レコーディングスタジオ「SUNSET SOUND」を背景に
今、ユニコーンのファンが楽しみにしているのが、4月27日に発売されたシングルの初回生産限定盤に収録される映像だ。メンバーのレコーディング風景に留まらず、打ち合わせや食事に至るまで相変わらずの密着具合で収録されている。
「ユニコーンとの最初の出会いは、1987年のデビュー時でした。その後、2009年1月1日にユニコーンは16年ぶりの再始動を発表しました。現場ではそれよりも前からレコーディングが水面下で行われていました。“5人が10何年ぶりに揃うので記録しておきたい”と連絡をもらったのがきっかけでした。
それらをアルバム「シャンブル」の初回生産限定盤特典として発売してみると、大変好評でした。やはり楽しそうな5人のメンバーの姿を映像で見ると“あっやっぱりユニコーンは変わっていないんだ”というのが伝わったようです。そして、今回の4月27日発売のシングル「デジタルスープ/ぶたぶた」の初回生産限定盤に付属するDVDにロサンゼルスのレコーディングの様子も収録することになりました。ユニコーンにおいて、撮れるものはすべて撮るようにしています。いつなんどき話が盛り上がるか、そして“あの一言がきっかけでこうなった”ということを映像として表現したいので、一言一言の撮り漏れがないように気を付けています。」
ロサンゼルスの撮影が決まると、大沢氏はまずカメラの吟味から始めた。MVの撮影ですでにEOSの動画撮影機能を使用したことがあり、EOSの画質の良さは体験済み。EOSも当初は候補であったが、今回のドキュメント撮影にさらに適したカメラはないかと探していた。ドキュメント映像の撮影は一人で収録することが多いので、ボディのサイズはできるだけ小型にしたい。そこで最終的に選んだのが画質は重視しつつボディの重量が1070gとコンパクトなキヤノン XF105だ。
「普段から常にカメラを持って撮りたいほうですし、ロス行きが重なったこと、従来使っていたカメラがSDだったことも導入のきっかけになりました。また、ドキュメント映像の収録は基本的に一人で行います。音の調整やテープチェンジなどもすべて一人で行い、三脚やレフ板も常備しながら収録します。そこで選んだのがキヤノンXF105です。決め手は小さくて軽いこと。カラーサンプリングに4:2:2方式を採用していること。4:2:2方式はロス行きの前にテスト撮影をして映像をポスプロで検証してもらったのですが、スタッフの評価が高かったです。そして、デザインがキュートなことです。デザインは常に手元に置いておきたいので、凄く重要視しています。また、記録/再生信号形式が24Pに対応していることも条件でした」
マニュアルリング切り替えスイッチは「フォーカス」「ズーム」「アイリス」の切り替え式。今回では「フォーカス」 に設定した
手ブレの少ない安定した映像を撮影できる「手ブレ補正機能」。3種類の補正モードのうち、カメラが静止時の手振れを補正する「スタンダードIS」を選択した
ズームの動作を滑らかにする「ソフトズームコントロール」の画面。3種類の減速が搭載されており、今回はスタートとストップ時に有効になる「Both」を設定した
ロサンゼルスのレコーディングの収録はXF105に決定し、他に外部マイク、CFカードは32GBが6枚、映像データのバックアップ用に1.5TBのハードディスクが2台、Macを1台を持ち込んだ。そして、基本となる設定は、XF105の色味は現地でもテストをした結果、スタジオや野外などいろいろなシチュエーションを撮るので、コントラストはソフトなものにしたかった。そこで「カスタムピクチャー」の「Gamma」は、コントラストがソフトな「Cine 2」を選んだ。解像度とフレームレートは1080/24Pだ。
XF105で現場を撮影してみて最初に気が付いたことはオート機能の利点だ。ホワイトバランスやアイリスをオートとマニュアルの相みつをとって使用している。また、XF105にはフェイスキャッチテクノロジーといった、民生機ではお馴染みのアシスト機能が搭載されている。これらの機能も常に活用して撮影が行われた。
「レコーディングの撮影はメンバー5人を同時に撮ることが多いです。その5人が“いつ”“どこで”“誰が”ひょんな一言がきっかけで盛り上がるかわからないので、カメラの電源は常に入れておかなければいけません。しかも、スタジオ内は暗い、ロビーは蛍光灯、中庭は晴天とシチュエーションによってホワイトバランスがまったく異なるので、設定は固定というわけにはいきません。かといって、マニュアルですべてやるのには時間がかかります。そこでまずオートで対応して、撮影中にマニュアルに切り替えて補正するという使い方をしました。XF105のマニュアルリングは“フォーカス”“ズーム”“絞り”の切替式なのですがフォーカスに設定しました。カスタムダイヤルは“アイリス”に設定しました」
「また、フェイスキャッチと呼ばれる顔認識機能も使用しました。従来の顔認識機能だとフレームから人がいなくなると、フォーカスがどこに合わせていいのかわからずボケてしまうことがありました。XF105はフレーム内に人がいるときは顔に合い、フレームから人がいなくなると自然に背景にフォーカスが合ってくれます。自分は専業のカメラマンではありません。プロとの違いはフォーカシングのスピードと感じています。顔認識はこうしたフォーカスをアシストしてくれるので、非常に助かります。
手ブレ補正も使用しました。やはりハンディにならざるをえないことが多いので“スタンダードIS”と呼ばれる一番自然な設定にしています。個人的にはハンディ感のある映像のほうが好きなのですが、今回は撮影の段階での使用目的が決まってなかったので、見易さを考慮して手ブレ補正機能を使いました」
XF105のレンズは光学10倍ズームで、ワイド30.4mmと広い画角を実現しているのが特長だ。より広角のおかげで、車内やミキシングルームといった狭いところでもワイドコンバーターなしで対応が可能だった。
「ロサンゼルスではメンバー5人が車で移動することもあり、車内ではカメラとメンバーの距離が近くなります。こういう場合、従来のカメラだともう少しワイドが欲しいと感じていたのですが、XF105だとワイド端は35mmフィルム換算で約30.4mmと広角なのでワイドコンバーターがなくてもストレスなく撮れました。
また、ズームスタート時の加速やズームストップ時の減速を緩やかにする“ソフトズームコントロール”も便利でした。ドキュメント映像の長時間撮影ではどうしてもズームのコントロールミスが発生してショックが出ることもあるので、それをカメラ側で設定しておくことで回避できるのはありがたいです」
ドキュメント撮影はライティングを設置できるわけではないので、カメラの感度も重視される。今回の撮影では暗めのスタジオのシーンが多く、ゲインを調整して撮影することが多かった。
「スタジオは常に12dBアップで撮っていてもそんなにも気になりませんでした。野外の昼間は晴天ですが夜になるとハロゲンライトのようなライトだけになります。かなり暗いので24dBまで上げて撮りましたが、雰囲気は良かったです。粒子は出ますけれども、いやな粒子ではありません」
大沢氏の室内にて。ファイルの取り込み作業中
現地でのレコーディング模様をユニコーンのオフィシャルウェブサイトでチラ見せする「O(オー)点観測」という企画も、1月15日から1月30日まで行われた(現在も視聴可能)。こういったネット配信にはファイルベースのカメラであれば対応が容易になる。
「当初、現地ではドキュメント映像のためだけにしか撮ろうと思っていなかったのですが、ロサンゼルスでメンバーのほうから、“現地の様子を少しずつ配信したら面白いのではないか”という提案で定点観測的な狙い、“O(オー)点観測”が決行されることになりました。手順はFinal Cut Proで配信するカットを切り出し、QuickTimeにしてデータを東京に送りました。毎日CFカード5~6枚に撮った中から、あらかじめ“このあたり”というのを録画時にメモをし、取り込んで切り出しました。毎日ワンアイテムUPするというのがコンセプトだったのでそれなりにプレッシャーがありましたが、XF105がファイルベースであったおかげでスムーズに行えました」
撮影後のワークフローはFinal Cut Proで素材を取り込んでオフライン編集を行い、Avid DSでオンライン編集後、HDCAMで納品した。