作家インタビュー

瀧本 幹也

瀧本 幹也

Mikiya Takimoto

第121回展「FLAME / SURFACE」

FLAME / SURFACE

写真1
EOS 5Ds R・EF135mm F2L USM・F6.3・1/1000秒・ISO100

FLAME / SURFACE

広告写真や映画など、多彩なフィールドで活躍する、写真家、瀧本幹也。今回は、火山ガスが地表面で発光する現象をとらえた「FLAME」と 、地球に存在する水である波をとらえた「SURFACE」で構成する写真展『FLAME / SURFACE』の中より、その一部を紹介する。

地球という惑星の生命力と宇宙的な時間感覚

今回の写真展は、2013年に写真集として発表した、地球の姿とスペースシャトルを収めた『LAND SPACE』、地球表面を覆い、包み込む海をテーマにした『GRAIN OF LIGHT』の発展形として新しく撮影したものです。

『LAND SPACE』は、生命が誕生する遙か以前の地球の大地を想い描いた「LAND」と、スペースシャトルを人類の最先端文明としてとらえた「SPACE」と、相対するテーマを対比させながら構成したもので、『GRAIN OF LIGHT』は、陽の光が海面の揺らぎに反射して幾千もの光の粒が生まれる瞬間と、原初の地球から絶え間なく続く海の営みを写し撮ったシリーズです。

  • FLAME / SURFACE

    写真2
    EOS 5Ds R・EF85mm F1.2L II USM・F2.5・1秒・ISO400

  • FLAME / SURFACE

    写真3
    EOS 5Ds R・EF50mm F1.2L USM・F1.2・1/50秒・ISO1600

今までは、ずっと大型カメラとフィルムで撮ってきたのですが、今回、初めてEOS 5Ds Rで撮影に挑みました。最初は思う通りにちゃんと撮れるか不安な面もありましたが、手にしてみると結構いけるという実感があって、ならば、今まで撮ることができないものを撮ろうと発想を変えました。

  • FLAME / SURFACE

    写真4
    EOS 5Ds R・EF50mm F1.2L USM・F1.4・1/60秒・ISO1600

  • FLAME / SURFACE

    写真5
    EOS 5Ds R・EF50mm F1.2L USM・F1.4・1/60秒・ISO1600

写真2~5、8の作品は、火山から噴き出す硫黄ガスが空気に触れて自然発光するブルーファイア現象をとらえた「FLAME」シリーズ。地球の内部から長い時間をかけて上昇してきた硫黄ガスが山頂の火口付近で噴き出し、地表で空気に触れて自然に発火しています。蒼く怪しげに揺れ動く小さな炎に、遠い彼方の星雲の光、宇宙的な時間を感じながらシャッターを切りました。都会では、地球は安定していると錯覚しますが、内部にマグマが煮えたぎり、地殻の変動もあり、人間は非常に不安定な大地の上で生きていることを改めて意識しました。

写真1、6、7は、地球に何十億年前から存在する水という物質の現象をとらえた「SURFACE」シリーズ。地球の引力で地表に張り付いている水、海を先入観なしに、私の存在も消して撮影すると、どうなるだろうか。海の概念をリセットしてみようと思い、水平線や、天地、左右をあえて意識せずに狙ったものです。海の動きは太古の時代から続いている動きなので、決定的な瞬間にシャッターを切るというよりも、永く続く海の現象を写すという意識で撮影しました。海の写真といえば、水平線を撮るので横位置が多いと思いますが、縦位置にするとひと目見たときに海に見えず、より地球の生命感を伝えられるのではないかと思います。

  • FLAME / SURFACE

    写真6
    EOS 5Ds R・EF135mm F2L USM・F5.6・1/1000秒・ISO100

  • FLAME / SURFACE

    写真7
    EOS 5Ds R・EF135mm F2L USM・F7.1・1/1000秒・ISO100

見て完結するのではなく、想像力を刺激する写真

私が写真を撮るとき、意識しているのは説明的にならないこと。写真を見た人がこれは何かと想像したり、発見するきっかけになればと思います。写真9の作品は火山が噴火して溶岩が流れたあと、溶岩が流体のまま固まって、あとから苔が生えて再生してきている場所で撮った一枚。地球という惑星の生命力を感じてもらえたらと願っています。

  • FLAME / SURFACE

    写真8
    EOS 5Ds R・EF85mm F1.2L II USM・F2.5・1秒・ISO400

今回、EOS 5Ds Rで感じたのは、波の飛翔、炎の色まで精緻にとらえる高画質。また、自然の連続性を表現するために連写で撮りましたが、自分で驚くほどの枚数を撮り、フィルムとの違いを実感しました。これからも、人が遺伝子レベルで持っているような感覚で、宇宙や地球の営みを撮り続けたいと思っています。

FLAME / SURFACE

写真9

瀧本 幹也「FLAME / SURFACE」

瀧本 幹也「FLAME / SURFACE」

2017.10.12 - 2017.11.27

展示情報

瀧本 幹也

瀧本 幹也 (たきもと みきや)

写真家/1974年愛知県生まれ。94年より藤井保氏に師事。98年に写真家として独立し、瀧本幹也写真事務所を設立。広告写真をはじめ、グラフィック、エディトリアルワーク、自身の作品制作活動、コマーシャルフィルム、映画など幅広い分野の撮影を手がける。おもな作品集に『LAND SPACE』(13)『SIGHTSEEING』(07)『BAUHAUS DESSAU ∴ MIKIYA TAKIMOTO』(05)などがある。また13年からは映画の撮影にも取り組む。自身初となる『そして父になる』(是枝裕和監督作品)では第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞を受賞。15年『海街diary』で第39回日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞。17年『三度目の殺人』第74回ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に選出された。東京ADC賞、ニューヨーク ADC賞 GOLD、カンヌライオンズ国際広告祭 GOLD、ACC グランプリ、日経広告賞グランプリ、ニューヨーク CLIO AWARDS GOLD、ロンドン D&AD YELLOW PENCILなど、国内外での受賞歴多数。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2017年11月号に掲載されたものです。

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