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トップ > Cのキセキ Episode.18 「プロダクションプリンティングソリューション」 > P2
歴史が長く、技術的にも市場的にも成熟している印刷業界。そこで「デジタル」による大きなうねりが起きている。そんな変化の時代に「商業印刷」の分野で積極的な取り組みを進めているのがキヤノンだ。その最前線にある注目の施設「CEC Tokyo」と新会社「コマーシャルプリンティングラボ」を訪れ、現状キヤノンがその先に描く未来について聞いた。
印刷業界において主流なのは、インクを転写するために「版」を使う「オフセット印刷」と呼ばれる方式だ。印刷物ごとに「版」を作らなければならないため少部数では割高になる他、「版」を作るための時間も必要になる。そんなオフセット印刷が苦手な少部数、短納期の領域を担う存在として期待され登場したのが、「版」を必要とせずレイアウトデータから直接印刷できる「デジタル印刷」だ。
「デジタル印刷機が登場した当初は、大量印刷はオフセット、オンデマンドなどの小部数はデジタルというすみ分けが進むことが予想されたのですが、結局そうはなりませんでした。オフセット印刷のコストがさらに下がったことや、デジタル機の印刷品質がなかなか上がらなかったことが主な理由でしょう」
そんな経緯もあって、デジタル印刷機に関してネガティブな見方をする人もいるが、新世代のデジタル印刷機はコスト、品質ともに大幅な進化を遂げたばかりか、これからの印刷のあり方を変え、新たなビジネスを生み出す可能性がある。
その一例が、一枚一枚印刷する内容を変えられる「バリアブル(可変)印刷」だ。インターネットの世界では、購買履歴などの情報を基に、ユーザー個々人にマッチした内容の記事や広告、クーポンなどを掲載する「ターゲットマーケティング」が大きな成果を挙げている。
「そうした手法を、印刷の分野でも実現しようという動きが始まっています。具体例としては、受け取る人の属性に合わせてパンフレットやダイレクトメールの内容を変えるといったものです。さらにそうした手法を、商品パッケージや梱包用の段ボールにまで広げられないかとも考えています。そしてこの実現には、バリアブル印刷が可能なデジタル印刷機の活用が不可欠です。『CEC Tokyo』に来て体験していただきたいのは、単に印刷機の能力ではなく、こうした印刷の新たな可能性なのです」
デジタル印刷とオフセット印刷それぞれの得意領域
デジタル印刷はレイアウトデータから直接印刷できるため、小ロットでの印刷が比較的低コストで行える点、バリアブル印刷のような新しい方式の印刷ができる点、運用の簡便さが特長だといえる。一方、オフセット印刷は金属製の「版」を使う方式で、鮮明な印刷が可能なだけでなく大量印刷にも適するため、これまでの商業印刷機の多くがこの方式を採用してきた。