作家インタビュー

古見きゅう

古見 きゅう

Kyu Furumi

第139回展「JAPAN’S SEA」

「JAPAN’S SEA」

EOS 5D Mark IV・EF17-40mm F4L USM・F6.3・1/400秒・ISO400

「JAPAN’S SEA」

亜寒帯から亜熱帯まで幅広い生物相をカバーする日本の海を20年以上撮り続けてきた写真家、古見きゅう。
サンゴ礁があり、流氷も流れ来る、多様な日本の海の表情と、生きものたちの姿をとらえた作品の中から、その一部を紹介する。

サンゴ礁があり、流氷も来る 日本の海は途方もなく面白い

本州最南端の和歌山県串本町。昔、ダイビングガイドをしながら写真を撮っていたその町は黒潮が接岸するため亜熱帯と温帯の境目のようなところで、潮流と地形で生きものの生態域は変化することを学びました。

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS Kiss・EF15mm F2.8フィッシュアイUSM・F11・1/100秒・RVP

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8 マクロ USM・F10・1/100秒・ISO200

その後、東京に帰ってきてフリーランスで写真を撮り始め、沖縄、伊豆、北海道の海の違いを知ることができました。さらに海外に行くようになってから、日本の海の豊かさや多様性をますます感じるようになりました。

南北およそ、3000㎞に渡る日本列島。南端、沖縄八重山諸島には「石西礁湖」と呼ばれる大きなサンゴ礁が広がり、夏の水温は30℃近くになります。一方、北海道は、冬になるとロシアのアムール川を起源に発生した流氷がたどり着き、海の水温は氷点下。海水温度の差が30℃もある国は、おそらく世界中探してもありません。多種多様な生きものが育ち、地域ごとにさまざまな海産物が獲れる日本の海。その豊かさは黒潮によるものですが、そのルーツはアメリカ大陸から赤道を西に向かって流れる北赤道海流で、フィリピン沖あたりから北上して黒潮につながって日本にたどり着く。黒潮の源を知るためには、フィリピンの海での撮影が必要でした。

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS R・EF8-15mm F4LフィッシュアイUSM・F8・1/200秒・ISO200

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS 5D Mark III・EF100mm F2.8L マクロ IS USM・F7.1・1/125秒・ISO800

また、黒潮と同様に流氷の生まれる場所をこの目で見たくて、今年の冬、極寒のロシアまで行ってきました。モンゴルから中国、ロシアを抜けオホーツク海に流れ込むアムール川の河口は、マイナス30℃。凍結した川の真ん中に立ってみたくてスノーモービルを走らせたのですが、顔が凍傷になる危険さえ感じる厳寒で、その感覚は今でもはっきり覚えています。世界に類のない豊かな日本の海も、この20年で大きく変わりました。和歌山県串本の沿岸には昔、背の高い海藻が森のように生えていたのですが、その姿がすっかり消えてしまい、沖縄でしか見られなかった種類のサンゴが本州にも増えてきました。サンゴだけでなく、沖縄でしか見られなかった魚、グルクンが千葉県でも水揚げされるようになり、地球の温暖化をひしひしと感じています。

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS R・EF8-15mm F4LフィッシュアイUSM・F8・1/160秒・ISO400

  • 「JAPAN’S SEA」

    EOS 5D Mark IV・
    EF8-15mm F4LフィッシュアイUSM・F7.1・1/200秒・ISO200

相手は野生の生きもの 諦めずにひたすら待つ

野生の生きものは逃げるのが基本です。近づいたら逃げる。魚たちを驚かせないように、どう付き合うか。それが大きな課題です。魚の美しさ、色彩、形を撮るだけではなく、いい顔をしている瞬間を撮りたい。そのためには、まずお近づきになることが大事。お友だちから始める感じで、ゆっくり近づいていく。その過程を省略すると、いい顔は撮れません。

昔はきれいに撮ることに喜びを感じていましたが、最近は目の前で起きていることをそのまま受け入れて撮ればいいと思うようになりました。ガツガツ焦らず、ひたすら待つ。ワンチャンスをものにできる集中力を保ち続ける。冷たい海の中で、6時間待っても撮れないときもあります。むしろうまくいかない方が断然多いので、ひたすら待つ。ただし、絶対に諦めない。ギリギリまで粘って、撮れなくても体制を立て直して再トライ。最善の方法で臨んで、あとは生きもの次第。20年かけて身につけたのが、この撮影スタイルです。

「JAPAN’S SEA」

EOS R・EF8-15mm F4LフィッシュアイUSM・F9・1/160秒・ISO400

古見 きゅう 「JAPAN’S SEA」

古見 きゅう 「JAPAN’S SEA」

2020.7.29 - 2020.9.16

展示情報

古見 きゅう

古見 きゅう(ふるみ きゅう)

1978年生 東京都出身
本州最南端の和歌山県串本町にて、ダイビングガイドとして活動したのち写真家として独立。現在は東京を拠点に国内外の海を飛び回り、独特な視点から海の美しい風景やユニークな生き物、海の環境問題なども積極的に撮影取材し、新聞、週刊誌、科学誌など様々な媒体で作品や記事を発表している。著書に写真絵本「WAO!」(小学館)、「THE SEVEN SEAS」(パイインターナショナル)、「TRUK LAGOON」(講談社)など多数。2016年撮影プロダクションAnd Nine株式会社を設立。近年はEOSカメラでの動画作品制作も精力的に行い、企業のPVやテレビ番組などへの映像提供も多数手がける。

2005年
「南紀串本海の生き物ウォッチングガイド」刊行(共著)
2009年
MBS「情熱大陸」出演
2010年
写真集「WA!」刊行
2011年
写真展「WA!」(串本海中公園マリンパビリオン)
写真展「GALAPAGOS」(キヤノンギャラリー銀座、福岡、梅田)
2012年
写真展「WA!」(サンシャイン水族館)
写真展「WA!」(Japan Creative Center/Singapore)
2013年
写真絵本「ちきゅうすいぞくかん」刊行(学研教育みらい)
BS朝日「いま世界は」出演
2015年
写真集「WAO!」刊行(小学館)
写真集「THE SEVEN SEAS」刊行(パイインターナショナル)
写真集「TRUK LAGOON閉じ込められた記憶」刊行(講談社)
写真展「海の旅人ワオの物語」(コニカミノルタプラザ)
写真展「TRUK LAGOON閉じ込められた記憶」(キヤノンギャラリー銀座、札幌、梅田)
TBS「Nスタ」出演
日経ナショナルジオグラフィック写真賞2014優秀賞 受賞
2016年
写真展「海の旅人ワオの物語」(串本海中公園マリンパビリオン)
2017年
写真展「海の旅人ワオと巡る7つの海」(渋谷東急本店)
日経ナショナルジオグラフィック写真賞2016最優秀賞 受賞
2018年
写真展Creative space HAYASHI

[ 掲載記事について ]
こちらの記事はキヤノンフォトサークル月刊会報誌「CANON PHOTO CIRCLE」2020年5月号に掲載されたものです。

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