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「地方」を活かす、ビジネスモデルになる。フォトソリューションレポート

「地方」を活かす、ビジネスモデルになる。

株式会社 ハレノヒ 佐賀県佐賀市

ハレノヒは、洗練された感性で惹きつけるスタジオ、町の魅力を発信するロケーション撮影、インバウンドを見据えた施策など、様々な視点から地方写真館の新たなビジネスモデルを模索。写真館業界や地方の活性化に貢献したいと考えている。代表取締役の笠原徹さんに話を伺った。


笠原さんがつくったのは「自分が行きたいと思う写真館」。

人を惹きつける。古民家をリノベーションしたスタジオ。

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作家が手がけた小物などが並ぶ、雑貨屋さんのような店頭
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アルバム商品は、古木を用いた壁面シェルフに展示
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ハレノヒは、佐賀県の歴史的風致形成建造物である旧久富家住宅をリノベーションし、スタジオとして活用している。なぜ、古民家に着目したのか。それは、「古民家=おしゃれ」というイメージを利用することで、ともすれば入りにくいと思われている従来の写真館のあり方をもっと消費者ニーズに寄り添うものに、もっと気軽に立ち寄りたくなるものに変えていこうと考えたからだ。そうした狙いは、店舗のエントランスから表れている。「入口はさまざまな作家が手がけた雑貨などを展示・販売するギャラリースペースにしています。こうすることで雑貨屋さんだと思って入ってきてくれるお客さまがいるんですね。多くの方との接点をふやすための仕掛けです」とハレノヒの笠原さん。そこから店内に入ると、写真館のスタジオとは思えない、懐かしく温かみのある空間が広がっている。天井を高くとった空間設計と、古民家ならではの太くて味わいのある梁や柱を活かした造作によるものだろう。「何だか落ち着きますね、と言ってくださるお客さまが多いです。この雰囲気は大人だけじゃなく、小さなお子さんも感じるようですね。照明だけが並んでいる無機質なスタジオだと、子どもたちは構えてしまうところがありますが、ここでは自然と過ごすことができるみたいです」。

日本情緒あふれる町が、そのままスタジオに。

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ハレノヒはロケーション撮影も積極的に行っている。佐賀市柳町の長崎街道沿いには明治・大正期に建てられた建造物が数多く残されており、この町全体をスタジオ環境と捉えているのだ。「本物の建物の中で撮影を体験できるのは、お客さまにとっても価値を感じるところであり、ハレノヒで撮りたいと思う魅力のひとつになっていると思います」と笠原さん。
ロケショーン撮影に注力する理由は、もうひとつある。「町の広報」としての役割を果たしたいと考えているからだ。「いい写真を撮れば、お客さまは人に見せたいと思うものです。見せることも喜びですから。それでSNSにこの界隈で撮った写真をアップしてくれる。すると“これ、どこで撮ったの?”、“佐賀にはこんな場所があるんだ”という反響につながっていきます。ロケーション撮影で、お客さまが満足する写真を撮ることは、町の魅力を発信することになると考えています」。

届けたいのは、自分自身を発見する楽しさ。

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いま、多くの写真館は「写真館で過ごす楽しさ」をつくりだそうと取り組んでいる。ユニークな施設が感じさせる楽しさがあれば、接客のプロが盛り上げてつくりだす楽しさもある。ハレノヒが求めるのは、そのいずれでもない。撮影を通じて、お客様である親子や夫婦同士がコミュニーケーションを図り、自分たちの関係性のなかで新しい何かを発見する。そんな対話から生まれる楽しさを届けたいと考えている。「撮影の時、僕は面白いことは特別言わない。家族の反応を見ながら、取材するように言葉を投げかけるだけです。すると、普段は家では話さないようなことをお互いに話し始めて、どんどん自分たちが楽しくなっていく。そういう機会を提供し、写真の中に残すのが、僕たちの仕事だと思っています」と笠原さん。お客さまとのコミュニケーションや場作りに多くの注意を払うハレノヒの撮影を支えているのが、EOS 5D Mark Ⅲ。「何よりも重視するのは操作性。なぜなら操ることに気をとられていたら、お客さまが発している情報をキャッチできないからです。呼吸するのと同じくらい意識せずに扱うことができる。僕は、一番使いやすい道具を使っています」。

SagaWAKONで、海外にも発信。

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笠原さんの目は、日本以外のマーケットにも向けられている。「佐賀和婚〜SagaWAKON」。これは、主に外国人カップルを対象に、佐賀でウェディングフォトを撮影するサービスだ。佐賀を舞台に撮影されたタイの映画やドラマをきっかけに、ここ数年、佐賀を訪れるタイ人観光客が急増している。「佐賀ブームで沸くタイのお客様に、佐賀の観光とウェディング撮影をセットにしたプランを提供したら喜ばれるのでは。そう考えて、タイのプロモーターとタッグを組んで2015年に、この佐賀和婚をリリースしました。和装という日本独自の衣裳を来て、日本文化を感じさせる風景の中で撮影を楽しむ。こういう体験は、京都じゃなくても提供できる。地方の写真館が取り組む意義のある活動だと僕は思っています。いまもトライアンドエラーを重ねながらサービスを構築しているところですが、将来的には九州に近いアジア、そして欧米にもアピールしていきたいと思っています」と笠原さん。地方ならではの環境を活かした写真館のあり方を模索し、新たなビジネスを展開。そのノウハウを広めることで、全国に個性的な写真館が生まれ、消費者にとっての選択肢が増えることにつながればいい。写真館の活性化と地域の活性化に対し、独自の考えを持って取り組むハレノヒの活動にこれからも注目したい。

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写真:株式会社 ハレノヒ

株式会社 ハレノヒ
2014年に「ハレノヒ」を法人化。2015年4月に築100年以上の古民家をリノベーションした柳町フォトスタジオをオープン。「小さな写真館にできること。」をテーマに掲げ、地方における写真館の新たな価値や可能性を追求している。
URL:https://halenohi.com/
(ハレノヒのサイトへ)