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撮ることって、叶えることなんだ。日本の新しい写真館

撮ることって、叶えることなんだ。

3F Photo Studio.Takizawa Photo Works. 新潟県新潟市

たとえば美容室がお客さまのイメージ通りにカットしてくれるように、写真館も一人ひとりの要望にもっと柔軟に応えていけるようになるべき。3F Photo Studio.Takizawa Photo Worksの滝沢史雄氏はそう考えている。お客さまの想いをカタチにするために、自らの技術と感性を磨きつづける滝沢氏に話を伺った。

最初から、Takizawaスタイル。

東京でファッションフォトの世界で働いていた滝沢氏、実家の滝沢写真館を急遽継ぐために新潟に戻ってきたのが十数年前のことだ。写真館という業界に初めて足を踏み入れて感じたのは、同じ写真でもそれまで接してきた世界とは全く違うということ。「全国的な営業写真コンテストで金賞を撮った親父のような写真は撮れない。じゃあ、自分に何ができるかと考えたときに、培ってきたものを活かして、ファッション雑誌に出てくるような写真を撮ってあげたら面白いんじゃないかと考えた。それが僕の写真館人生の始まりですね」と滝沢氏は語る。

おしゃれな家族をおしゃれに撮る場所。

独自のスタイルを追求する滝沢氏が、2009年に滝沢写真館の支店としてオープンさせたのが「3F Photo Studio. Takizawa Photo Works.」だ。めざしたのは、自分自身の好みや感性を大切にする若い世代に共感してもらえる写真館だ。「伝統的な写真館ではなく、子供写真館でもない。いつでも気軽に自然に撮影を楽しめる、写真館の新しい選択肢を作りたかった」と滝沢氏。店舗はビルのワンフロアに展開。手作り感あふれる内装はとてもカジュアルで、堅苦しさはまったくない。店舗に入ってすぐのスペースは受付というより、カフェのカウンターのような雰囲気だ。自然光がたっぷり入るスタジオ空間にも滝沢氏ならではのこだわりがある。「一般的な写真館のライティングって結構決まっていて、上からのライトで撮っている。うちにはぶら下がっているライトはない。白のホリゾントがあるだけのスタジオなので、その都度ライティングはいちいち作ります。たとえば夜にしか来られないお客さまが昼っぽい光が希望であれば作りますし、またファッション雑誌のような感じがいいということであれば生っぽい光を作ったり。お客さまの要望に合わせてライティングを作るのが、うちのスタイルです」と滝沢氏。

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家族写真を「Family Tree」というブランドに。

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同社では、家族写真に「Family Tree」という名前を付けてアピールしている。「滝沢写真館の家族写真と訴求するより、Family Treeというブランドにしたほうがわかりやすいなと思って。また、お客さまの間でも『Family Tree?知ってるよ。おしゃれな家族の写真ね』というふうに、Family Treeが広まっていったら面白いなと思いブランド化してみようと考えたんです」と滝沢氏。Family Treeには「家系図」という意味がある。写真を通じて家族をつないでいきたいという想いも込められているのだ。Family Treeの売れ筋はB5サイズ12ページのオリジナルブックタイプ、データCD-R付きで35,700円。その他、コンパクトなB6横型アルバム30ページや1ポーズB2ポスターなどを揃えている。滝沢氏はEOS 5D Mark Ⅱを使用しているが、子供を撮影するときにその違いを実感するという。「子供を撮るときって考えてる余裕はないですよね。イメージ考えていたら、いい表情を逃しちゃう。そういう意味ではEOS 5D Mark Ⅱのフォーカスの速さはありがたい。AIサーボAFとかを使うんですけど、いくら子供たちが走り回ってもピピッときてくれる。使い勝手がいいですね」。

入り口のドアは、かわいらしい赤に。「どんな写真館なのだろう」とワクワクさせる演出だ。

入り口のドアは、かわいらしい赤に。「どんな写真館なのだろう」とワクワクさせる演出だ。

Family Treeのアルバム。上が人気のB5サイズ12ページ。コンパクトな横型30ページタイプもラインナップに加えた。

Family Treeのアルバム。上が人気のB5サイズ12ページ。コンパクトな横型30ページタイプもラインナップに加えた。

最近人気なのがキャンバスプリントの新商品(15,750円)。部屋に飾ったときの感じがイメージしやすいようにディスプレイされている。

最近人気なのがキャンバスプリントの新商品(15,750円)。部屋に飾ったときの感じがイメージしやすいようにディスプレイされている。

フォトグラファーとしての「引き出し」を増やしつづける。

デビッド・ベイリー、リチャード・アヴェドン、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショア。スタジオには滝沢氏が好きな有名フォトグラファーの写真集が置いてあり、滝沢氏は普段から彼らの写真集を見ているという。自分がかっこいいと思う写真からインスパイアされたことを撮影にも活かしていきたいと考えているからだ。「見ていると、いろんなヒントをくれる。それを自分なりに咀嚼し、自分の引き出しの中にため込んでいくという作業をしていますね。そうすると撮影しているときに『あ、この人はデビッド・ベイリーのあのニュアンスでいったら、はまるんじゃないか』という感じでイメージが広がっていくんです」と滝沢氏。また、ファッション雑誌もよく見るという。どんなライティングで、どういう撮り方をしているかを研究するためだ。「今、旬の光はこんな感じだなというのをつかんだら、自分で実際にスタジオで試してみる。やってみて出来れば、自分の引き出しが一つ増えているわけです。二十歳ぐらいの若い人たちの感性に応えていくためにも、そういう作業は日々していますね」。

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Takizawaスタイルを伝えるための撮影会。

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ある時は美しいガーデンで、ある時はおしゃれなレストランで。同社ではさまざまな場所で家族向けの撮影会を開催している。「新潟の人って、こちらの言葉で『しょしがり』っていうんですが、恥ずかしがり屋。新しいおしゃれなお店を見つけても、ちょっと緊張するからまた今度にしよう。そういう気質があるので、こういうイベントをきっかけしてもらおうと思って始めました」と滝沢氏。撮影会は毎回盛り上がるが、スタジオへの来店にはそれほどつながっていないそう。「気軽なスタイルで撮る写真館があることを知ってもらえるし、Family Treeというブランド名も浸透していくので、それだけでも意義があると思っています」。料金設定は開催場所によって異なる。3000円程度でデータをお渡しすることもあれば、1000円でA4のプリント1枚をお渡しする場合もあるそうだ。

「新潟美少女図鑑」のチャレンジを営業写真に活かしていく。

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今や、ほぼ全国各県で発行されているフリーペーパーの「美少女図鑑」。実は新潟はその発祥の地で、滝沢氏の知人のデザイン会社が「新潟の町を元気にすることを何かやりたい」というところからこの企画は始まったそうだ。そして滝沢氏はこの「新潟美少女図鑑」の立ち上げ時からフォトグラファーとして制作に携わってきた。「美少女図鑑は美容師さんと相談しながら一緒に作りあげていくことが多い。だから実験的なこともやります。ライトを直に当てたりとか、リングライトを使ってみるとか。そういう中で『あ、これは成人式でいけるなとか、ブライダルで使えるかも』ということがあれば、積極的に取り込んでいきます」と滝沢氏。実際、成人式のお客さまの中には「美少女図鑑のように撮ってほしい」という方もいるそうだ。

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写真:3F Photo Studio.Takizawa Photo Works.

3F Photo Studio.Takizawa Photo Works.
1934年に創業された滝沢写真館(新潟市中央区東中通)の支店として、2009年に東堀通にオープン。気楽に撮影を楽しめる新しい写真館のスタイルを追求している。
URL:https://www.tpw230.jp/
(3F Photo Studio.Takizawa Photo Works.のサイトへ)