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4Kディスプレイ導入事例

朝日放送報道用4K中継車にDP-V2410を導入本格的な4K/HDR制作に向けた検証にも活用

中継車を使った4K制作にDP-V2410が活躍

大阪のテレビ放送局である朝日放送株式会社様は野球中継をはじめバラエティや報道などさまざまな番組を制作しており、4K制作については2015年夏の高校野球から本格的に取り組んでいる。2016年7月には新しく報道用の4K中継車を導入。そのタイミングでキヤノンの業務用4KディスプレイDP-V2410も導入した。同社の技術局・制作技術センター回線・報道技術係 主任 長谷川将宏氏に、DP-V2410を導入した背景や狙い、使用感などについてお話を伺った。

思い通りの運用ができる良好な操作感と視認性

-DP-V2410導入のきっかけとなった4K中継車についてお聞かせください。

2016年に今後の4K制作需要の増加を視野に入れて中型のSNG中継車を4K対応として導入しました。その仕様検討にあたり、WFMやモニターなど4Kに対応した製品を求めていました。導入後、この中継車は1カメ体制の報道中継から9カメ程度の制作番組中継まで幅広く活躍しており、昨年の夏の高校野球の準決勝、決勝の4K生中継で使用しました。搭載されているシステムは普段HDで運用していますが、4Kの信号が通るように組んであります。波形モニターは4KとHDの兼用で一台搭載。4K制作時にはDP-V2410を載せて運用しています。

-DP-V2410を採用した経緯をお聞かせください。

まずは中継車に搭載する上でサイズは重要なポイントでした。4Kの信号を見るためには17インチをラックに入れるのがベストだったのですが、機材選定を行っていた当時は17インチのモニターがありませんでした。小さすぎると4Kの確認用としては不安がありますし30インチは大きすぎるので、最終的に24インチを採用しました。
あとは他社のモニターを先行導入していたので、モニターによる映像の差を見てみたいという別の狙いもありました。今後4KやHDR(High Dynamic Range)に関する様々な検証を行っていく上でも同じモニターではないほうが都合がよいと考えたわけです。

-実際に使ってみて、使用感はいかがですか?

メニュー階層はわかりやすかったですし、使い勝手は特に不満もなく、思い通りに操作できています。視認性や視野角についても良好です。有機EL(Electro-Luminescence)に比べるとIPS(In-Plane-Switching)液晶パネルのほうが見慣れたCRTに近い印象があって結構好きですね。
また他社のモニターと比較テストさせていただいた時に、モニター横から見づらくなる角度でもDP-V2410は視認性が良くしっかり見えていました。新しい4K中継車では正面に設置して見るので視野角のメリットはあまりないですが、4K支援車と呼ばれる別の小型車両に搭載する場合には効果を発揮するかもしれません。

-その他に気に入っている機能はありますか?

現場で利用する機能という観点からは少しずれているかもしれませんが「LUT(Look-up table)インポート」が一番使わせてもらった機能です。他のモニターだけでは階調などが正しく出ているのかわからなかったので、キヤノンにお願いして色々とLUTのパターンを作っていただき、DP-V2410で出力してクリップしたらどうなるのかテストさせていただきました。他のモニターよりも細かい設定が行えるのでイメージ通りの検証ができたと思っています。
LUTの作成は中継ガレージにカメラを設置して、その場で映像を見ながら調整してインポートしていきました。10種類くらい作っていただいて保存してあります。


HDR/SDRサイマル制作や社内検証など活躍の場が拡大

-DP-V2410を運用された高校野球についてお聞かせください。

高校野球はHD/SDRの放送ですが将来的な4K/HDRの放送も見据えてサイマル制作を行っています。logのままスイッチャーを介して、検証用として4K/HDRの素材をサーバーに溜め込み、変換して出てきたSDRをスカパー!で放送しました。

収録の際にはHDRを見ながらアイリスを決めるとSDRの映像が白飛びしてしまいます。そこでカメラ側でHDR信号とSDR信号のゲイン差を設定する機能を使用し、中継車でSDRの映像を見ながらアイリスを決めることで、HDRの映像も成立するようにコントロールしています。ゲインの数値は事前に検証し、変換器で-2dBや-4dBなど幾つかのパターンを作っておいて現場の明るさを見て設定値を判断しています。この時にHDモニターだけでなく、4K映像の見栄えをチェックするためにDP-V2410を設置してディレクターに見てもらいました。
高校野球以外には『ヴォーカル オン シンフォニー』という音楽の番組でも運用しています。この番組ではHLG(Hybrid Log-Gamma)のテストをするために各社の4Kモニターを並べて検証も行いました。

-現場で4Kモニターを運用する際に気をつけている点があれば、教えてください。

4K/HDR制作はだいぶ増えてきているとは思いますが、以前よりも扱う色域の種類が増えているのでモニターに出ている映像がどの設定になっているかをしっかり把握しておく必要があります。UHD(Ultra HD)の放送規格 ITU-R BT.2020なのかITU-R BT.709なのか、その他にもパラメーターがいろいろあって事前にその辺をチェックしておかないと大きなミスにつながる可能性もあります。弊社の制作体制では中継車のVEと4K支援車のVEが付いているので、異なるモニターとはいえ一応ダブルチェックができている状況です。

-4K制作やHDR制作における今後の展望をお聞かせください。

昨年までの高校野球は地上波と4Kでカメラを別々に立てていましたが、それを共用にして、4K出力を4K中継車、HD出力をHD中継車に分岐する方法を考えています。また4K/HDR放送に向けてCGのレベルをどう扱うかテストするのが次のトライアルですね。すでに『ヴォーカル オン シンフォニー2016』で試していますが、300nitで白に見えるCGでもベースが明るいとグレーに見えてしまうので、適正レベルがいくつなのか検証しているところです。
HDRに関しては各家庭にモニターが普及したとして、その輝度は400nitかもしれないし500nitかもしれません。ですから私たちが1,000nitで作っていて果たして正解なのかという問題があります。1,000nitだけでなく、400nitや500nitのモードを作って検証しなくてはならないのかもしれません。こういった課題はたくさん出てきていますが、本格的な4K/HDR放送に向けて、DP-V2410を使った様々な社内検証を粛々と続けていきたいと思っています。

「業務用4Kディスプレイ」についてのご相談・お問い合わせ

キヤノンマーケティングジャパン株式会社 放送映像営業部