蜷川 実花「CANON PHOTO CIRCLE」2019年7月号 『GO Journal』 スペシャルインタビュー

蜷川 実花「CANON PHOTO CIRCLE」2019年7月号 『GO Journal』 スペシャルインタビュー

インタビュー:2019.7 Update

蜷川 実花「CANON PHOTO CIRCLE」2019年7月号 『GO Journal』 スペシャルインタビュー

キヤノンは、2020年以降のインクルーシブ社会の発展に向けて、『GOJournal』1号より制作に協力しています。写真家、蜷川実花さんが表紙撮影に選んだカメラは「EOS 5D Mark IV」。普段のお仕事でも愛用いただいているカメラの話から、『GOJournal』発行の経緯に至るまで、さまざまなエピソードを語っていただきました。

スマホは機械、 一眼レフカメラは肉体の一部

ー普段の生活のなかで、一眼レフカメラとスマホのカメラをどのように使い分けていますか。

私の中で、スマホと一眼レフって全く別物なんですよね。それは私が写真家だからかもしれないですが、撮影するその瞬間、一眼レフだとファインダーを覗きますよね。ファインダーを覗くと自分の視界が全てカメラの中にある。一眼レフはレンズを通して世界を見ることになるんですけど、スマホは体から離れた画面の中を見ますよね。このスマホの画面は、世界の中をフレームで切り取る感じで、距離感が全く違うんです。
一眼レフって肉体と一体化するじゃないですか。スマホでももちろん写真を撮るけど、私はスマホで撮るときに感情が入り込むことはないです。スマホは機械、一眼レフカメラは肉体の一部という感覚です。

ーキヤノンのカメラを愛用いただいている理由とは。

いろんなカメラ使いましたけど、最近改めてキヤノンのカメラの安心感はすごいなって思って。ものすごく平均点が高いんです、これリップサービスじゃなくて。本当に暗いところでも綺麗に写るし、スポーツ写真とかもそうで、ピントが合うのが速い。歴然とした差があります。天気が良くて、光量も足りていればそんなに差が出ないこともあるかもしれませんが、ここを越えたらキヤノンでしか撮れない、越えられないっていう領域があるんです。だから、ちょっと重いけどしょうがないかなって(笑)、この子を普段から持ち歩くようにしています。カメラの中でもキヤノンに対する信頼感って絶対的なものだし、キヤノンのカメラはストレスがないです。
『GO Journal』の撮影にも使いました。

ある種の違和感で手にとってもらうきっかけを

ー『GO Journal』を制作することになったきっかけを教えてください。

日本財団パラリンピックサポートセンターの方からパラリンピックアスリートの写真を撮ってほしいと依頼を受けました。当初は、撮った写真をパラサポセンターで展示するといった構想でしたが、それだと、もともとパラリンピックスポーツに興味がある人以外に届きにくい。どうしたらより多くの方に見てもらえるかということを考えたときに、今までにやっていない角度であったり、スタイリッシュなファッションページみたいなのものはどうかなって思ったんです。最初からフリーマガジンを作ろうと思っていたわけではないんです。

ー1号完成までにどのような制作過程があったのでしょうか。

パラリンピックスポーツとどう向き合うのか、例えばアートのことをいれるのか、スポーツだけに特化した方がいいのか、障がいを持つアスリートとそうでないアスリートを分けること自体ナンセンスなんじゃないかとか......いろいろな考え方があって、どれも正しくはあるんですが、やっぱりブレずに、まず手に取ってもらう、そして知ってもらうことに立ち返って、パラリンピックアスリートに特化しようということに決めました。表紙を飾ったリオ2016パラリンピックに出場し、陸上競技女子400メートル(T47)で銅メダルを獲得した辻沙絵選手(現重本沙絵選手)の欠損している右手についても、隠す必要もないし、出す必要もないんじゃないと、話し合いを重ねました。でも、欠損した右手は辻さんにとってアイデンティティーでもあり、この冊子が目を引くものになるためには、ある種の違和感があることも大切だと思い、このような表紙になりました。みんな本当に真剣に話し合って、熱意をもって制作しました。エッジが効いた最高のメンバーが集まってくれているんですけど、みんな割と手弁当でやっていて。それでもやりたい!と思ってくれる方たちが集まってくれたということが、この本の持つパワーになっているんじゃないかなと思います。

写真は、内面を写し出す

ー蜷川さんが、写真で読者に伝えたかったことは何ですか。

パラリンピックアスリートの方はみなさん、強くて美しいです。ここまでアスリートとして生きてきた強さみたいなものもあると思いますが、シンプルにかっこいいなって。特に辻さんはかなりファッショナブルで難しいお洋服を着てもらったのですが、表現力がすごかったし、吸収する速度がとても速くて驚きました。本当に服って難しいんですよ。内面がないと着られない服を自分のものにしていて、彼女の人間力や芯の強さを感じました。強さ、美しさ、可憐さ......そういったところを写真から感じとってもらえたらいいかなって思っていますね。

ー蜷川さんが写真を撮るときに大事にしていることは何ですか。

どんな方を撮っているときも常に気持ちの行き来みたいなものはなきゃダメだと思っています。実際、写真って思っていることが写るんですよね。綺麗だなって思ったら綺麗に写るし。腰が引けていたら、腰が引けた写真になってしまう。辻さんや山本さんをかっこよく撮れたのは、かっこよく撮ろうと気負ったわけではなく、辻さんも山本さんもかっこいいから。それは写真の素晴らしさというか、おもしろさですよね。普段タレントさんを撮影しているときも、ほとんど私喋らないんです。それは、言葉で「かっこいいですね」とか、のせるのが嘘っぽくて嫌だから。指示もほとんどしないんです。でもそれでも通じ合うものや、写りこむものは確実にある。常に相手に対して誠実でありたいと思っていて。心に嘘があると写っちゃうから。なので、『GO Journal』はそういった写真の一番大切なことが素直に出来る企画だなって思っています。

ー最後に、一眼レフカメラは難しいと思っている方にアドバイスはありますか。

好きなレンズを決めて、好きな絞り値(F値)を決めて、あとは露出補正するだけ、という撮り方が私はお勧めです。だって悩んじゃうもん。
悩んでいる間に面白いことって通り過ぎちゃうから。私は絞りを開放して撮影するのが好きなので、絞りを開けておいて、露出補正だけ+3かな?という感じで撮影します。それだけで大体のこと出来ちゃうんです。レンズは、ズームレンズだと画角に悩んじゃうから、この焦点距離でって決めてしまう。私は8年間ぐらいずっと28mmのレンズでしか撮ってない時期があって。その後35mm、50mmと使うようになり、ようやくここ2、3年でズームレンズも使うようになったところです(笑)。写真を教える学校でも、まずは単焦点のレンズから始まると思うんですけど。遠かったら自分が寄るっていうのは基本。引き画が多くなってしまうのは腰がひけているから。あと2歩前に出るだけで写真は変わります。使いこなせるまでどんどん使ってほしいですね。

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