレンズを生み出すために、現在も設計技術と生産技術を向上させる挑戦は続いています。

レンズ開発関係者が新しい挑戦を続ける原動力は「プロにとって最高のレンズをつくりたい」という気持ちにあります。その時代、これからのプロが満足するために、徹底的な性能と品質を追求しています。

映像を取り巻く環境が変化しても、常に新しい映像表現や映像の価値を追求するプロがいる限り、私たちはその時代のEOSシステムの基幹となるプロ用のレンズシステムを進化させていきます。

プロ用Lズームシステムの将来にご期待ください。