「わたし、絵が描けないから、カメラが表現の道具になったんです。自然が好きだから、それを表現したい、残したいという思いがすごくあります」。
写真家・米美知子はそう話しながら、2000メートル級の山を、さっそうと駆け上がって行く。EOS 5D Mark IVと数本のEFレンズ、そして重い三脚を担ぎながら。
眼下ではめまぐるしく雲が動き、山で色づき始めた紅葉は、ときおり登山者を楽しませてくれる。八合目を過ぎたあたりで、突然、カメラバッグを下ろした。
最初の撮影ポイントを見つけたのだ。
「歩きながら気になるところを見つけたら、すぐに写真の構図のイメージはできます。立ち止まり、ファインダーを覗いてみて、それがより明確になっていく。そして最終的な構図を決めていきます」。ピントの位置や主役の場所、奥行きをどこまで入れるか。それらはカメラを使って考えるという。
米美知子は、ポイントを見つけてからの撮影判断に迷いがないため、決定的瞬間を逃すことも少ない。風景は、太陽の角度、雲の動き、風などによって、その姿や色を大きく変えてしまうことがある。迷いは、チャンスを逃すことになるのだ。実際、この日は雲の動きが激しく、目の前が真っ白になったかと思えば、彼方の稜線まで見渡せる瞬間もあった。
日本の風景の魅力とはいったい何か。率直に聞いてみた。
「やっぱり四季があること。それぞれの季節には潤いがあって、奥が深い。国土は狭いのに、大味じゃない濃密で落ち着きのある自然がたくさんある。それが日本の風景の魅力じゃないですかね」。さらに「色がこんなにも混じり合う国って、少ないと思います。木の種類も日本はすごく多い。そして花もあるし、滝も川もある。周りは海で囲まれているから海も撮れるし。被写体は本当に豊富ですよね」。一生かかっても、撮りたいところは撮りきれないと嘆く姿に、日本の風景に対する深い愛を感じた。
極端に彩度を上げたり、コントラストを強調しないのは米美知子の作品の特徴でもある。見たままの自然を描きたいという理由からに他ならない。「ネイチャーフォトを撮っているんだから、自然でなきゃおかしいと思います。雨が降っているなら雨を表現したい。写真は真実だから、あるがままの自然をいかに自分が描きたいような構図にするか。そのためにレンズを換えたり、立ち位置を変えたり、アングルを変えたり、自分がやってあげるんです。相手は動いてくれませんからね」。
では、米美知子にとって秋とはどんな季節なのだろう。
「葉が落ちる前に、最後の力を振り絞って色づこうとする、葉っぱたちの一生懸命さがすごくいいですよね。そこが秋の魅力ではないでしょうか。わたしは秋の始まりも好きですが、晩秋はもっと好き。やがて冬が来るっていう予感があるから。あと、落ち葉を踏む音も好き。サクサクっていう。そう、わたし、写真で音を表現したいってすごく思っているんです。写真は平面な表現でしょう?臨場感や質感、風の感じとか、わたしが描く秋の写真から、音も感じて欲しい。だから、実際にわたしが自然の中で感じてるものを、ちゃんと写真に入れるっていう意識はすごくありますね」。風景写真を、そういう思いで撮っているからこそ、撮影地ではなく、写真を撮ったときの思いや、撮ろうと思った理由を聞いて欲しいのだという。それは、風景写真に、どこまでもまっすぐで一途な米美知子の切なる思いでもある。
「風景撮影は宝探し」も、米美知子の言葉。「わたしの“宝探し”は家を出る前から始まっているんです。どこに行こうかなって場所を探して、とにかく行ってみる。車を降りて歩き始める。どんな景色が私を待っているんだろう。ドキドキ感、期待感はたまらないですね。そんな好奇心を持って歩いているときは本当に楽しい」。嬉々として語るその目は、少女のように輝いていた。
“宝物”は、ただ漠然と前を向いて歩いても見つからない。キョロキョロしながら探していくうちに、うまく出逢えたり、ふと振り返ったときに、すごくいいものを見つけたりするのだという。
「“わたしを撮って!”っていうものが、森の中には必ずいるんです」。
米 美知子
独学で写真をはじめ、アマチュア時代には全国規模コンテストで数々の賞を受賞。
日本の素晴らしい自然と色彩美を独創的な視点で表現。中でも表情豊かな森に魅せられ、
北海道から西表島まで日本の森を撮り歩く。
「夢のある表情豊かな作品」をテーマに精力的に撮り続けている。
写真家・米美知子氏が仕上げた、紅葉の作品を最終イメージとしたピクチャースタイルを作成しました。米美知子氏監修のもと、各種パラメーターを細かく調整。ピクチャースタイル「風景」をベースに、赤と黄をより自然の色味に。派手すぎない、しっとりと落ち着いた仕上がりになるよう調整。赤に溶け込みがちな黄も独立して見えるよう意識されています。また青空などの青の濃度がはっきり出るよう、わずかに青の彩度を上げています。一つ一つの色が独立して見えるため、適用する作品によって、より立体感(奥行き)のある仕上がりが期待できます。日本の秋の色彩を奥深く表現するピクチャースタイル[FIVE Autumn]を、ぜひお楽しみください。
※ 適用する作品によって、仕上がり結果は異なります。ご自身のさまざまな作品でお試しください。
カタログ P07
EOS 5D Mark IV EF24-105mm F4L IS II USM 1/60sec F16 ISO400 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P24
EOS 5D Mark IV EF24-105mm F4L IS II USM 1/60sec F16 ISO800 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P12
EOS 5D Mark IV EF24-105mm F4L IS II USM 1/400sec F16 ISO1600 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P31
EOS 5D Mark IV EF16-35mm F2.8L III USM 1/40sec F16 ISO800 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P03
EOS 5D Mark IV EF16-35mm F4L IS USM 1/80sec F16 ISO400 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P06
EOS 5D Mark IV EF16-35mm F2.8L III USM 1/30sec F16 ISO800 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景
カタログ P18-19
EOS 5D Mark IV EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM 1/50sec F16 ISO800 WB:太陽光 ピクチャースタイル:[FIVE Autumn]
カタログ P29
EOS 5D Mark IV EF24-105mm F4L IS II USM 1/20sec F16 ISO400 WB:太陽光 ピクチャースタイル:風景