作家インタビュー

GOTO AKI

GOTO AKI

第130回展「terra」

terra

EOS 5D MarkIV・EF100-400mmF4.5-5.6LISIIUSM・F8・1/100秒・ISO1600

terra

日本の風景をモチーフに、地球の表情を描いてきた写真家、GOTO AKI。
今回は太古から続く根源的な美をとらえた写真展『terra』から、その一部を紹介する。

地球という惑星の大きな時の流れの中で日本を観る

人間の時間的な尺度から離れ、太古から続く地球の時間の中で日本の風景をとらえたらどう見えるだろう。そうした思いを胸に撮り続けてきた作品をまとめたのが今回の写真展『terra』です。ラテン語で地球という意味ですが、以前、発表した「LAND ESCAPES」シリーズの発展型として撮り続けてきました。日本がモチーフの風景写真というとイメージが固定化されがちですが、地球の表情を撮ろうとするとその地平はどんどん広がります。

私は風景が動物や人間と同じような生きものであり、常に変化している動体と考えています。「ここは来たことがある」「この場所は撮った」と考えるとただ風景を消費するだけで終わってしまいますが、地球を動的にとらえれば、その表情は光、色、音、匂い、風によって刻々と変化します。それに、今この瞬間でも、日本の緯度では時速約1360kmで自転していて、1秒、また1秒と経つごとに表情を変えていく。そうした地球規模で考えたときの「動的」な要素を、写真へ変換したときに盛り込み、見る人も何かしらの動きを感じてもらえるよう意識しています。

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    EOS 5D Mark IV・EF11-24mm F4L USM・F20・1/400秒・ISO800

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    EOS 5D Mark IV・EF16-35mm F4L IS USM・F11・1/160秒・ISO400

同時にそれは、写真にだけ与えられた表現でもあります。例えば、空中に小さな水の粒が飛び散っている写真1の一枚は、肉眼では見ることができない、写真にしたことで現われた地球の一瞬の表情です。高速シャッターと半逆光の光を生かし、岩に波が砕け散る瞬間をとらえたものですが、大きな 粒は光を通さず黒い影になり、小さな粒は光で輝き、望遠レンズで宇宙を見ているような感覚になったのを覚えています。

地球があって、太陽があって、月があって、潮の満ち引きがある。太陽の光で大気が温まると寒暖差が生まれ、循環が始まる。これらの活動が複合的に混じり合い、地球という惑星の美しい風景をつくる。眼前に広がる三次元の世界を、カメラという装置を使って、二次元の写真へいかに面白く置き換えるか。それが写真家の重要な仕事だと思っています。

とはいっても、私のモチーフとなる撮影地は決して特別な場所ではありません。普通の海水浴場、気軽に行ける登山道、その周辺にある渓谷、駐車場が完備している観光地など、誰でも訪問できるような場所が大半です。観光地を「光」を「観」るのに適した「地」ととらえれば、目に見えない風や時間に思いを馳せ、地球の光を観察するのに適した場所であると私は考えています。

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写真1
EOS 5D MarkIV・EF100-400mmF4.5-5.6LISIIUSM・F20・1/4000秒・ISO400

写真を組んでいくには解体と再構成が必要

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    写真2
    EOS 5D Mark IV・EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM・F5.6・1/1600秒・ISO400

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    EOS 5D Mark IV・EF24-70mm F4L IS USM・F8・1/50秒・ISO800

写真は撮るときとパソコンで見るときと、2回セレクトがあります。特に2回目のとき、いかに客観的になれるかが大事です。今回、写真展・写真集の構成を進めるにあたり、2017年9月、まだ撮影が続く中、編集者とデザイナーに写真集制作のチームの一員に加わってもらいました。ただきれいな風景やデザインで作品を構成したくない。撮影時の衝動が封じ込められたような、心を震わせる作品を撮りたい。今までの自分の世界を少しでも拡張したい。そんな強い思いで、定期的に集まって意見交換をしながら撮り続けました。

2018年の8月、写真でレイアウトを組み、私と編集者、デザイナーで検討し、解体をして、また一人でプリントアウトして再構成。ページを開くたびに見る人をいい意味で裏切っていくような写真集を目指して何度もこの作業を繰り返し、印刷スケジュールのギリギリまで粘って仕上げました。

一方、写真展は、撮影現場の空気をリアルに知っているのは写真家しかいないので、他者の目を入れず自分だけで構成しています。気持ちのいい作品を並べて「ああ、きれいな写真がたくさんあった」と思ってもらうことも大事ですが、それよりも僕は、会場に来た人が「これは一体何だ」「こんな写真見たことない」と驚くような作品、見る人の視覚に爪痕を残す写真を展示したいと思っています。

写真2の作品は雪解けの景色の一部を切り撮ったものですが、掲載した作品のサイズと同じくらいのすごく小さな世界です。冬の間、凍っていた池の表面が春の暖気で溶け、割れた隙間を覗いたら銀河系のような世界が広がっていました。雪解けの風景をただ氷の世界と見るのではなく、新陳代謝を続ける生きものとしてとらえると、目の前の現象がイメージとして膨らみスケール感を超越して私の目を魅了します。そうした思いで写し撮った一点一点の作品は、撮影時に感じた衝撃を押し広げるものであってほしい。見る人の心を通過するときに、また別のイメージとして立ち上がるものであってほしい。そんな無形の広がりが僕は写真の力だと思っています。

GOTO AKI「terra」

GOTO AKI「terra」

2019.1.19 - 2019.3.4

展示情報

GOTO AKI

GOTO AKI (ごとう あき)

1972年川崎市生まれ。1993年上智大学経済学部経営学科卒業。1999年東京綜合写真専門学校第二芸術学科卒業。武蔵野美術大学造形学部映像学科非常勤講師。1993年の世界一周の旅から現在まで56カ国を巡る。写真集に「LAND ESCAPES」(traviaggio publishing 2012年)、「LAND ESCAPES - FACE-」(同 2015年)、「terra」(赤々舎 2019年)がある。おもな個展に「LAND×FACE」(キヤノンギャラリー 2015年)などがある。2015年版キヤノンカレンダー作家。2018年「日経ナショナルジオグラフィック」誌にてキヤノン連載広告「テラ〔地球〕の声」を撮影。現在は日本の風景をモチーフに地球的な時の堆積と光をテーマとした創作活動を続ける。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2019年2月号に掲載されたものです。

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