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こころを動かすために、動画をはじめた。日本の新しい写真館

フォトセラピータイムグラフ 兵庫県姫路市

「フォトグラファーにとって最も大切なのは感受性だと思う」
自らの感受性を磨きながら、それをフルに発揮できる環境をつくるために、フォトセラピータイムグラフの代表・上山毅氏は、スタジオを改装し、同時にキヤノンのソリューションでフルデジタル化を 図った。さらにEOSムービーによる動画撮影もサービスとして提供し始めるなど、「心のカタチ」を撮るために、従来の発想にとらわれず、自由に写真館ビジネスを展開する上山氏に、話を伺った。

“Trace of Heart”

“Trace of Heart”

人が人を思いやる“心のカタチ”を撮りたい。

フォトセラピータイムグラフ代表 上山毅氏

上山氏が代表を受け継いだのが6年前、2004年のことだ。その時、営業写真とは何なのかをじっくり考え直したという。
「写真館に対して危機感を抱いていたので、自分がやるにあたって、本質的で、しかもお客さんにわかりやすいコンセプトを掲げたいと思っていました。そして、たどりついた言葉が“Trace of Heart”だったんです」営業写真は誰かが誰かのために残そうとする思いやりの心であり、それを写真として表現するフォトグラファーの心のカタチでもあるというのが、上山氏の考えだ。
「たとえば子どもの誕生記念の写真。その子のかわいい姿を残すのはもちろん、親が子を想う気持ちも表現したい。パパとママがしわくちゃな顔をして一生懸命笑わせようとしている。そんな写真の方が、子どもが大きくなって写真を見た時にうれしく思ってくれるんじゃないかと思ったんです」心のカタチを撮ろう。上山氏はそのための環境づくりに取り組んだ。

フリースタイルスタジオ。

フリースタイルスタジオ。

ドキュメントを撮れる、ナチュラルな空間へ。

「何気ない瞬間に現れる思いやりの表情や心の動きを捉えるためには、まずお客さまが本当に自然に過ごすことができること。そして、私も自由に動きまわって、どこでも撮れる。そんな空間づくりが必要と考えたんです」
そこで上山氏は2005年に本店の改装に着手。動きやすく、どの壁面を背景にしても撮影できるようなスタジオへ作り変えたのだ。今回の取材では2010年3月にオープンした支店の「フォトセラピー タイムグラフ」に伺ったが、こちらのスタジオにも同様の考え方が貫かれている。明るく開放的で、木の素材感を大切にしたナチュラルな雰囲気のスタジオは、とても居心地がよく不思議なくらいくつろげる空間だった。親子に自由に遊んでもらい、その様子をドキュメントとして撮る。そのための「フリースタイルスタジオ」。上山氏がそうネーミングしたのも頷ける気がした。

キヤノンという「自由」を導入。

キヤノンという「自由」を導入。

EOS DIGITAL+無線LANが、創造力を解き放つ 。

本店の改装と同時に、上山氏はキヤノンのEOS DIGITALをはじめ、無線LAN、画像データ管理ソフトDigital Photo Presenter for Studio、大判プリンターiPF8000などから成るプロフェッショナルフォトソリューション一式を導入した。
「それまでは6×7の中判カメラをスタンドに取り付けて、カシャカシャというやり方でしたからね。手持ちで動いて撮影できるようにするためにスタジオの改装に加えて、フルデジタル化を図ったわけなんです」
特にEOS DIGITAL+無線LANは、上山氏自身の撮影スタイルを変えてくれたという。
「自由に動き回って、寝そべってもいい。どこでも撮れるというのが、自分の感性とか創造力を解き放ってくれる感じがすごくありましたね。写真の作風もよりナチュラルなものに変わったと思います」

三手間四手間を、ひと手間に。

三手間四手間を、ひと手間に。

DPPSはデータ管理に加え、業務の効率化にも貢献。

画像データ管理ソフトDigital Photo Presenter for Studio(以下DPPS)は、管理のみでなく業務の効率化にも役立っているそうだ。
「DPPSは自動的にお客さまのフォルダを作って、お客さまごとに仕分けしてくれる。データ管理だけでなく顧客管理までできるから便利ですよね。後から作業する時もお客さまの名前で検索すれば、パッとフォルダを引き出してくれるし。またサーバーの中にバックアップを取るように設定できるし。普通、四手間ぐらいかかっているところが、ワンアクションで終わっている感じです」
また撮影データのリアルタイム表示をモニターチェックとして活用。「たとえば成人式。二十歳の子って、自分がどう写ってるかすごく気にするんですね。だから、撮った脇から画像を一緒に見る。すると、どんどん乗ってきて、撮影もしやすくなるんですよ」

動画を、ビジネスに。

動画を、ビジネスに。

EOSムービーは、写真館の強みになる。

タイムグラフは、EOSムービーによる動画サービスにもいち早く取り組み、すでに成果をあげている。
「動画はEOS 5D MarkⅡを導入した時に始めましたから、約1年前くらいからですね。お客さまにプレゼンする際の静止画のスライドショーの中に動画が入れられたら、もっとインパクトが出るんじゃないか、と考えたのが動画に取り組むきっかけですね」
現在はブライダル(動画1本198,000円)での展開が中心だが、成人式や七五三など、さまざまな展開が考えられるという。
「EOSムービーは多彩なEFレンズを活用して、単なる記録ではない、人の心を動かすような作品性の高い映像を撮ることができる。この点はビデオ業者との差別化にもなりますし、一眼レフを知り尽くしたフォトグラファーの強みにもなると思うんです」
ブライダルの動画は、披露宴のエンドロールとして上映されるが、上映後はスタンディングオベーションが起こることもあるそうだ。

大きく、美しく、ふたりらしく。

大きく、美しく、ふたりらしく。

キヤノンの大判プリンターが大活躍。

ブライダルで好評を博しているサービスのひとつに「オリジナルデザインのウエルカムボードプレゼント」がある。ウエルカムボードというと英文の筆記体で名前やメッセージが書かれている小型のものをイメージするが、タイムグラフが提供しているのは、なんとB1サイズだ。ロケーション撮影したふたりの写真を全面に配し、キヤノンの大判プリンターiPF8000で出力。結婚するふたりを映画やドラマの主人公に見立てて、番宣ポスター風に仕上げている。ユニークなタイトルは上山氏が考案。美しく迫力があって、しかも個性的だから、お客さまからは大変好評を得ているという。
また、同店では「1コインの絆」キャンペーン(参加費5000円のうち500円を児童養護施設に寄付)を実施しているが、その特典である「フォトキャンバス(A3)」も人気だ。キャンバス地のペーパーを使ってiPF8000でプリント。絵画のような風合いのフォトキャンバスが気に入って、「今回もフォトキャンバスで」とオーダーされるリピーターも多いそうだ。

タイムカプセル、特許出願中。

タイムカプセル、特許出願中。

リピーターを増やしてくれるオリジナル商品。

動画をはじめ独自の取り組みを積極的に行っている同店には、特許出願中の「タイムカプセル付きアルバム」という商品もある。
「リピーターを増やすために頁の増やせるアルバムを売っていきたい、というのが発想の原点。アルバムに思い入れを持ってもらうために特別な価値を持たせたい、そこで思い付いたのがタイムカプセルだったんです」このアルバム、表紙にハート形の鍵の付いたタイムカプセルがセットされている。そこに、生まれてきた我が子への想いを綴った手紙などをしまっておき、成人する時や結婚する時にその鍵をプレゼントしてもらおうというものだ。台紙メーカーに相談し、試作を何度か繰り返し、商品として具体化している。
「子供にとっては、自分が全く記憶にない、生まれたばかりの時に親が書いてくれた手紙ですから。それを初めて見たらきっと感動すると思うんです」マタニティやお宮参りのお客さまから注文をいただき、また毎年このアルバムを持ってきて記念写真を増やしていくお客さまもいるそうだ。

みんなに楽しんでもらえる写真館へ。

みんなに楽しんでもらえる写真館へ。

写真が生み出す歓びを、多くの人に伝えたい。

地域の方から必要性を感じてもらうために、写真館は「写真そのものの良さ」をもっと伝えていくべき。上山氏はそう考えている。同店が今年初めて実施した「マイタイムグラフ~百人百色の肖像写真展」にも上山氏のそうした想いが込められている。
これは写真館で一人で撮る機会の少なくなった大人のための無料撮影イベントだ。街頭ロケで撮影した今の姿と、子どもの頃の写真を並べた写真パネルを作成し、先頃、写真展を実施した。
「写真館は子供だけじゃなく、大人でも楽しめる場所。そういう認識をもってもらうために始めたイベントなんです。来店時に小さかった時の写真をもってきてもらい、アンケートに答えてもらうんですね。小さい頃の夢は?生まれ変わったら何になりたい?とかね。すると撮影する前から、写真館という場で皆さん楽しんでくれるんですね。私はそれだけでも、これをやった価値があると思っています。写真を撮られる喜び、観る楽しさ、そして残す大切さを少しでも多くの方に伝えていけたらいいですね」

百人百色の肖像写真展はホームページ(http://www.timegraph.jp/campaign/mytimegraph/)でも紹介されている。

フォトセラピー タイムグラフ

Photo therapy timegraph
1956年に上山写真館として創業。上山毅氏が代表を継ぐにあたり本店(兵庫県宍粟市)の店名を「STUDIO UEYAMA P.C.S 」に。
支店である「フォトセラピータイムグラフ」は2010年3月、兵庫県姫路市にオープンした。
URL:http://www.upmountain.net/
(フォトセラピータイムグラフのサイトへ)