作家インタビュー

師岡 清高

師岡 清高

Kiyotaka Morooka

第138回展「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

写真1

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

必然と偶然の狭間、多様な出合いを作品に昇華してきた写真家、師岡清高。今回は、パリ市内を新たに撮り下ろした作品の中から、その一部を紹介する。

儚い出来事や出合いに人生の一片を垣間見る

パリは学生時代に初めて訪れ、以来、毎年のように取材してきました。今回の写真展は「刻の表出」というテーマのもとに新たに撮影した作品で構成しています。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

私は時を経たものや、人が関わったものが大好きです。時の流れの中で姿を刻々と変え、誰かが気づかなければ、そのまま終わってしまうもの、傷んで朽ちていく様に愛着を感じます。どんなものにも始まりと終わりがあり、物事はその中で動く。私もそうだし、その対象も同じ。常にそのまま存在しているわけではなく、常に変化している。それが私との出合いによってどういう形になるか。私の過ごしてきた時間と被写体となる物体が経てきた時間。それが偶然、交錯したとき、そこに写真のきらめきのようなものが生まれます。それは私が気づくことで生まれた時の形。うがった言い方をすれば写真とはそういうものではないかと思っています。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

パリでは市内の至るところにポスターが貼ってあり、新作を無造作に貼り重ねていく場所があります。写真1の作品は新しいポスターが破れ、古いポスターが現れていたところを撮った一枚。新旧のポスターが重なる様子に、時を超えて存在する結びつきを感じてシャッターを切りました。
私は街で写真を撮るとき、時との出合いというか、できるだけ今しかない事象を撮るようにしています。過ぎていく時間の間、その狭間にある時の形を見つめていると、儚い出来事にも人生の一片を垣間見ることがあるのです。私の写真は決して社会性がある作品ではありませんが、今という瞬間を撮るという意味でドキュメント。私の存在、時の存在を明らかにすること、そしてその時をもう一度共有したいというのが私の写真の中心になっています。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

常に好奇心を溢れさせ対象を見直すことが大事

写真家はその時、その場にいること、そこで何に出合ったかが大事です。常に好奇心を溢れさせ、ここではないどこかに眼差しを向け、自分の心の中に強く触れた事象をとらえていく。それは、まさに一期一会。現場で画になる事象を見つけた喜びに、ただ流されることなく、対象をきちんと見直し、その出合いをどう育てていくか。解釈をどう進めていくか。見つめ直しながら自分だけの風景を作っていく。そのことを意識し、工夫し、心がけていくことが大切だと思います。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

写真展は出来事を疑似体験する場。撮影した時を多くの人と共有できるのが大きな魅力です。一点、一点の写真には撮影地の膨大な情報がひそんでいます。鑑賞する人が会場で写真を見て、どう感じるか。何を読み取るのか。そこには多様な展開がありますが、私は写真を読んでもらうことを望みます。見る自由、読む自由は鑑賞する人の方にあって、強制することはできません。でも、だからこそ私の方からどういう目的で撮っていたのか伝えたいし、明らかにしていきたい。画の中に入ってきてくれるためにトーン、明暗を誇張するなど、読んでもらうための仕掛けを写真の中に幾つか入れています。私の写真と向き合いながら新しい〝刻〟に出合っていただけたら幸いです。

「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。
師岡 清高 「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

師岡 清高 「刻の表出」人生においてどれほどの出会いがあるのだろうか。

2020.2.13 - 2020.7.25 ※2.29 - 6.14 臨時休館

展示情報

師岡 清高

師岡 清高(もろおか きよたか)

1948年、大阪府生まれ。
大阪芸術大学美術学科写真専攻卒業。専任講師を経て同大学芸術学部写真学科教授となり、2019年3月退職。
天野竜一氏、岩宮武二氏に師事。
日本のみならず、パリやロンドン、アムステルダムなど、ヨーロッパの都市を撮影。「閉ざされた記憶」「刻の表出」「うつろう時」などをテーマに、自らの心象風景を写真で表現する。
日本写真芸術学会会員、日本写真作家協会顧問。

●主な写真展
1983年 『印象』 -lmpression- キヤノン・サロン
1986年 『Under My lmpression in Europe』 コダック ナガセ・フォトサロン
1990年 『閉ざされた記憶』-Closed Memory- テクラ・ギャラリー
1993年 『閉ざされた記憶 Ⅲ』 キヤノン・サロン
1998年 『閉ざされた記憶 V』 Dong-A Gallery韓国(大邸)
1999年 『閉ざされた記憶 VI』 Photo Gallery 051韓国(釜山)
2004年 『一瞬の表出』 OBS Gallery韓国(光州)
2005年 『一瞬の表出』 都市生活工房ギャラリー
2012年 『This word has various meanings』 GALLERY LUX韓国 ソウル
2012年 『This word has various meanings』 神戸 堀川ギャラリー
2013年 『This word has various meanings』 大阪 WAギャラリー
2016年 『刻が眠る街 光の庭より』 キヤノンギャラリー

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2020年3月号に掲載されたものです。

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