メディアアートプログラミング技術を駆使して、
従来のものごとに新たな見方を提示する作品を生み出す
真鍋大度 氏(ライゾマティクスリサーチ)

コンピュータプログラミング技術を駆使して、従来のものごとに新たな見方を提示し、Perfumeのライブ演出や、リオオリンピック閉会式のフラッグハンドオーバーセレモニーなど、世界中でさまざまなプロジェクトを手がけるメディアアーティストの真鍋大度氏とRhizomatiks Research(ライゾマティクスリサーチ)。真鍋氏にとって国内美術館では初となる個展『真鍋大度 ∽ ライゾマティクスリサーチ』が、鹿児島県霧島アートの森で開かれた。

作品展では、真鍋大度氏と4組のコラボレーターによる、7点の新作により展示を構成。作品の中の一つにドーム状の空間で抽象的な音と映像を体感するオーディオビジュアル作品「phenomena」がある。このドーム型スクリーンの投影にキヤノンのプロジェクターが採用された。ドーム型スクリーンの中にヘッドフォンをかけて座る。ドーム型のスクリーンを見上げると視界いっぱいに映像が広がる。

通常、自動作曲を行う際は単一のアルゴリズムを使うことが多く、いろいろなアルゴリズムを組み合わせることはしないが、この作品では、特定の手法にとらわれず映像と音をいろいろなアルゴリズムを用いてパターンを生成し、その中から良かったパターンだけをピックアップし編集することで作品を作る。他には例を見ない手法だ。そのため、ドームに入ってヘッドフォンをしながら映像を見ると光や音が不規則に飛び交う中で、不思議と映像と音楽はリンクしているように感じるというこれまでに味わったことがないような新しい独特の感覚を体感することができる。この作品を手がけた真鍋氏に、この個展で表現されたことや、キヤノンのプロジェクターが作品の表現に果たした役割についてお話を伺った。

今の時代だからこそできる新しい手法にチャレンジした

作品を作るにあたって技術的なポイントや、アートとしてのポイントは何でしょうか。

真鍋氏:今作はドームでやるかどうかギリギリまで決めておらず、どちらかというと映像と音をどう作るかというアルゴリズムの方にフォーカスした作品でした。
自動作曲とか映像のジェネレートなどはいろいろな手法がありますが、古くから行われているものだとサイコロの目を振って決めるようなランダムな手法であったり、今流行りのVAE(Varietional Autoenchoder)などAIで使われるようなアルゴリズムであったり、そういうものがたくさんあります。

研究で行われている作曲や自動生成は割と単一のアルゴリズムを使うものが多く、デタラメに色んなアルゴリズムを組み合わせる様なことはしませんが、今回は特定の手法にとらわれず、色々なアルゴリズムを使って生成したパターンで良かったものだけをピックアップして編集し楽曲や映像を作りました。今の時代だからこそできる新しい手法にチャレンジしたものです。

短い距離で、明るくかつフォーカスがきれいに合わせられるプロジェクター

今回の作品を制作するにあたってキヤノンのプロジェクターで実現できたことは何でしょうか?

真鍋氏:「phenomena」では、ドーム型スクリーンに映像を投影する必要がありましたが、短い距離で、明るくかつフォーカスがきれいに合わせられるプロジェクターの選択肢はあまりありませんでした。

今回の作品はかなり細い線が多く細かいコンテンツだったので、実写とかだと気にならないフォーカスの甘さなども今回使った様なCGのすごく細かいコンテンツだと、その精度は大きく見栄えに影響してしまいます。プロジェクターに超短焦点レンズを組み合わせることで、ドーム型スクリーン全域でピントをきれいに合わせることができた点はとても良かったです。

また、今回のプロジェクターは平面だけに投影するのではなく、平面以外にも投影することを想定して作られているので、色々と設置面で小回りが利くというところはありました。

ディテールを見せるような作品では、
プロジェクターもレンズの違いが重要

カメラのレンズにくらべ、プロジェクターのレンズにこだわられる方は少ないかと思いますが

真鍋氏:最近だとプロジェクターはどれだけ大きく映せるか、サイズ争いのようなことがあります。
しかし、よく見たらフォーカスもしっかり来ていないし、解像度も粗い機材も多い。もちろんそういった表現もありますけど、僕たちはどちらかというとディテールを見せるような作品が多いのでそういった意味ではキヤノンのレンズのような質の高いもののほうが良いのです。プロジェクターもレンズがかなり重要だと思います。

Rhizomatiks Research 代表 真鍋大度 氏

東京を拠点としたアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ。2006年Rhizomatiks設立、2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋 素 氏と共同主宰。身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。高解像度、高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく、注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや、アナログとデジタル、リアルとバーチャルの関係性、境界線に着目し、デザイン、アート、エンターテイメントの領域で活動している。坂本龍一、Bjork、OK GO, Nosaj Thing、Squarepusher、アンドレア・バッティストーニ、野村萬斎、Perfume、サカナクションを始めとした様々なアーティストからイギリス、マンチェスターにある天体物理学の国立研究所ジョドレルバンク天文物理学センターやCERN(欧州原子核研究機構)との共同作品制作など幅広いフィールドでコラボレーションを行っている。Ars Electronica Distinction Award, Cannes Lions International Festival of Creativity Titanium Grand Prix, D&AD Black Pencil, メディア芸術祭大賞など国内外の広告、デザイン、アート様々な領域で受賞多数。

作品で使われたプロジェクター

高画質LCOSパネルを搭載したレーザー光源モデル・WUX7500+超短焦点レンズRS-SL06UW

高輝度7500lm、なめらかで精細な高画質高解像度で格子感が少ない美しい映像投写を実現したプロジェクターWUX7500が使われました。独自技術を搭載した超短焦点レンズRS-SL06UWを組み合わせたことで通常のレンズでは難しい、ドーム型スクリーン全域にピントの合った歪みのない映像を実現しています。

また、複数のプロジェクターを使用して、マルチ投写を行う時に便利な機能(エッジブレンディング)により、自動的に輝度差を調整し、つなぎ目がなめらかになり、視界を覆うドーム型スクリーン一杯に美しい大画面映像とヘッドフォンから流れる音楽により、作品への没入感をより深く味わえる展示となっている。