作家インタビュー

鋤田 正義

鋤田 正義

Masayoshi Sukita

第116回展「SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop」

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

T・レックスやYMOなど時代を代表するミュージシャンの写真で、世界的に高く評価されている写真家、鋤田正義。今回は写真展『SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop』の中から、40年以上にわたり撮り続けてきた、デヴィッド・ボウイとイギー・ポップのポートレートを紹介する。

デヴィッド・ボウイを40年以上撮り続けて

2016年1月10日。デヴィッド・ボウイの訃報が世界を駆け巡った。僕のスマートフォンには、ものすごい数のメールが海外のメディアから入っていました。僕は、ロック界のスーパースターを40年以上、撮り続けてきたのですが、そのショックで4〜5日ぼんやりしていたのを覚えています。

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

僕が写真を撮り始めたのは、ジェームズ・ディーンに憧れていた高校時代のこと。母親に安いカメラを買ってもらったのがきっかけで、その後、写真学校に入学。大阪の広告代理店、東京のデザイン会社でファッション写真を撮ることになります。60年代後半になると、アメリカはロックの時代になり、イギリスではツイッギーが登場。若者文化の時代に突入するのですが、僕はその現場を見たくて、1972年、T・レックスを撮るため、ロンドンに行きます。そのとき、街角に貼られていたポスターを見て、ボウイの存在を知り、滞在していたホテルのスタッフに聞くと、コンサートに連れていってくれました。その後、ファッションジャーナリストの島田政江さんを通して、ボウイに写真を見せると、共通するテイストを感じたのか、すぐに撮影がOKとなりました。

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

写真は時代に寄り添い 永遠の存在へ

1977年にボウイがイギー・ポップと一緒に来日したときに、原宿の小さなスタジオで二人を撮りました。ボウイの注文は、革ジャンを2〜3枚用意してくれということだけ。彼はリンゼイ・ケンプという前衛舞踏家に学んだことがあり、体の動きがきれい。普段着の感覚で、どんどん動いていく。僕は次の動きを予測しながら反射的にシャッターを切る。スリリングな撮影が終わって気付いたのは、アーティストは心の中に表現したいものを抱えて生きている。写真家はそれを引き出すのが務めだということでした。

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

その日以来、僕の写真の撮り方は変わったと思います。その後、何年かして京都で撮る機会がありましたが、そのときは阪急電車に乗って撮影しました。京都人の目線、日常感で撮りたかったのです。彼も分かっていて、乗車チケットを買ったり、楽しそうにしていたのが思い出されます。映画『戦場のメリークリスマス』の後、ひげを生やしていると聞き、撮らせてくれとニューヨークに連絡したらOKが出て、顔のアップだけを撮りに行きました。坂本龍一さんが作曲した、まだ未発売のサウンドトラックを渡したら、スタジオでじっと聴いていて、ロケのことを思い出しているのか、戦争のことを思い込んでいるのか、ときどき目に涙をためて、独特の空気の中での撮影になりました。

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

イギー・ポップは、ライブの最中、観客席に飛び込んだり、お茶会の席にいきなり行くといいだしたり、やんちゃ型の人間で、ボウイにないものを持っています。そこをボウイも好きだったのでしょう。いい友人関係に見えました。
今回の写真展にあたり、イギーの写真を加えました。親しい友人同士だった二人の年代からの足跡を表したかったからです。最近は、海外のワークショップで写真を語ることもありますが、そこで感じるのは、一枚の写真に人は同じ想いを共有できるということ。時代に寄り添いながら撮ってきた写真が、その時代を象徴し永遠に続く存在となりえることに、写真の面白さや可能性を感じます。

SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop
SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop

鋤田 正義「SUKITA / M BLOWS UP David Bowie & Iggy Pop」

2017.1.19 - 2017.3.6

展示情報

鋤田 正義

鋤田 正義 (すきた まさよし)

1938年、福岡県生まれ。

ドキュメンタリーから広告、映画、音楽まで幅広く活動。代表的な写真集にD.ボウイ「氣」、「Speed of Life」、「T-REX 1972」、「YMO x SUKITA」、忌野清志郎「Soul」などがある。
近年ではロンドンのV&A Museum主催の展示会「David Bowie is」へ参加。また、イギリス、フランス、イタリア、オーストラリア、アメリカなど、世界各地で自身の写真展を展開中。2017年にはベルリンでの写真展を予定している。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2017年1月号に掲載されたものです。

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