作家インタビュー

川島 小鳥

川島 小鳥

Kotori Kawashima

第134回展「まだなまえがないものがすき」

まだなまえがないものがすき

まだなまえがないものがすき

写真集『未来ちゃん』を始め、ポートレート写真集を数多く刊行してきた写真家、川島小鳥。今回の写真展では、親交の深い詩人、谷川俊太郎氏の一節をタイトルに選び、会場には谷川氏の詩をパネルにプリントして展示する新しい試みに挑んでいる。今回は、その写真展の中から一部の作品を紹介する。

写真は気持ちの表現 僕にとって詩に近い

最近、ふと、撮りためた写真を見直してみたくなったんです。それは撮影に向かう途中だとか、日常の中で撮ったもので、 20年前から最近のものまで。それらを見直していく中で気づいたことがあります。ありふれた日常の風景を撮った写真には、暗く、寂しいものが多く、なぜ撮ったのか自分でもわからないものがたくさんあるということ。それはきっと、心が動いて思わず撮ってしまった、理由のない写真たちなんだと。

僕はそんな一瞬の情景や心の動きを捉えることができる写真は、詩に近い表現だと思っていて。だから今回、『おやすみ神たち』でも共著した谷川俊太郎さんの詩を一緒に展示することにしたんです。でも、僕の写真を谷川さんの詩の挿絵のようにするつもりも、写真の説明をしてもらうつもりもありません。詩と写真がたまたま並んでいて、会場に来た人が偶然、それを見て似ているところを軸として、違うところを楽しむ。自分の内面と向き合うような気持ちになれる。そんな写真展になったらいいなと思っています。

まだなまえがないものがすき

僕は普段、考え込む癖があるので、写真を撮るときは頭で考えないようにしています。作品を撮ろうと被写体を探していくのではなく、撮りたいものがあったからシャッターを切る感じが一番いい。撮ることを意識しないで撮った写真は、なぜ撮ったかよくわからないものもありますが、写っちゃった感があって、そこに写真の面白さや、瞬間の永遠性が生まれると感じているんです。

持ち帰ってほしいのは名前のつけられない感情

まだなまえがないものがすき

写真を始めた頃は、展示は苦手で写真集の方が好きでした。けれど、何回も展示を経験するうちに、会場に行かなければ見られないことや、終わったら跡形もなく消えてしまう写真展の魅力を理解するようになって、会場を迷路のようにしてみたり、何かをぶら下げてみたり、凝った仕掛けをすることが多くなりました。

でも、今回はとてもシンプル。出力した写真を並べているだけです。写真展に来た人たちが真っすぐ詩と写真に向き合い、その結果、自分自身の中で変化というか、いろんなことを感じてもらえたらいいなと思います。多分、それは嬉しいとか、悲しいとか、自分ではわかっているけれど、人にうまく伝えられない感情。でも、その名前の付けられない感情を抱えて帰り道を歩いていく。日常生活から一瞬離れ、いろんなことを感じて、時間を過ごしてもらえる場所になれば、と思っています。

まだなまえがないものがすき

今は、SNSとかインターネットが発達していて、よかったと思うものがあっても、すぐ忘れられてしまう時代です。けれど、僕が子供の頃、映画館で映画を観たときには、観る前と後で自分の住む世界が変わったと錯覚するようなことがありました。僕はこの写真展に来た方々があの感覚に近いことを体験していただけたらいいなと思います。

想像力を働かせたり、妄想したりする力は、これからますます大事だと直感的に思っています。すぐ決めないとか、よくわからないとか、モヤモヤするとか、そういうものをこれからも大事にしていきたい。そして、理性で振り分けられないもの、曖昧なものをこれからも撮っていきたいと思っています。

川島 小鳥「まだなまえがないものがすき」

川島 小鳥「まだなまえがないものがすき」

2019.7.20 - 2019.9.9

展示情報

川島 小鳥

川島 小鳥(かわしま ことり)

早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、2007年に『BABY BABY』を発表、11年に『未来ちゃん』で第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞。15年、『明星』で第40回木村伊兵衛写真賞を受賞。その他の作品に『道』、画家、小橋陽介氏との共著『飛びます』、詩人、谷川俊太郎氏との共著『おやすみ神たち』など。

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2019年8月号に掲載されたものです。

[ 著作権について ]
当写真展関連ページに掲載されている写真の著作権は作者に帰属します。これらのコンテンツについて、権利者の許可なく複製、転用などする事は法律で禁止されています。
写真展の情報・作家メッセージなどは、開催当時の内容を記載しております。予めご了承ください。

page top

© Canon Marketing Japan Inc.