作家インタビュー

佐藤 信太郎

佐藤 信太郎

Shintaro Sato

第99回展「The spirit of the place」

The spirit of the place

EOS 5D Mark III・EF16-35mm F2.8L II USM・F10・0.8 秒・ISO800

The spirit of the place

街を歩き、その場所に流れる地霊【The spirit of the place】を感じながら、さまざまな都市の表情を切り撮ってきた、佐藤信太郎。今回は、東京スカイツリーを中心に、その周囲に広がる街の様子や、そこで繰り広げられる人の営みを写した、『東京|天空樹』の作品を紹介する。

都市を客観的に写す

写真専門学校に通っていたころ、私は、自分の気持ちを風景に投影した心象写真を撮っていました。しかし、当時教わっていた先生から、「写真を自分の感情を表す手段として使うだけではいけない」と言われ、自分の気持ちとは切り離し、都市を客観的に撮ることをはじめました。以来、それが私のテーマとなり、夜の繁華街を写した『夜光』、東京の非常階段からの眺めを切り撮った『非常階段東京』、今回掲載する『東京|天空樹』という作品が生まれました。

The spirit of the place

EOS 5D Mark III・EF70-200mm F4L USM・F11・3.2 秒・ISO320

『東京|天空樹』の作品を撮りはじめたのは、2008年の12月ごろです。東京スカイツリーの建設予定地を撮影してほしいという依頼を受けたとき、生まれ育った東京の下町が劇的に変わることに興味を抱き、撮り続けてみようと考えました。

当初は、ある場所から定点観測のように撮り続けようと思っていたのですが、想像を超える大きさに、その計画はすぐに破綻しました。そして、デジタルの利点を生かした撮影法に切り替えたのです。

The spirit of the place

EOS 5D Mark II・EF70-200mm F4L USM・F10・3.2 秒・ISO400

The spirit of the place

EOS 5D Mark II・EF16-35mm F2.8L II USM・F10・5 秒・ISO250

The spirit of the place

EOS 5D Mark II・EF28mm F2.8・F9・6 秒・ISO250

さまざまな瞬間をつなぎ合わせた一枚

デジタルは、非常に小さいものまで鮮明に写し撮れるだけでなく、撮影した画像をつなぎ合わせれば、フレームを自由に作れます。このシリーズからはじめたパノラマ写真も、デジタルだからこそ使える手法であり、急激に大きくなり続ける東京スカイツリーに合わせ、フレームの横幅も自在に伸ばすことができたのです。さらに、この手法は、複数の写真をつなぎ合わせているため、その細部のディテールは鮮明なまま。

私がよいと思える写真は、何度見ても飽きのこない写真です。『東京|天空樹』では、それまでは入れていなかった人を写し込みましたが、たくさん写る人をそれぞれ細かく見れば、その都度新しい発見があり、撮った自分でさえ写真を見て初めて気付くこともあります。

また、複数の写真をつなぎ合わせると、一枚の写真の中に複数の時間が存在していることになります。つまり、現実では見られない光景になるのですが、私は、むしろこの光景こそ、リアリティーがあると感じるのです。人が目の前の風景を眺めるとき、一点だけを注視せず、ある程度の時間をかけて、いろいろなところに目を巡らすはずです。それを写真で再現するには、たった一枚で一瞬を切り撮るよりも、さまざまな瞬間をつなぎ合わせた一枚の方が、より近いのではないかと思うのです。

The spirit of the place

EOS 5D Mark II・EF70-200mm F4L USM・F11・1/320 秒・ISO250

都市の写真を撮るようになり、私は、それまで行ったことのない場所へ赴くことで、見ているようで見ていなかった都市の表情を、いくつも知ることができました。この日本には、まだまだ私の知らない街の顔が潜んでいます。それがなくならない限り、私は、ずっとさまざまな街の表情を追い続けます。

The spirit of the place

佐藤 信太郎「The spirit of the place」

2014.10.31 - 2014.12.15

展示情報

佐藤 信太郎

佐藤 信太郎 (さとう しんたろう)

1969年
東京生まれ
1992年
東京綜合写真専門学校卒業
1995年
早稲田大学第一文学部卒業、共同通信社入社
2001年
共同通信社退社 2002年からフリー

●個展

1998年
「夜光」コニカプラザ
2005年
「TWILIGHT ZONE」フォト・ギャラリー・インターナショナル
2008年
TOKYO TWILIGHT ZONE -非常階段東京-」フォト・ギャラリー・インターナショナル
2012年
「東京 | 天空樹 Risen in the East」フォト・ギャラリー・インターナショナル
「林忠彦賞受賞記念写真展」富士フィルムフォトサロン東京、周南市美術博物館
2013年
「都市百景」千葉市民ギャラリー・いなげ
2014年
「夜光」フォト・ギャラリー・インターナショナル(11月7日より)

●グループ展

2002年
GLOBAL IMAGES 「地球絵巻」キヤノンワンダーミュージアムデジタルアートギャラリー
2003年
「ひとつぼ展」20回記念going1992-2002 ガーディアン・ガーデン
2006年
「Tokyo East Perspective墨東写真」墨田区横川・鈴木興産1号M倉庫
2008年
「Texas Collects Asia Contemporary Art」Crow Collection of Asian Art(アメリカ)
2008年
「風景劇場」北海道立旭川美術館
2009年
「日本写真協会賞受賞作品展」富士フィルムフォトサロン東京
2010年
「SPACE」フォト・ギャラリー・インターナショナル
2010年
「テグ・フォト・ビエンナーレ」(韓国)
2011年
「日本写真協会賞新人賞受賞作品展 Crown on the Earth」(セルビア、ドイツ、ロシア)
2012年
「REINVENTING TOKYO」 MEAD ART MUSEUM (アメリカ)

●受賞

2009年
日本写真協会賞新人賞
千葉市芸術文化新人賞
2012年
林忠彦賞

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「moments」2014年11月号に掲載されたものです。

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