製造業編
4K映像による、高精細シミュレーションが浸透

人々の消費傾向がモノからコトへと変わりつつあり、製造業には、ものづくりを通じた “価値づくり”が求められている。消費者ニーズの多様化、製品ライフサイクルの短期化がますます進む中、「付加価値の創出」、「リードタイムの短縮」を実現させるソリューションのひとつとして高精細4K映像を積極的に導入し、デザインレビューやシミュレーションの質の向上・効率化に取り組む企業が増えている。
本稿で紹介するキヤノンのリアル4Kプロジェクターは、パネル自体が4K規格の画素を持ち、いわゆる「4K相当」のプロジェクターとは一線を画す。その高精細かつ色再現に優れた映像は、臨場感あるシミュレーションを求める製造業からも高く評価されている。
- 想定企業 自動車メーカーB社
- デザインレビュー、シミュレーションの効率化に取り組む製造業を自動車メーカーB社と想定し、キヤノンのリアル4Kプロジェクターがどのように映像活用の可能性を広げていくかを紹介していこう。
導入前の課題開発工程の長期化を招く、非効率なミーティング環境
自動車メーカーB社では、顧客視点のものづくりと、リードタイム短縮を目指し、ミーティングやデザインレビュー、シミュレーションの環境改善を進めていた。まず目指したのは、プリントした3D CAD図面に目を凝らすことなく、誰もが鮮明な映像を見ながら議論できる環境だ。そこで4Kモニター導入を検討するも、「画面が小さく、メンバー全員で映像を共有できない」、「部門ごとの要求が設計に反映されているかわからない」、「完成系がイメージしにくい」と社員からは不満の声が。担当者は「大型4Kモニターを会議の度に移動させて使うのは非効率だし、複数の会議室に導入する予算もない」と途方に暮れていた。


導入の効果質感まで間近で伝わる、実寸大の高精細デザインレビュー

CAD図面の投写に(Autodesk社 Alias製品データ)
3D CADなどの設計データを高精細かつ大画面で表示できること。会議室に持ち運び利用できること。そして、映像にリアリティーがあることがデザインレビューやシミュレーション用途に最適だと感じ、担当者が選定したのがキヤノンのリアル4Kプロジェクター「4K600STZ」だ。
コンパクトな4K600STZは、ミーティングでも使いやすいと好評だ。3D CADの細部の線まで緻密に再現された大画面映像を指さしながら、誰もが明確に意図を伝えられる。設計、製造、営業、マーケティングなど部門を横断したコミュニケーションも取りやすくなり、開発プロセスの早期から、リスク回避の精度が高まり、設計品質が向上した。さらに、「モニターではできなかった“実寸大の高精細デザインレビュー”が可能になり、後工程からの設計手戻りは格段に減少した」と担当者は語る。
4K600STZは、自動車のような大型製品の3D CADやCGデータでも、実寸大で高精細に映しきることができる。目視による断面の確認、部品の干渉、クリアランスなどのチェックが容易になり、「映像に近寄っても、画素を感じない。実物を見るように、微小なパーツの凹凸や輪郭までリアルにわかる」と確かな効果を実感したという。この高精細画質を支える技術のひとつが、4K600STZに3枚搭載された4,096×2,400画素の「リアル4K LCOS※(エルコス)パネル」である。キヤノンでは「リアル4K」を追求し、パネル自体が4K規格の画素を持つ。“4K相当のプロジェクター”とは、緻密さや鮮明さに差が出るという。
さらに、反射型液晶LCOS※(エルコス)パネルの特長を最大限に生かし、プロジェクターの課題であった“映像の格子感”も克服している。リアル4K LCOSの臨場感あふれる映像でデザインレビューをすることで「モックなどの試作前でも、製品イメージをみんなで共有できるようになった」と手応えを感じている。
※LCOS=Liquid Crystal on Siliconの略
また、4K600STZの自然で忠実な色再現性により、高精度な色味の検証が可能になった。sRGBの色域99%をカバーし、4K・8K映像の色域規格「BT.2020」入力にも対応するなど、正確に再現できる色域が極めて広く、階調表現にも優れている。「ボディー塗装の艶やかさや深みまでわかる」、「シートやパネルなど内装の質感まで伝わってくる」と好評だ。
導入のポイント曲面スクリーンを活用し、顧客視点で試乗シミュレーションも

ミーティング時の手軽な4K大画面映像の活用、実寸大デザインレビューに加え、シミュレーション活用も視野に入れていた担当者は「コストが高くて諦めていた高精細な曲面投写が、これ1台で実現できる」と4K600STZを選んだ理由を語る。
シミュレーション用途には、球面・曲面のスクリーンが広く使用されている。平面よりも、よりいっそう深い没入感を得られる点は魅力だが、映像の加工、複数のプロジェクターが必要となり、トータルコストはかなりの高額になるのが一般的だ。ではなぜ、4K600STZは1台で、通常の4Kコンテンツを歪みなく曲面/球面スクリーンに投写できるのか。
その理由のひとつはレンズの特性にある。被写界深度がF2.6と極めて深いため、投写面の位置によってピントのずれが生じやすい曲面スクリーンでも全域でピントが合う。もうひとつの理由が、キヤノン独自の「周辺フォーカス調整」。映像中央部と、アールのきつい周辺部のピントを別々に調整できるのだ。「大画面の隅々まで、ドライバーの視界を再現できる」と社員の評価は高く、担当者も「正確な情報・データを得るためにも、正確な映像が表示できるシミュレーション環境を求めていた」と、その忠実な再現性に手応えを感じている。
3D CADの細い線や塗装色の忠実な再現性と、大型製品の実寸大表示で、デザインレビューやシミュレーションの効率化をサポートする「キヤノンのリアル4Kプロジェクター」。開発プロセスの初期からデザインレビューの精度を高めることで手戻りを防ぎ、リードタイムの短縮に貢献する。また、映像に歪みがなくリアリティーあふれる曲面投写は、顧客の視界を再現するシミュレーションに利用され、製品開発、品質検証、新たな付加価値づくりなどに役立てられている。
トピック半球体スクリーンと連携し、新しい映像体験を提供

映像アトラクションに
(WONDER VISION社 Sphere 5.2製品イメージ)
4K600STZは、WONDER VISION TECHNO LABORATORY 株式会社の可動式巨大半球状スクリーン「Sphere 5.2」とのコラボレーションを展開し、多様な映像体験を提供しています。
用途にあわせて選べる、全3モデルをラインアップ
高速起動&長寿命を実現するレーザー光源システム搭載した広角ズームレンズモデル「4K600STZ」、標準ズームレンズモデル「4K600Z」を用途に合せて選択可能です。高圧水銀ランプ光源を採用した「4K501ST」は、わずか18kgと持ち運びがしやすいコンパクト設計を実現しました。