瀧口氏を悩ませたのがロケでの撮影だ。浅草の浅草寺の前でガチャピンやムックを歩かせたりすれば、たちまち人だかりができてしまう。なおかつ通行人はできるだけ画面に入らないほうがいい。そこで考えたのがガチャピンやムックを人力車に載せて撮影をする方法だ。しかし、カメラマンは人力車に合わせて走りながら撮影をしなければならなくなる。そこで村中氏が使用したのがXF105の手ブレ補正機能だ。XF105には状況に応じた3種類の手ブレ補正を搭載している。
「走りながら撮るとカメラはかなりゆれるので、歩行撮影の際の手ブレを補正してくれる“ダイナミックIS"を使いました。臨場感がありつつ、そんなにぶれていない映像が撮れたと思います。あと、このカメラは小さくて軽いことが利点です。距離を走っても疲れませんでした」(村中氏)
ステディーカムと手ブレ補正は似ているようで違うと瀧口氏は語る。
「業務用のカメラは防振装置がないので、普段はステディーカムを使うのが一般的ですが、今回はドキュメンタリーぽい形で撮りたかったので、走って撮る際の“自然なゆれ”は多少は残したいと考えました。手ブレ補正機能を使ったことで、手ブレが気にならない臨場感のある理想的な映像が撮れました」(瀧口氏)
レンズにも特長がある。XF105のズームレンズのワイド端は35mmフィルム換算時の焦点距離で30.4mmとワイドコンバーターがいらないほど広角を実現している。
「東京スカイツリーをあおって撮るなど、標準でこれだけワイド端があるのは便利でした。あとHDの16:9は横が広くて縦が狭くなりますので、本来のSDの時よりもワイドが欲しくなります。また、室内撮影ではガチャピンとムックの体が大きいので、ワイドがないと入りません(笑)。従来のカメラだったらワイドコンバーターをつけないと入りませんでしたが、ワイド端が広いので標準のままで対応できました。
またXF105は色温度を100K単位で設定ができるのは使いやすいですね。今までだと、ホワイトバランスを撮らなければいけないとか、細かくずらせるカメラはありませんでした。また、シャッタースピードをフィルムと同じ“開角度”で設定できるのにも驚きました。もともとフィルムでコマーシャルの撮影をやってきた人間にとってはとても使いやすいです」(村中氏)
村中氏がXF105を使って気に入ったところにデータ入力のインターフェースがある。細かいところだが色温度が細かく設定できたところや、シャッタースピードを開角度で設定できるところなどいくつもある。
撮影に使用したCFカードは32GBが2枚だった。ちなみに、32GBのCFカードに50Mbpsの記録モードを選択した場合の収録時間は80分だ。また、朝7時から12~13時間ほどのサイクルで使用したバッテリーは、最大容量モデルを2本使用した。XF105のバッテリーの持続性は優れているといえるだろう。納品までのワークフローは、XF105とiVISの収録データをProResに変換してFinal Cut Pro上に読み込み、オフライン編集を行った。次にオンライン編集はsmokeで行い、smoke上でオフライン編集のデータをそのまま持ち込んで復元させた。XF105とiVISのネイティブのデータを読み込み、貼り直して完成となる。カンパケはHDCAMで放送局に納品をした。