第53回キヤノンフォトコンテスト
自由部門

自由部門

ゴールド賞

『継承』
木村 正司(滋賀県)

受賞者の声

閑散期のみに開く窯 自然と引き継いだ親子の光景

栄えある受賞に驚き、大変喜んでおります。今後もオリジナルな作品を大切に撮り続けたいと思います。ありがとうございました。この『継承』はお茶の生家の作品で、閑散期のみに窯を開けます。父は、生木の選定と一週間の窯の番。息子さんは、窯入れと炭の窯出しを自然に引き継がれていました。茶畑も新緑に変わるころ、春の炭焼きも終え、秋を待ちます。今回、快く撮影させていただいた、大谷様親子には心より感謝申し上げます。

講評:高い技術で「継承」を表現 自由部門ゴールド賞

  • 大石
    自由部門ゴールド賞の「継承」は、作者がタイトルに込めた思いがうまく表現されていると感じました。おそらく親子だと思いますが、親から子へ、若い世代が炭焼きの技術を受け継いでいくといったテーマとしっかり向き合いながら、彼らの姿を撮影されたことが伝わってきます。技量も高く、ピントはしっかり合っていますし、フィルムのようなイメージの仕上がりも、作品の世界観を引き立てています。
  • 野口
    すごく上手な写真ですよね。一点一点の完成度がとても高く、写真の王道を進んでいるような、正しい写真のあり方という印象もあります。
  • GOTO
    確かにすべての写真からしっかりとした作者の技術力が伝わってきます。特に作業中の写真は、動きが感じられる瞬間が切り撮れていますね。
  • 米屋
    カメラ目線の写真があるものの、僕はあまり演出を加えていないように感じました。作業中にポーズをとってもらうのではなく、実際に炭焼きを行っている流れの中で、淡々と目にしたものを写し止める。そうしたドキュメンタリータッチが、この作品をより魅力的にしていると思います。
  • 大石
    ただ、一枚くらいは少し砕けるというか、抜けた写真があってもよかったかもしれません。ドキュメンタリー写真の難しいところですが、作者の思いが強すぎる感じがするんですよね。私もその難しさを常々感じているのでよく分かりますが、少し自分の思いを作品化することに一生懸命になりすぎてしまっている印象も受けました。
  • 野口
    おそらく作業工程を順番通りに並べているので、少し説明的な印象を受けてしまうのでしょう。説明的なカットではなく、画としてきれいな写真など、もう少し遊びの要素が入ってもよかったのかもしれませんね。
  • 中西
    この作品に限らず、それが組写真の難しさですよね。例えば、5つのチャンネルがあり、それぞれ違うものをうまく並べるとプラスに働き、作品の世界が大きく広がるのに、5つのうちひとつでもチャンネルがかぶってしまうと、作品全体の魅力も半減してしまう。
  • GOTO
    おそらく、もっと撮影されていると思うので、二人の関係性や背景が写った写真もあったのではないでしょうか。ですので、セレクトを変えれば、さらに先に行けると思いました。

シルバー賞

『巡り来る死』
高橋 貞勝(岩手県)
『凝視』
牛場 和美(三重県)

ブロンズ賞

『追憶』
稲井 建司(徳島県)
『ぶくぶくぶくぶく』
佐藤 実(東京都)
『光の色』
宮本 安紀子(香川県)

佳作

『噴水最高』
大熊 成則(香川県)
『想い出の宝箱』
吉田 紀代美(愛知県)
『空中パフォーマンス』
前田 正憲(熊本県)
『北端の里』
村上 忠司(千葉県)
『大地のキャンバス』
渡部 武三(山形県)