作家インタビュー

川田 喜久治

川田 喜久治

Kikuji Kawada

第127回展「百幻影-100 Illusions」

百幻影-100 Illusions

百幻影-100 Illusions

今日、さまざまな現象に現れる不明のクライシスをパロディ的な手法でとらえたユーモラスな「ロス・カプリチョス」。
天空と地上の出来事の共振から、世紀の再現を暗示した宇宙誌「ラスト・コスモロジー」。
この二つのシリーズに、新しいイメージを加えて再編し展示する写真展。
その中から、作品の一部を紹介する。

写真。それは光と影が再生するイリュージヨン

写真は見たものを無心に、あるときは祈るように厳粛に、さらにスリのように素早く写します。流れているこの時間を切断してしまうと、残るのは幻影のオブジェです。そのオブジェが記憶と想像力のなかで声を上げ、新しい光となるのを慎重に選びます。それが写真の輝くときだと私はおもっています。

  • 百幻影-100 Illusions
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1970年代からはじめた「ロス・カプリチョス」はスペインの画家ゴヤのエッチングに潜む魔力や暴力への想像力に触発されて撮ったシリーズですが、ゴヤのいうデーモン、すなはち、 心に沈潜する抗し難い力、あるいは心のなかにすむ怪物――が今さまざまな時間のなかに起こっているような幻覚に襲われます。フォトショップで再生した作品にも眠り続けた記憶が目ざめ、さまざまな既視感を膨らませ、あるものは見知らぬ影に変わり、どこか危険なクローンのような遺伝子を持つ双生児のような顔を見せてくるのです。

80年代から2000年にかけて撮影した「ラスト・コスモロジー」は天体や気象現象と地上の出来事を同時に見ようとしたシリーズです。私が影響を受けた各界の先輩たち、不運な死を遂げた友人、母の死などによる寂寞感を何かで埋めたいという思いが、きっかけだったように思います。20世紀最後の金環蝕に続き、昭和期の終焉があり、わが象徴的な太陽は異変や破局の謎を抱えたまま雲間に消えて行きました。今日のコスモロジーは気が遠くなるような数式の素粒子論や物理学が切っても切れない関係にあるでしょうが、私の「ラスト・コスモロジー」は地球のさまざまな物質が彼方の空や雲と交感しながら進行する類推の山、写真の装置が見つけたアナロジーで、事実とは逆のリアルなイリュージョンに魅せられました。

アートの中では平易でわかりやすく、しかし先鋭的

今、写真はアートのなかでもかなり広い表現域を持っているように思います。

百幻影-100 Illusions

小説のように世界との関係を複雑に異化したり、絵画のように高度な抽象や超現実のオブジェに関心をはらわなくてもいいかもしれません。

ドローンやパノラマで写せば未知の視覚的な考えがえられるし、レンズを換えることでも、シャッタースピードを選んでも思考は変わってきます。目の前のものが夢のなかの現実と似ているほどリアルな感覚を写真はもたらすのです。

モンタージュすることでも異時同図は生まれます。電波に乗せれば、瞬時にイメージはとんでゆくし、表現伝達のスピードはきわめて速い。自在の変化そのものが写真の持ち味で、単純にシャッターを切るだけで終わります。あとは方法をどうみつけるかです。写真は新しい科学や技術とともにさらに変わるでしょう。全世界で毎月10億以上の人たちが利用するインスタグラムのスクロール写真にはユーモアとグロテスクが見えています。これからどうなるか、私の今一番の興味のあるところです。

百幻影-100 Illusions
川田 喜久治「百幻影-100 Illusions」

川田 喜久治「百幻影-100 Illusions」

2018.8.31 - 2018.10.11

展示情報

川田 喜久治

川田 喜久治 (かわだ きくじ)

1933年茨城県に生まれる。1955年立教大学経済学部卒業。『週刊新潮』の創刊(1956年)より、グラビア等の撮影を担当。1959年よりフリーランス。「VIVO」設立同人(1959~61年)。主な個展に「ゼノン-ラスト・コスモロジー」フォト・ギャラリー・インターナショナル [以下PGI](東京1996年)、「カー・マニアック」PGI(東京1998年)、「Eureka 全都市」PGI(東京2001年)、「川田喜久治展 世界劇場」東京都写真美術館(東京2003年)、「地図」PGI(東京2004年12月-2005年2月)、「川田喜久治写真展 Eureka 全都市 Multigraph」東京工芸大学写大ギャラリー(東京2005年)、「見えない都市」PGI(東京2006年)、「川田喜久治展 ATLAS 1998-2006 全都市」エプサイト(東京2006年)、「遠い場所の記憶:メモワール 1951-1966」PGI(東京2008年)、「ワールズ・エンド World’sEnd 2008~2010」PGI(東京2010年)、「日光-寓話 Nikko-A Parable」PGI(東京2011年)「2011-phenomena」PGI(東京2012年)、「The Last Cosmology」Michael Hoppen Gallery(ロンドン2014年)、「The Last Cosmology」L. PARKER STEPHENSON PHOTOGRAPHS(ニューヨーク2014年)、「Last Things」PGI(東京2016年)、「ロス・カプリチョス –インスタグラフィ–2017」PGI(東京2018年)がある。グループ展多数。作品は東京国立近代美術館、東京都写真美術館、ニューヨーク近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、テート・モダン、ボストン美術館などにコレクションされている。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2018年9月号に掲載されたものです。

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