キヤノンマーケティングジャパンでは、かつて業務プロセスに大きな問題を抱えていました。それは「事務処理が多すぎる」ということです。特に、営業部門では「事務処理に追われてお客さま対応ができない」という声が挙がっていました。
特集
業務プロセスを改善するために重要なこと
~業務量調査による業務の「見える化」~

働き方改革の一環として、しばしば「業務プロセスの改善」が叫ばれます。しかし、いざ業務プロセスを改善しようとすると、どこから手を付ければよいのかわからないことも少なくありません。業務プロセスを改善するには、まず「どのように業務が行われているか」を可視化する必要があるのです。本稿では、キヤノンマーケティングジャパンが行ってきた取り組みから、業務プロセスの「見える化」と、それを元にした業務プロセスの改善について紹介します。
業務プロセス改善の背景

当時の業務プロセス改善に向けた取り組みが目指していたのは、無駄を排除することで付帯業務時間(事務処理など)を大きく圧縮し、お客さまへの対応時間を増やすとともに、総労働時間を削減することによって、プロセス数、承認数、帳票数を3割削減することです。
業務量調査の実施
業務プロセス改善に向けた取り組みに先立って、キヤノンマーケティングジャパンではBPデザイナーズの「BPEC(Business Process Engineering Cycle)」を使用した業務量調査が行われました。具体的には、従業員に「過去1年間に、どのような業務に時間がかかったか」を、記憶を元に記録・提出してもらう「推定比率法(経験見積法)」という手法を用いています。この手法は、「実測法」(観測者が作業を実際に観測・測定する手法)や「実績記入法」(対象者がそれぞれの作業にかかった時間を記入する手法)と比較すると精度は劣りますが、短期間に少ない工数での実施が可能です。

調査票は、1日平均の労働時間と年間の休暇取得日数を入力することで年間の総労働時間を算出し、それぞれの業務にどれくらい時間がかかっているかを、年間の労働時間から割り振ってもらう形で入力してもらう形式となっています。
また、回答率をできるだけ高めるべく、部門トップとの調査計画の事前共有および部門トップからのメッセージ発信、回答を提出していない従業員への督促などを行いました。これらの取り組みによって、最終的に回答率98.7%を達成しています。
このようにして得られた調査結果の分析によって、地域別や組織別の労働時間とともに、さほど重要ではない業務にかなりの時間が費やされていたことが明らかになりました。たとえば、営業部門ではお客さまとの対応時間と、事務処理を行っている時間がほぼ同じだったことがわかるなど、改善が必要なプロセスの「見える化」が実現しています。

改善施策の実施
業務量調査の結果によって、以下のような改善施策が行われました。

たとえば「体制強化、専任化、役割変更」では、複合機をお客さまに納品する際に、膨大な時間がかかっていたお客さまからの情報収集および登録作業を、導入支援センターの増員によって軽減するとともに、同じく膨大な時間がかかっていた受注手配の作業を軽減すべく、支援する組織を新設されています。
こういった取り組みを通じて、2018年6月末の時点で月間6,000時間(約40名分)の削減を達成した。

なお、業務量調査は2017年末、2018年末にも実施されており、回を重ねるごとに回答率も向上しています。2018年末に実施された業務量調査に基づく、2019年の業務改善施策としては、RPAの活用や調査結果の高度な分析、そして請求書のデジタル化をはじめとする、さまざまな分野におけるデジタル化に向けた取り組みなどが実施中です。
このように、業務プロセスの改善に向けた取り組みは、一過性で終わらせてしまっては意味がありません。継続的な改善の実施が必要であり、BPM(Business Process Management)の追求が重要です。

(このコラムは、2019年5月9日にキヤノンマーケティングジャパンが開催した、「働き方改革セミナー2019 アウトソーシングで加速する働き方改革 ~見える化×BPOが変える業務のカタチ~」における、同社のマーケティング推進本部・RPA推進部の部長である磯村雅弘氏による講演「『見える化』から始める業務改善の進め方」を元に執筆しています)
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