キヤノン:業務用デジタルビデオカメラ|Vision X | XF105導入事例:「メガマソ」

キヤノン Xシリーズ 導入事例

XF105:踊るビジュアル系バンド!? メガマソMV「すみれSeptember Love」の制作現場に潜入レポート

制作者(イメージ)

キュートなギタリストやポップでカラフルなメロディが魅力のビジュアル系ロックバンド「メガマソ」。メジャー通算2枚目のニューアルバム「「Loveless, more Loveless」」をリリースした。このアルバムで話題になっているのがIZAMを迎えたカバー曲「すみれ September Love」だ。初回限定盤には時代を超えて語り継がれるこの曲のミュージックビデオ(MV)が収録される。MVを手がけた制作プロダクションROBOTの杉浦戦氏、ディレクターの清水康彦氏、カメラマンの中野敬久氏、ビデオエンジニア(VE)の吉田新時氏の4人に集まっていただき、プランニングから制作工程、使用したビデオカメラについて語っていただいた。
(white-screen.jpより転載)

左から、VEの吉田新時氏、制作プロダクションROBOTの杉浦戦氏、ディレクターの清水康彦氏、カメラマンの中野敬久氏

踊るビジュアル系ロックバンド企画とは?

MVのディレクターを勤めたのは清水康彦氏。現在29歳ながら話題のMVを量産する注目のディレクターだ。2007年よりフリーランスとして活動し、最近では4人組ロックバンドRADWIMPSのシングル「DADA」や佐々木希のMV「噛むとフニャン feat.Astro」などのMVを手がけている。制作会社のプロデューサーはROBOTの杉浦戦氏。清水康彦監督とは昨年出会い、既にいくつかの作品を制作している。杉浦氏と清水監督の2人はMVのプランニングやハイライトについてこう語る。

メガマソ「すみれ September Love」(short ver.) dir: 清水康彦
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清水氏(イメージ)

モニタを確認しながらマイクで指示を出すディレクターの清水氏

Fumichan(田中文人氏)、TAIKI氏(イメージ)

コレオグラファーのFumichan(田中文人氏)(右)、TAIKI氏(左)

ダンスシーン(イメージ)

見どころはなんといっても迫力のダンスシーンだ 。中央:インザーギ(メガマソ)

杉浦:今回参加させていただいたきっかけは、別件でご一緒していた清水監督から、声を掛けられたのが始まりでした。プロジェクトの発端は、とても奇遇な繋がりからです。kazepro(風とバラッド)の下畑慎太郎さんがビジュアル系にダンスを盛り込んだ企画をやってみたいと振り付け師のFumichan(田中文人氏)に相談した際、そこに居合わせていた清水さんも参加することになったという経緯でした

企画を考える時間はとてもタイトで、別件のオフライン編集を一週間以上(ほぼ徹夜)で行っていた最中だったので、正直なかなか話が進みませんでした。そんな中、頼れる兄貴的存在であるkazeproの嶋さんも加わっていただき、全員で企画を考えていきました。

今回の楽曲「すみれ September Love」は、30年近く前の1982年に発売した一風堂さんが元祖。そこから15年後にSHAZNAさんがカバーし、さらにその曲を14年後の今にもう一度カバーする三世代企画というのが軸です。三世代目であるメガマソさんがやるにあたって、懐かしい曲の中に新しさを感じる演出といった企画を盛り込みたく、二代目のIZAMさんにも登場していただきました。また、ビジュアル系というジャンルを越えてダンスを盛り込みたいという企画の走り出しがあったので、ボーカルのインザーギさんにも頑張っていただきました。ビジュアル系のボーカルでここまで踊れる人はなかなか見たことがありません。そういう意味ではとても目新しいと思います。

清水:ボーカルのインザーギさんは昔ダンスの経験があり、「踊るビジュアル系バンド」と呼んでいいほどダンスも注目です。ものすごく頑張っていただいて現場でもスムーズに撮影ができました。

ビジュアル系でない色でビジュアル系を撮る

スタイリッシュな映像(イメージ)

清水監督がこだわったのは従来のビジュアル系にはないスタイリッシュな映像だ。そこでファッションフォトで活躍するカメラマンの中野敬久氏とタッグを組み、スタイリッシュな映像を目指した。中野氏はファッション雑誌から、国内外のアーティストのポートレート、CDジャケット、広告などの現場で幅広く活躍中。その中野氏の世界観を具体的に映像に落とし込んだのはVEの吉田新時氏だ。

清水氏(イメージ)

モニタを確認しながらマイクで指示を出すディレクターの清水氏

Fumichan(田中文人氏)、TAIKI氏(イメージ)

コレオグラファーのFumichan(田中文人氏)(右)、TAIKI氏(左)

清水:課題はビジュアル系バンドを映像で「ダンスっぽく見せていく」ということと「スタイリッシュに見せていく」ということでした。ビジュアル系のMVってちょっとトーンがジメッとしているというか、湿気が強いライティングというか、レンズの深度だったり暗部を使ったりと決まったフォーマットみたいなものがあります。そういう型にはまらず、もっとスタイリッシュなファッションだったり、ポートレートやライティングを実現した映像を目指しました。そこで、相談をしたのがカメラマンの中野さんです。普段から撮っているポートレートスチルのライティングがむちゃくちゃかっこいい。ムービーでも既に何度か一緒に仕事をしていたので信頼関係もありました。今回のMVは、中野さんを選んだ時点で映像のトーンの方向性が決まったようなものかもしれません。

――中野さんはスタイリッシュな絵作りをどのように実現しているのですか?

中野:細かいところはカラリストの方に任せているのですが、基本はハイとミッドとローを色ごとに全部数値で指示をしました。普段のスチルの作業ではPhotoshopやデジタルカメラの現像ソフトを使うのですが、基本同じ考え方でできることしかやりません。トーンカーブのいじり方を同じようにやっておけば、ムービーでもスチルと同じルックを実現できます。なので、編集室でも基本的に同じいじり方をしてもらっています。

吉田:今回スチルのカメラマンのノウハウで作業をするのはちょっと面白かったですね。スチルと映像は色空間が違います。スチルの色空間は「RGB」で、ビデオの色空間は「YPbPr」です。異なる色空間を放送コードを考慮しながら、もらった色温度の設定から現場の照明さんと打ち合わせをして照明のフィルターをブルーからシアンにしてもらったり、色温度を設定したりしました。フィルターをシアンにしてもらったのは、色温度を下げてブルーにしすぎると、ビデオの場合は印刷と異なり絶対的な出力が保証されてない為、マゼンダがどうしても肌に出やすいからです。

グリーンバック撮影にはXF105を採用

メインの白バックの人物撮影にはEOS 7Dを使用している。EOS 7Dを選んだ理由は被写界深度を浅くして目線を誘導したいからだ。さらに、一部のカットではグリーンバック撮影をした。白バックに対して、グリーンバック撮影のカットは全体の1/4ぐらい。グリーンバックのシーンは、最終的にはグラフィックを合成し仕上げている。グリーンバックの撮影では、カラーサンプリングに4:2:2方式を採用して、抜きの点で有利なXF105を選んだ。

収録風景(イメージ)

白バックの収録風景

完成スチル(イメージ)

EOS 7Dで撮影をした本編の完成スチル

グリーンバックの収録環境(イメージ)

グリーンバックの収録環境:セッティング中

完成スチル(イメージ)

グリーンを抜いてグラフィックを合成した本編の完成スチル

杉浦:全体の制作過程ですが、EOS 7DとXF105の撮影データをすべてProResに変換してオフラインを清水監督がFinal Cut Proで行っています。最終的には編集室でinfernoを使い、グリーン抜きやカラーコレクションなどを行って仕上げました。以前、カラーサンプリング 4:2:0のカメラで収録をしたところ、グリーン抜きだけで1日半かかったことがありますので、今回のMVではカラーサンプリングに4:2:2方式を採用して世代劣化の影響が少ないXF105を選び、予想通り作業時間を短縮できました。抜けなかった場合、編集室で1日で終わるものが2日かかってしまいます。今回の場合はグリーンも抜きやすいということもあって、1日に絞って行うことができました。

また、EOS 7DとXF105の色合わせについては、白バックとグリーンバックのカットの世界観が分かれているので特に合わせるように意識をして作業をすることはありませんでした。中野さんにカラーコレクションもしていただいたのですが、無理に合わせようと意識はしませんでした。2つの撮影素材の違いというと、感覚的な話になるのですが、XF105は収録された画が硬めの印象がありますが、グリーンバック合成のシーンはCGでエッジの効いた仕上げを目指していたので、 XF105の画と合っていると思っています。

ルックはカスタムピクチャー機能で設定

XF105はガンマ、ブラック、ブラックガンマ、ホワイトバランス、カラーコレクションなど、ガンマカーブやカラーマトリックスをカメラ内で細かく設定することが可能になるカスタムピクチャー機能を搭載している。吉田氏は、カスタムピクチャー機能を使用して微妙なルックを調節した。

吉田:色の設定にはカスタムピクチャーを使用しました。XF105は小型の業務用ビデオカメラの中でも多機能で、網羅しています。具体的な設定ですが、ガンマは寝かせて、ブラックを少し浮かせ、ブラックガンマは締め気味です。ニー(ハイ)は少し寝かせました。また、色を転ばすには、色温度を狙いから若干暖色に転ばせて、マトリックスで色を戻しています。細かく言うと、日本人の肌の色はY(イエロー)R(レッド)にわたって色を持っていて、モニターによって色温度が暖色にずれると(※1)R(レッド)M(マゼンダ)よりに見えてしまいます。また、色が広域にわたるとカラコレの際にも動かしにくくなってしまうため、肌の色をある程度まとめるといった狙いがあります。カラコレ後の最終的な画は結果的にマゼンダ方向ですが、それ以外の色が多くなればなるほどカラコレ時にも制御しなければいけないものが増えるという事です。仕上がりを確認してみると、いい方向に転ばせたと思います。あとグリーン抜きは当初こちらでやる予定でしたので、ワークフローも考慮し、カスタムピクチャーを使ってグリーンの部分を一発で抜けるようベタ気味になるように設定をしています。

※1一般的な民生液晶テレビは基準になるD9300よりも暖色になる

吉田:波形モニタが便利そうですね。ベクトルも表示することができます。さすがに簡易波形なので、スタジオ撮影当日は使いませんでしたが、ロケでパッと確認をするにはいいなと思いました。むしろ、ロケに波形モニタとして持っていきたいと思うぐらいです(笑)。

CFカードなら持ち合わせを集めて収録が可能

業務用ビデオカメラの記録メディアにはSxS PROやP2カードなどの専用のメモリーカード、汎用品のコンパクトフラッシュ(CF)などがある。XF105が採用しているのは汎用性が高いCFだ。今回の撮影では、杉浦氏が3枚、吉田氏が6枚、中野氏が4枚CFを持ち寄って撮影が進められた。スタッフの持ち寄りでこれだけの数が集められるのは、汎用性が高いCFならではだ。

杉浦:毎回制作部で心配になるのが記録メディアの準備です。例えば、EOS 7Dに5枚、CF以外のメディアを採用するカメラを使うならばそれに対応した5枚のメディアを用意しなければなりません。しかし、同じCFで共用できるならば合計7枚で済むことになります。そういう意味でもCF収録というのは非常にありがたいです。
また、CFはかなり身近で使われているカードというところもポイントですね。万が一、撮影中にカードが壊れてしまったとしても近所の家電量販店に行けば購入できます。専用のメモリーカードだったら業務用機器を販売しているプロショップに行かなければ購入できませんし、容量によって約5万円、10万円してしまうこともあります。気軽に購入はできません。

コンパクトで機材も共有

XF105(イメージ)

マットボックスを装着したXF105。EOS 7Dで使っているマットボックスやフォロフォーカスをそのまま併用できるように工夫している

XF105は業務用の中では本体のサイズが非常にコンパクト。にもかかわらずHD-SDI、TCやゲンロックを搭載しているのも特長だ。

マットボックス(イメージ)

マットボックスはアリ製のコンパクトマットボックスMB-18を使用。広角のPLレンズの大きいもの以外であれば装着可能

吉田:XF105のいいところは本体がコンパクトであるところです。現場では円滑に撮影を進めることが重要です。同じ 4:2:2で撮れるカメラとなると、通常は大柄なサイズになることが多いです。そうなると三脚もEOS7Dのものよりも大きなものを借りないといけなくなります。レンズ周りのマットボックスとかをEOSと共用できないとなると、また別途レンタルしなくてはいけない。
また、HD-SDIがついているのも便利です。だいたい現場で使うモニタはHD-SDI入力なのでそのまま対応が可能です。HDMIだとカメラとベースの距離にも制限がありますし、わずかな遅延が気になります。また、HD-SDIが装備されていないとBlackmagic Designから発売されているコンバーターなどが必要になります。そうするとシステムが大きくなりますし、追加購入に費用もかかります。もし、2台分のオプションを購入しようならば、それなりの費用も撮り回しも増えてしまう。そういう意味では、標準搭載されているのは嬉しいですね。あと、この価格帯の業務用カメラでTC出力がついているのは初めて見ました。ライブとかでも使えそうですね。

このサイズを活かした撮影に使いたい

最後に、今後XF105を使う機会があればどういった映像を作りたいか、どんな映像を撮りたいかを聞いてみた。

杉浦:予算にもよると思うのですが、すべてグリーンバック撮影の場合にカメラマンに提案できるカメラの候補になるのではないかと思います。あと、監督と恵比寿から代官山を回ってテスト撮影をしたのですが、軽さには驚きました。僕は昔ケニアへ取材に行ったことがあるのですが、その経験からしてこれほどのサイズや軽さがあるならばロードムービーやドキュメンタリーというところでも需要がかなり高いのではないかと思います。撮影時に発生する熱によって落ちる心配もない。ドキュメンタリーのようなその瞬間を落とすわけにはいかない現場にもXF105は向いているんじゃないかと思います。

吉田:ライブ収録で多数の設置カメラとして使う方法が面白そうです。本体が小さいので、設置場所でも優位な場面がありそうです。それによってだいぶ撮れる絵も変わってくるかもしれません。設置場所によっては、HD-SDIからの映像をベースで収録することも考えられます。また、昔、手のひらよりも小さい小型カメラをマイクスタンドにつけて撮影をしたことがありました。これは極端な例ですが、このサイズならば今まで設置できなかったところに付けられるという可能性も感じますね。

中野:同様にライブ感を重視した撮影、例えば手持ち撮影だったり、車の横から出して撮るといった用途が考えられそうです。

清水:僕はあんまりカメラを使う立場の人ではないのですが、いろんなところに持っていって気軽に4:2:2で収録できる。フットワーク+画質という点では、すごくいいカメラだなと感じました。

XF105は業務用カメラながら約1.3kgと軽量で、民生用ビデオカメラのような感覚で操作をすることが可能だ。それでいて、広角端では 30.4mm(35mmフィルム換算値)からの10倍ズームレンズを搭載し、4:2:2での記録やHD-SDIがついていながら低価格でこの仕様を実現している競合製品は存在しない。また、XF105は先に発売された“XF305の廉価版”とも言われているが、XF305よりコンパクトで記録方式も 4:2:2に対応する。むしろコンパクトさを重視するならばXF305以上に際立った存在といっていいほどであろう。

清水康彦 (しみず・やすひこ):

映像ディレクター。1981年生まれ。2002年映像プロダクションOMBにて CGアニメーションを駆使したミュージックビデオを多数演出。2007年独立。フリーランスとして活動を開始し、MV、TVCM、ファッション映像等、幅広く活躍する。斬新なアイデアと、エネルギッシュでインパクトのある映像表現を得意とする。MVではICONIQ、嵐、桑田佳祐、KREVA、斉藤和義、佐々木希、SPECIAL OTHERS、チャットモンチー、平子理沙、Michi、RADWIMPS等を、CMではadidas×GIANTS、DIESEL、PARCO、 P&G ヴィダルサスーン他を手掛ける。2011年もうすぐ30歳。

中野敬久(なかの・ひろひさ)/ANARCHIC AGENCY:

1993年渡英。「ロンドン・カレッジ・オブ・プリンティング」にて、写真、映像を学び、スタジオにて数々のアシスタントを経験した後、帰国。1999年、Glen Luchfordのアシスタントをきっかけに独立し、東京にてフォトグラファーとしてのキャリアをスタート。雑誌のファッションストーリーから、国内外のアーティストのポートレート、CDジャケット、広告など幅広く活動中。

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