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特集

働き方改革と健康経営
「社員が全力で働ける環境作りが必須」――キヤノンマーケティングジャパン人事責任者が語る“人材と経営戦略”

企業のいまを追う。上席執行役員(総務・人事本部本部長)溝口 稔

働き方改革や健康経営を経営戦略に位置づける企業が増えている。
コスト増にも思われる取り組みに力を入れる企業の狙いはなんなのか。
どのような社会変化が背景にあるのか。
キヤノンマーケティングジャパンの人事責任者に聞いた。

元産婦人科医の創業者がつくった「健康第一主義」

――働き方改革や健康経営に積極的に取り組んでいるとお聞きしています。2018年には、経済産業省から健康経営銘柄に認定されました。そもそも健康経営を経営戦略に位置づけたきっかけはなんだったでしょうか?

溝口稔 上席執行役員(総務・人事本部本部長) 当社はキヤノングループの国内営業部門という位置づけですが、キヤノン創業者の一人、御手洗毅さんが産婦人科のお医者さんだったというのが根っこにあって、健康を大事にする文化が脈々と受け継がれています。会社の行動指針にも「健康第一主義」(健康と明朗をモットーとし、人格の涵養につとめる、という意味)というものがあります。

社員高齢化で取り組み加速

――土台となる文化があるのは大きいですね。それが今も続いている?

溝口 最近では2010年から健康管理の取り組みを強化しているんですが、これは社内の変化がありました。平均年齢がどんどん上がってきた。いま47.4歳。高いんです。平均年齢が上がるということはどういうことが問題になるか。色々あるんですが、その中の非常に大きなウェートが健康問題でした。平均年齢が上がれば医療費も上がる。それをおさえなければいけない。そういう経営課題がありました。

――どんな取り組みをしているのでしょうか。

石黒守人 総務・人事本部人事部グループ安全衛生課課長(取材当時) 現在、メンタル・メタボ・がんの三つを戦略的に対処しています。特徴の一つががん検診や法定健診の受診徹底とフォローアップです。がん検診の受診率は対象者の85.1%です。

――85.1%って高いですね。がん検診も、国はまだ50%を目指しているくらいです。

石黒 よく驚かれます。また、定期健診で「要受診・要精密検査」の結果が出た社員が病院に行き、会社に報告をする割合も100%です。

地道な努力続け、定期健康診断による再検査受診率100%

――「健康第一主義」の風土があったから、実現も簡単だった?

石黒 それでも大変でした。定期健康診断における要受診者・要精密検査対象者には、結果通知も含めて複数回、受診をメールで促します。それでも駄目なら上司の協力をもらって対応してもらっています。はじめは本人の抵抗もあったんですが、保健師が一対一で向き合い、地道に受診の必要性を訴え続けることで、受診の徹底が出来てきました。個人の自己健康管理と、上司を含む職場の風土の醸成、この両方が大事です。こうして、創業時からのDNAに地道な努力が重なった結果だと思っています。

溝口 社員は入社後、どこかで「創業者がお医者さん」「健康第一主義が行動指針」ということを聞いているので、「健康が大事」ということが頭にあるんです。当社は昔のトップの言葉が脈々と生きているわけですが、やはりトップの健康に対する強烈な思いやメッセージが、じわじわと時間をかけて社員に浸透していくことが大きいと思います。

――こうした取り組みの成果は、さきほどお聞きした医療費抑制、コスト抑制ということになるんでしょうか。

石黒 それだけではありません。「アブセンティズム」(欠勤や休職などにより就業できない状態)、「プレゼンティズム」(出勤はしているが、心身の健康問題によりパフォーマンスが十分に発揮できない状態)といった言葉が最近注目されていますが、これらを減らすことで、健康な人が増えて仕事に生き生きと取り組めるようになってきており、生産性向上という成果も上がっていると考えています。

個人のパフォーマンス発揮、経営のど真ん中

溝口 欧米の企業とは違い、日本の企業ですから、縁があって採用した人を、「パフォーマンスが低い」とか、「病気になってしまった」といった理由でさよならできないですね。一人一人がもっているパフォーマンスをできる限り全開に近い状態で発揮してもらわないと、日本の企業は生産性が落ちます。できるだけ多くの人が100%に近いパフォーマンスを発揮できる状態を会社として作っておくことが日本の企業は必須だと思うんです。

経営戦略としても、健康に会社として取り組むことはある意味リターンもある、投資という考え方もできるんですね。社員の福祉といった前提もあるんですが、決してそれだけではありません。経営施策として考えるとすごい重要で投資すべきものなんです。それは結果的には、「Win-Win」となります。社員にとっても健康的に働くことができて幸せ、ということなんですね。

――ところで、健康ということでは、AEDの機器がオフィス内のあちこち、エレベーターホールにも配備されていて驚きました。

溝口 当社はAEDを販売している会社です。「あのときAEDさえあれば助かっていたのに」という事態を失くしたいと考えています。まずは自社から。3分以内にAEDのある場所にいけるよう、適切な位置に置き、どこにあるかわかりやすいように表示し、実際の場面で使えるように全国で講習をする、といった三つの策をとっています。結果的にはそれが社外でも役に立って、「駅で倒れた人を救った」という理由で表彰されている社員がいるくらいです。

オフィス内のあちこちにAEDが配置されおり、さらにエレベーター内やエレベーターホールなど様々な場所に設置場所が一目でわかるような表示がされている

働き方改革、女性活躍がカギ

――健康経営からひとつ視野を広げてお聞きします。働き方改革も経営にとって重要性が増しているのでしょうか?

溝口 間違いなく少子高齢化で労働人口は確実に減る。なんとかしようと思うと、女性と高齢者に活躍してもらうしかない。現実問題として、女性に育児や介護で負担がいくことが多い。そうすると女性がキャリアを切らないで働き続けられる会社に早くしないといけないと思っています。当社の育児休業は取得率100%で、結婚や出産でやめる人はほとんどいません。でも、本当に仕事に取り組める状況をどう作るかというと、就業時間で全力を出し切ってみんなで成果を上げられる会社にしないと。育児や介護をする女性がイーブンに周りと勝負するという環境をつくりたいと思って始めたばかりです。

――具体的には?

溝口 営業職に営業手当を支給していたのですが、昨年4月、自主的に変えました。労働時間に応じて残業代を支払うようにしました。それをやっていくと、働き方を変えないといけない。だらだら残業していたら全部労働時間になってしまうので、コストになります。できるだけ効率的にやり、無駄な時間を減らし、本来営業職がやるべき仕事にどれだけ向き合えるか、それによって成果をあげていく、という風に。

――仕事の仕方や評価の方法も変わったのでしょうか。

溝口 管理職研修などで、「野球からサッカーに変わった」と言っています。野球は時間ではなく9回です。2時間で終わるときも5時間かかるときもある。同じ9回でも時間制限がないからありとあらゆる手を打つんです。ところがサッカーは時間が決まっているので、時間の中で勝つ努力をするんです

たとえから話を戻すと、時間の制限があるなかで、本当にその仕事は必要か、お客さんにとって良いことなのか、上司が判断するようにしようと言っています。時間をコストとしてとらえる方式に変えたので、うちはそうせざるを得なくなった。短時間勤務の社員の評価も変えていきたい。労働時間が短い分、成果が少なくてもイーブンという評価をするようにと言っています。会社としてお支払いしている給料、出ていくコストも少ないわけですからね。まだまだ道は長いのですが、国もそうした方向に行くはず。であれば先んじてやっていきたいと思っています。

朝日新聞デジタル 広告特集より転載

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