"S"の記憶

140

会期 : 2020.9.19 - 2020.10.31

第140回展 中西 敏貴
「Kamuy」

第140回展 中西 敏貴 「Kamuy」

本展は、写真家 中西 敏貴氏による写真展です。
氏は、大雪山の麓にある美瑛町で自然や農風景と長年向き合いながら、アイヌの人々の自然観に人と自然との関わりの答えを探し求めてきました。
両者の共存の道を写真によって表現した最新作、約40点を展示します。
作品は主に「EOS R(一部 EOS 5DMarkIV )」で撮影し、キヤノンの大判プリンター「imagePROGRAF」でプリントし展示します。

作家メッセージ

北海道の先住民族であるアイヌの人々は、森羅万象に“カムイ”の存在を意識してきたといいます。美しくて恐ろしく、遠くて近い人間と表裏一体の存在として。ヒグマのことを「キムン・カムイ」といい、風のことを「レラ・カムイ」と呼んだ彼らは、どんな気配を自然から感じ取り、どのような自然観で風景を見ていたのでしょうか。
森を歩けば獣の気配を感じ、山に入れば唸り声をあげる風に出会う。吹雪の日の叫ぶような風の音は聴覚を奪い、厳しい冬の日には無の中に気配を感じる。目には見えないが、確かにそこにある、そこにいる。自然に溶け込むような暮らしを続けることで、山や川、そして風さえもが自らと親しいつながりを持ち始めてきます。少し詩的な言葉を借りるとすれば、人知の及ばない“気配の集積”としての風景に自らの無意識の領域が触れたような気がしたのです。
その見えない気配のようなものを写真によって描き出すことで、文字を持たなかったアイヌの人々の自然観に触れることはできないだろうか。そして、私の中にある内なるものが、自然という外なるものと、どのようなつながりを持ち得ているのかを知ることができるのではないか。人と自然の関わりの答えを探し始めた私の意識は次第に人里から山へと向かい、そして今は宇宙にまで拡張しようとしています。
人に悪さをする神のことをアイヌの人々は「ウェン・カムイ」と呼びます。2020年の世界では、目には見えないウェン・カムイとの戦いを強いられているのかもしれません。視覚化され、安定的な美しさに溺れていた時代は終わりを告げ、目には見えないものを感じ、共存しつつ生きていかなければならないようになりました。そんな時代だからこそ、 目には見えない“カムイ”の気配を探ることで、現代に生きる我々が自然といかにして関わり、どのように共存して生きていくべきかの、一つの道が見えるような気がするのです。

中西 敏貴

中西 敏貴(なかにし としき)

1971年大阪生まれ。1989年頃から北海道へと通い続け、2012年に撮影拠点である美瑛町へ移住。そこに住まう者としての視点を重視し、農の風景とそこに暮らす人々をモチーフに作品制作を行ってきた。現在は大雪山とその麓に広がる原生林にも意識を広げ、人と自然との関わりを写真によって描き出す作業を続けている。主な個展に「光の彩」キヤノンギャラリー(東京2012年)、「ORDINARY」リコーイメージングスクエア(東京2016年)、「Design」弘重ギャラリー(東京2017年)、「Signs」Nine Gallery(東京2019年)など。主な写真集に「ORDINARY」(風景写真出版 2016年)、「Design」(キヤノンDreamLabo5000 2017年)、「FARMLANDSCAPE」(青菁社 2019年) などがある。日本写真家協会会員、日本風景写真家協会会員、日本風景写真協会指導会員、 Mind Shift Gear アンバサダー。

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