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4Kディスプレイ導入事例

レスパスビジョン 4K作品制作にも対応 キヤノン業務用4Kディスプレイを4式導入

CMの緻密な画づくりに貢献

レスパスビジョン(東京都渋谷区)は、CM制作を中心に稼働する編集室3室に、マスターモニター(マスモニ)として、キヤノンの4Kリファレンスディスプレイ「DPーV3010」を設置。さらに4K作品の制作受注に合わせ、もう1式を導入。計4式を運用している。同社のシニア エディター/カラリストである長島正弘氏と、システムマネージャーの久保江陽介氏に、モニターに対する考え方などについて聞いた。

広い画面でディテールを確認

-どのような背景で採用したのでしょうか。

久保江「これまで各室のメイン機として使ってきた42型液晶モニターが、経年変化で立て続けに運用できなくなりました。メーカー保守も難しくなったことから、新たなモニターの採用を検討し始めました」

-新しいモニターには、どのような要素を求めましたか。

久保江「まず、大きなモニターであることが必要でした。当社はこれまで、色を確認するブラウン管(CRT)マスモニと並行して、色・映像のディテールを見るために42型液晶を使っていました」
「フィルムで撮影されるCMを制作する場合、当社はARRIスキャンで取り込んだ後、フィルムのグレインを除去したり、カラーグレーディングを施したりします。家庭で液晶テレビが増えてきたこの約10年間、編集室のマスモニより、家庭のディスプレイの方が大きい状況が続いていますが、モニターに一定の大きさがないと、粒子を見ることができません」

長島正弘氏
シニアエディター/カラリストCMのノンリニア編集を経て、2009年にレスパスビジョンに入社。日本を代表する多くのCMを手がけている

-DP-V3010を初めて見たときの印象はどうでしたか。

長島「色の出方、特に人肌の色が従来のブラウン管(CRT)マスモニに近く、素直だというのが第一印象でした。ガンマカーブをかけすぎたり、黒の再現性を損なったりしておらず、これなら使えるなと感じました」
「色の出方は、業界標準として20年以上使われてきたブラウン管(CRT)マスモニが基準となります。最初の段階でこの色とあまりにかけ離れていると、調整作業が困難になってしまいます。映像信号を確認する基準とするためには、これまで見てきたものに、色が近い製品であることが必要でした」
「主業務であるCM制作では、人肌の表現が特に重要です。例えば、化粧品CMのクリエイティブやクライアントは、HUE(色相)が1度違うだけで分かります。私たちは、そういう高いレベルで運用しています」
「同じ色域を表示しても、マスモニの色はメーカーごとに違います。デフォルトで色が近いというのは、合わせるのが楽だなと感じました」
「これまでの42型液晶モニターは、デフォルトではブラウン管(CRT)マスモニと違っていたのですが、さまざまな調整の結果、近いところまで追い込めたので利用していました」


素直な色再現と高い均一性

久保江陽介氏
システムマネージャーとして社内設備を統括。映画「HK/変態仮面」のCG/VFXディレクションも担当

-液晶の発色について。

長島「カラーグレーディングには素直な色再現と同時に、黒のディテールが分かるものを探していました」
「また、家庭では一般的に、バックライトにLEDが使われた液晶テレビが使われているので、それと同様の発色で、見え方が同じものがリファレンスであるべきだ、と考えていました」
「家庭に放送される映像を作っているポストプロとしては、そこでの見え方を考える必要があります。民生機の色の特徴を把握し、それと同じ光源を選ぶところから始めました。その点、DP-V3010は民生機と条件が近かったので選択しました」

-決断に至るまではどのような経緯でしたか。

久保江「デモ機を適宜、メーカーから借りて編集室に設置し、検証しました。当社はどの機器を購入する際も、ワークフローを検証する期間を設けています」
長島「マスモニは、計測器で色を測定して色を合わせますが、測光基準である中心部色が異なると、全体の色の方向性が変わってきます。開発陣との意見交換のなかでは、輝度ムラや色ムラのないユニフォーミティ(均一性)を求めているとお伝えしていました」
久保江「製品に関して、きちんと『会話』のできるメーカーであることも重要でした。例えばこちらから要望を出しても、『他からは要望がない』『細かすぎる』などの理由で、対応してくれないことがあるからです」


管理されたモニター環境

-現在はどのように運用していますか。

久保江「主にCM制作をする3室に設置しています。ブラックマジックデザイン『ダビンチリゾルブ』を設置した『D-1』と、デジタルビジョン『ヌコーダ』の『F-2』、『オートデスクフレームプレミアム』の『E-6』です」
「D-1編集室では、演色性の高いスタジオライトと、18%ニュートラルグレーの壁面を備えています。モニターに光が入り込まないよう設置するなど、高精度なカラーグレーディング作業を可能にしています」

長島「カラーグレーディング2室と、編集・合成室では、作業の連続性を保つことが必要です。当社では、確認用の民生機モニターも単一メーカーの製品に統一し、一貫して映像を評価できる環境を整備しています」
久保江「現在、4K放送向けプロジェクトを複数受注しており、これに対応するためもう1台を購入しました。クォンテル『パブロリオ』を設置する編集室の間で、必要に応じて移動して使うことになります」
「当社はこれまで、映画やミュージックビデオを中心に、キヤノン『EOS C500』および、EFシネマレンズの組み合せで、4K撮影してきました。RAW撮影でも、比較的軽量でコンパクトにセットアップできるほか、レコーダーとカメラを分離したりするなど、リグを柔軟に組むことができます。高感度も実用可能で、ハイスピード撮影も利用できます」
「さらに、新しく追加された広色域のシネマガマットは、BT.709よりもS/N比が高く、合成やカラーグレーディングの精度を向上できます。高輝度・高彩度部分の階調が滑らかなうえ、広い色域で収録するため、鮮やかな色の部分の階調が保つことができます」

D-1 グレーディングルーム 高精度な作業の「ダビングチリゾルブ」
F-2 グレーディングルーム 高度な画質調整ができる「ヌコーダ」

-ディスプレイのその他の機能はどうでしょうか。

長島「このモニターは4Kですが、HD映像を表示してもボケることはありません。CMはHD仕上げが99%なので、HDの表示に違和感がないことは重要でした。カラーバランスを本体で調整できるようメニューを付けてもらうなど、操作面も充実してきています。また、バックライトの経年変化を補正する回路が搭載されているため、長時間利用しても、一定の表示品質を保つことができます」

-今後の抱負を。

久保江「今、カラーグレーディングをするポストプロは増えていますが、モニタリング環境は統一されておらず、必ずしも良い状況とは言えません。CMなど、高い品質を求めて作り込む映像の場合、映像の質感や色から来る感覚を突き詰めることが重要です。ピクセルを見て信号監視できる環境があることで、より良い映像を作ることができると考えています」

会社概要

ファイルワークフローに特化したハイエンドなポストプロダクションとして、特定メーカーにかたよらない編集環境で、柔軟で効率のよいワークフローを提案。ミュージックビデオやライブコンサートビデオ、映画、CM、イベント用展示映像を得意とする。
所有設備は、オフライン/オンライン編集、MAの各スタジオ、フィルムスキャナーなど。撮影スタジオやDCP作成・試写用設備も運用する。

「業務用4Kディスプレイ」についてのご相談・お問い合わせ

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 放送映像営業部