作家インタビュー

澤田 知子・須藤 絢乃

澤田 知子・須藤 絢乃

Tomoko Sawada and Ayano Sudo

第128回展「SELF/OTHERS

SELF/OTHERS

SELF/OTHERS

外見と内面の関係性をテーマに撮影を続ける写真家、澤田知子。
変身願望のもと、自己と他人のあわいを表現する写真家、須藤絢乃。
セルフポートレイトを手法とする二人の写真展『SELF/OTHERS』の中から、作品の一部を紹介する。

セルフポートレイトで自分をさらす/他人になる

須藤 私が最初にセルフポートレイトを意識したのは高校1年のころ。澤田さんの写真集『ID400』に出合って、すごく衝撃を受けました。

澤田 街の証明写真機で、髪型やメイクを変えながら400人に変装して撮影した作品ですね。

須藤 一人一人が面白く、夢中で見て澤田さんに憧れました。

澤田 私が初めてセルフポートレイトを撮ったのは大学の課題でした。EOS Kissを使ったのですが、撮ってみたら「これだ!」という直感があったんです。自分の表現に出合ったというか。それで、今日までずっと撮り続けています。

  • SELF/OTHERS

    ©Tomoko Sawada, Courtesy of MEM, Tokyo

  • SELF/OTHERS

    ©Tomoko Sawada, Courtesy of MEM, Tokyo

須藤 私はコミュニケーションが苦手で、撮影のために誰かに声を掛けると気疲れしてしまうんです。だったら自分が変身して被写体になれば気を使わなくて済むと思ったのがきっかけです。

澤田 セルフポートレイトの作家はちょっと特別視されるんですよね。写真を撮るという行為自体は花や森、海などの風景を撮るのと変わらないのに、セルフポートレイトを撮っているというだけで表現の手法として一括りにされる。

須藤 はい。でも自分を撮るといっても、表現したいものはみんな違いますよね。「SELF/OTHERS」という今回のテーマでいうと、私は物心ついたときから他人になりたい、何かになりたいという願望が強くあって。セルフポートレイトを撮るときメイクし、セッティングしていく過程で自分でなくなっていく、他人になっていく感覚がすごくある。

SELF/OTHERS

©Ayano Sudo, Courtesy of MEM, Tokyo

澤田 私の場合は反対に、どんなに変装しても私は私。他人になりたいわけでもない。そこが須藤さんとの大きな違いですね。私の作品は見る人の心が鏡みたいに写るようで、フェミニズムの人が見たらフェミニズムの作品、コンプレックスのある人が見るとコンプレックスを表現した作品になる。でも、私はいろんな自分になりたいわけじゃないし、自分が好きで撮っている。同じ手法でも考え方が全く違って面白いですよね。

二人の写真展のテーマ「機械の生活」「BLOOM」

須藤 今回のテーマは“VITA MACHINICALIS”。日本語では「機械の生活」ですが、この言葉をテーマに、登場人物をリアルな人間を目指すアンドロイドに設定しました。私以外にモデルの友人も登場しますが、彼女たちにはアンドロイドを演じてもらいつつ、あえて毛穴やシミは消さずにリアルに再現しました。動きや表情は機械的、でも表面にはしわや毛穴がある。それを見ているうちに、リアルとフェイクの境界が揺らいでくる感覚が生まれるんです。

SELF/OTHERS

©Ayano Sudo, Courtesy of MEM, Tokyo

澤田 「事実」は写るけど、「真実」は写らないみたいな。

須藤 はい。顔にシワがあるから人間?いや、でもアンドロイド?見ていると段々分からなくなってくる。「不気味の谷」の感覚ではないですが――。

澤田 リアルすぎると突然、気持ち悪さを感じる心理ですよね。

須藤 今回も顔を変形したり、目を大きくしたりしたのですが、でも残すところは残して「加工はしていませんよ」みたいな。その「あわい」を表現しています。澤田さんの展示作品は何ですか?

澤田 『etRouge』という美容情報誌があって、そこで連載している新シリーズ「BLOOM」と、学生のときにEOS Kissで撮っていた「Early Days」というモノクロのシリーズを混ぜて展示します。

須藤 「BLOOM」は、黒バックのシリーズですね。

澤田 はい。私はあまり意図してメッセージ性のある作品はつくらないのですが、作家として活動を始めたころ、同世代の女の子が展覧会に来て泣いたり、ありがとうと言ってもらえることが続いて。その人たちは変な顔だったり、面白い顔をしている私の作品を見て、「どんな顔をしてもいいんだと癒されました」と言うんですね。

須藤 自分の顔にコンプレックスがある人たちなんですか?

澤田 おそらくそうなんだと思いますが、私から見たら全然普通。顔に対するコンプレックスは主観的な問題で、メイクするだけで顔は簡単に変えられる。もっときれいになって自信をつけて、自分をもっと楽しんだらいいと思う。BLOOMの原義は最盛期の花ですが、「幸福」「輝く」といった前向きな意味も含まれていて、そういう願いを込めてつくったのが今回の作品です。だから、須藤さんの表現とは全然違うものですね。

須藤 はい、「SELF/OTHERS」というテーマの別々の作品です。そんな異なる二つの表現で一つの空間をつくる。それが今回のコンセプトです。

澤田 知子・須藤 絢乃「SELF/OTHERS」

澤田 知子・須藤 絢乃「SELF/OTHERS」

2018.10.16 - 2018.11.22

展示情報

澤田 知子

澤田 知子 (さわだ ともこ)

1977年 兵庫県神戸市出身
2000年 写真新世紀[第21回公募]優秀賞(横尾 忠則 選)、「写真新世紀2000展」特別賞受賞
2004年 兵庫県芸術奨励賞受賞 木村伊兵衛写真賞受賞
The Twentieth Annual ICP Infinity Award for Young Photographer 2008年 第24回東川賞新人作家賞

須藤 絢乃

須藤 絢乃 (すどう あやの)

1986年 大阪府出身
2009年 パリ、エコール・デ・ボザールに交換留学
2011年 京都市立芸術大学大学院卒業
MIO 写真奨励賞審査員特別賞受賞 美術作家、フォトグラファーとして国内外で活動
2014年 写真新世紀[第37回公募]優秀賞(椹木 野衣 選)、「写真新世紀東京展2014」グランプリ

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2018年11月号に掲載されたものです。

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