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特集

だんだん明らかになってきたAI OCRの限界
業務全体を今一度見直すことが成功のポイント

AI OCRでも100%の読み取りは不可能だと知ることがまず大事

画像として取り込んだ文字を読み取り、テキストデータとして抽出できるOCR(Optical Character Recognition:光学的文字認識)。文字入力の手間を削減できることから、書類や帳票の内容を業務システムにデータ入力する際などに重宝されてきました。しかし、活字の読み取りはお手のものであるOCRも、手書き文字の認識には弱く、実務での活用は難しいという状況が長く続きました。

そんな中、次世代のOCR技術として新たに研究開発されたのが、文字の認識処理工程にAI技術を組み込み、読み取り精度を大きく向上させたAI OCRです。もっとも、AI OCRと言えども、あらゆる手書き文字を100%の精度で読み取れるわけではありません。実用においては、読み取りの実力値のみにフォーカスするのではなく、OCRに最適な画像クオリティを確保する前処理を行ったり、後処理として辞書テーブルとのマッチングで読取結果を補正したりするなど、包括的なアプローチが必要不可欠です。

こちらの特集では、そうした「AI OCRの限界」とどう向き合い、どのようなスタンスで付き合っていくことがベストなのかを改めて考察していきたいと思います。

人間によるチェック&修正は必須でも、手間やミスが減るなら導入の価値あり

一億総活躍社会を目指して政府が推し進める働き方改革を背景に、さまざまな業務改善につながる新テクノロジーとして注目を集めているAI OCRですが、今後も100%の精度を実現することは理論上不可能であり、実務で有効活用するためにはどう発想を転換できるかが一つのカギとなります。

重要なのは、「AI OCR=すべてを任せっきりにできる」という発想は捨てること。読み取り精度ばかりにとらわれず、AI OCRは不完全なものだと認識した上で、ベストな付き合い方を見つけることが大切なのです。すなわち、AI OCRを利用する際には必ず人間によるチェック&修正作業が不可欠になりますが、そうした手間を加味しても業務効率化や費用対効果につながるかどうか、まずは慎重に見極める必要があります。

人手によるデータ入力は、業務時間の長さや疲労の蓄積にともない、どうしても打ち間違いや入力漏れなどのミスが起こりやすくなるもの。たとえチェック&修正作業が必要になったとしても、データ入力からすべて人間が行っていた時と比べて手間が軽減され、ミスの削減につながるのであれば、十分に導入する意味があるのです。

情報を取得し、学習を繰り返すことで、精度が向上していくAI

例えば、目の前の書類に「工事」と書いてあるとします。皆さんは特に意識しなくても、瞬時に「こうじ」と読むと思いますし、「工」という字をカタカナの「エ」と間違えることもないでしょう。これは、今まで生きてきた過程の中で身につけた文字や言語情報、シーンを判断するバックボーンがあるからであり、その書類がどういう目的のもので、他に何が書かれているかも重要な判断材料となります。

同じように、AIもその能力を発揮するためには、まず情報を得ることが大前提となります。AIの識字率向上に寄与するもの、それはさまざまなパターンのデータを取り込み、膨大な量の学習を繰り返すことで「違いを見分ける力」をつけるディープラーニングという学習法です。ディープラーニングは人間の脳神経回路にヒントを得た学習アルゴリズム「ニューラルネットワーク」をベースにした機械学習の手法であり、入力層、中間層、出力層の3層のうち中間層部分を多層にすることで、AI自らより複雑な判断ができるようにしたものです。

例えば、猿を猿と認識するためには、あらかじめ学習しておいた猿の特徴と照合する必要がありますが、ディープラーニングで大量に学習することで人が直接関与しなくてもAIが自動で学んでいきます。そしてその精度は、学習するデータの質と量に影響を受け、学習に適した良質なデータが増えれば増えるほど継続的に向上していきます。

一歩先の顧客満足を実現するには、人間のマネジメントが不可欠

AIと混同されがちな概念としてRPA(Robotic Process Automation:ロボット技術による業務の効率化や自動化に向けた取り組み)がありますが、AIとRPAは本来全く異なるカテゴリーの技術です。AIが人工知能の名のとおり、情報をもとに自身で分析したり、やるべきことを判断するのが得意なのに対し、繰り返し作業を行うことに長けているのがRPA。両者の連携によって、AIが判断したデータをもとにRPAが作業したり、RPAの作業データを取り込んでAIが分析したりと、相互に作業を補完し合いながらこれまで人間が時間を掛けて行ってきた事務作業を効率的に処理することが可能になります。

もちろん、AIが一から自分で考えて行動するわけではなく、事務作業の効率化を実現するには知識や経験に長けた人間によるマネジメントが欠かせません。具体的には、AI、RPAが代替できる事務作業と人が引き続き対応すべき事務作業の線引きを行うことがまず大事であり、処理のスタートからゴールまでどのステップでどの程度の工数短縮が見込めるかという設計が必要です。例えばキヤノンでは、費用対効果を出すために業務の絞り込みや対象となる帳票を選別するところからお手伝いすることが可能ですし、お客様の業務にはどんなシステム構成が最適かという観点でスキャナなどのハードウェアや文書管理などの保管先、データ分析ツールなどもトータルにご提案させていただくことができます。

人間のマネジメントの下、AI OCRとRPAとの連携が本格化していくことで、一歩先の顧客満足を生み出せるものと期待されています。一例を挙げると、保険業務であれば、AI OCRとRPAの連携により査定自動化を実現できれば、給付金の支払いまでのリードタイムの短縮が可能になります。これが発展すれば、近い将来、無意識のうちに必要な手続きが終わり、給付金が受け取れる、そんなこともけっして絵空事ではないのです。

夢のテクノロジーとして、あたかもあらゆる不可能を可能にする技術のように語られがちなAI。しかし、どこまでいってもAIが人間を超えることはあり得ないというのが、今の大半の識者たちの見方です。AI OCRとRPAの連携はあくまでもワークフロー効率化の一手段として捉えて、上手に有効活用していきましょう。

コラム

実は単純な文字のほうが誤認されやすいってホント!?

ひらがな、カタカナ、漢字と、実にたくさんの種類の文字がある日本語。画数の多い漢字など複雑な文字ほど、AIも苦手なのでは?と思いませんか。でも、本当は逆です。細かな特徴を見分けなければならないという意味で、実はカタカナなどシンプルな文字のほうが、違いを判断するのが難しいのです。「ソ」と「ン」、「ハ」と「へ」、「イ」と「ト」など、カタカナは単純であるがゆえに、ほんの少しの傾きやずれで全く別の文字に見えてしまいます。

特に手書き文字はその人の個性やくせが出やすく、より判断が難しくなります。前述のとおり、AIの読み取り精度は学習してきたデータが増えるほど向上していきますが、AI側がいくら学習を重ねても人のくせ字は治りませんし、微妙な違いをAIに正確に識別させることはこれからも困難でしょう。

では、なぜ人間にはそれが可能なのか。これは未だ解読できない謎であり、実に奥の深いテーマなのです。

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